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ダンジョン核は入手出来たけど
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ステラとやり取りしている間に、見通しがやや良くなり、幻想的な光景が広がった。
白一色だった空間から、霧に覆われた大自然の中に放り出されたみたいだ。
急な変化に僕達は唖然とするしかない。
ステラちゃんが目を丸くして僕を見上げてくる。
「何が起こってるですか?」
「ステラちゃん。離れちゃダメだよ」
「うん」
そんな中、アジ殿が冷静に状況を分析する。
「先ほどの空間は再び閉じられ、儂等は本来なら来ていたはずのダンジョン内に移動したようだな」
「ここが本当のテンプテッドフォレストなんだね」
「おそらくは」
というか、そもそもさっきまで居た女ニンジャはどこに行ったんだろう?
幾ら辺りを見回し、気配を辿ってもそれっぽい存在は居ない。
その代わりなのか、巨大な猪が一頭大量の血を流して倒れている。
あれってもしかして――。
「あそこで死んでいるのはパイア?」
「そのようであるな。表のダンジョンと隠し空間の狭間があいまいになった時点で、お主等のバトルの巻き添えになったのであろう」
「あぁ……不憫だね」
「うむ……」
「でも、ラッキーなんです!」
同情する僕とアジ殿とは裏腹に、ステラちゃんは飛び跳ねて喜んでいる。
こういう素直な所は彼女の美点だよね。
僕は彼女のトンガリ帽子を一度外し、柔らかい金髪を撫でた。
ニコニコしていたステラちゃんは、意外にも冷静な事を言い出した。
「今からダンジョン核を探さないとなんです!」
「そういえば、ソレが目的で来たんだったね」
「うんうん!」
僕たちはご先祖様の日記を頼りにダンジョン核入手の為の行動を再開した。
とはいえ、僕とニンジャの戦闘の巻き添えでこのダンジョンのボスは死んだから、残りは雑魚ばかり。
折角だから、そいつ等はステラちゃんがレベルアップする為の糧になってもらうことにした。
罠などを解除しながら進み、のんびりと最深部に到着する。
ダンジョン核は健在で、アジ殿がそれを丸ごと収納するとワープポイントが現れる。これで僕達の冒険は終了だ。
あとはカイヴァ―ンの手先に気を付けながら帰宅して、セキュリティシステムにこのダンジョン核を組み込んだらいいだけ。
シオン・イオリの事は……、うーん……。
僕自身が口封じに行きたいけど、さっきのステラちゃんとのやり取りが引っかかるなぁ。
取りあえずは国王陛下に報告して様子見としようか。
――あの人はステラを生かしておきたいと思っているみたいだし、何か対策をとってくれるはずだよ。
つらつらと考え事をしながらだと、帰りはあっという間だ。
庭の術式の調整前にステラにおやつを食べさせたかったのに、またもやスンナリといかなかった。
家の前の通りに差し掛かると、時代錯誤なシルクハット姿の男が1人門扉の前に佇んでいるのが見えた。
夕陽をバックにする姿は酷く印象的。
不幸の象徴であるかのようだ。
「思ったよりも帰りが遅かったね。寄り道でもしていたかね?」
馴れ馴れしい口をきくものだと、男の顔を見上げれば、その切れ長の目は真っすぐにステラを見下ろしていた。
ロリコンのオッサンかな?
どうやって排除してやろうかと頭を悩ましかけるが、アジ殿の上擦った声に我に返る。
「お、お主は……カイヴァ―ン」
「え……?」
土星を統べる神はとっくにステラを特定していたらしい。
この圧倒的な存在からステラちゃんを守れるんだろうか?
「随分と可愛い姿に生まれ変わったものだね。弟君は。フリフリとした服装にフードはクマの耳。ホホ」
「うん? 私は女の子なんですっ」
「これは失礼。ところで、私からのプレゼント――アビリティはお気に召したかな?」
カイヴァ―ンはアイスブルーの瞳で僕の顔を見た。
どうして僕がアビリティを入手したのを知っている?
それすらも把握済み――いや、待て。流石におかしいよね。
オッサンはさっき僕等と接触したってこと?
この瞳の色、宵闇色の髪……。
そもそもダンジョン内部に何度も影響を与えるなんて、ただの人間に出来たのだろうか? 神なら出来るかもしれないけれど。
僕はやや混乱しながら、絞り出すように答える。
「……出来ることなら返したいけど」
「ほほっ。ふーむ。私の力の影響を一切受けたくないとみえる。安心しなさい。そのアビリティは使用していても、邪神への信仰心に影響を与えるものではない」
「……」
ちょっと待って。今凄い情報量の多かったような……。
僕の狼狽を気にも留めず、土星の神は言葉を続ける。
「今日は良い暇つぶしになった。ステラちゃん、茶番に付き合ってくれて感謝するよ」
「うん!」
「そのうち他の神々も会いにくるだろう。まぁ、私の様に善意を示すとは限らないがね」
「?」
カイヴァ―ンはブーツのヒールを鳴らして方向転換する。
夕日に向かって歩き去る男の影は長く伸び、何とも言えずに不気味だ。
なんていうんだろう。
盛大に試された――というか、遊ばれた? 一体どの時点から?
ちょっと腹が立ってくるよね。
可愛い義妹を守るのはなかなかに大変だ。
______________________________
思ったよりも長くなってしまいました。
義兄視点のサイドストーリーは一度終わりです。
本編→
アルファポリス:『魔法学校の売店をクビになったけど、皆の為にアイテム作りを続けます!』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/169407363/70443669
カクヨム:『魔法学校の売店係~実力を隠すアイテム士はドラゴンと一緒に旅費を稼ぐ!~』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896088693
白一色だった空間から、霧に覆われた大自然の中に放り出されたみたいだ。
急な変化に僕達は唖然とするしかない。
ステラちゃんが目を丸くして僕を見上げてくる。
「何が起こってるですか?」
「ステラちゃん。離れちゃダメだよ」
「うん」
そんな中、アジ殿が冷静に状況を分析する。
「先ほどの空間は再び閉じられ、儂等は本来なら来ていたはずのダンジョン内に移動したようだな」
「ここが本当のテンプテッドフォレストなんだね」
「おそらくは」
というか、そもそもさっきまで居た女ニンジャはどこに行ったんだろう?
幾ら辺りを見回し、気配を辿ってもそれっぽい存在は居ない。
その代わりなのか、巨大な猪が一頭大量の血を流して倒れている。
あれってもしかして――。
「あそこで死んでいるのはパイア?」
「そのようであるな。表のダンジョンと隠し空間の狭間があいまいになった時点で、お主等のバトルの巻き添えになったのであろう」
「あぁ……不憫だね」
「うむ……」
「でも、ラッキーなんです!」
同情する僕とアジ殿とは裏腹に、ステラちゃんは飛び跳ねて喜んでいる。
こういう素直な所は彼女の美点だよね。
僕は彼女のトンガリ帽子を一度外し、柔らかい金髪を撫でた。
ニコニコしていたステラちゃんは、意外にも冷静な事を言い出した。
「今からダンジョン核を探さないとなんです!」
「そういえば、ソレが目的で来たんだったね」
「うんうん!」
僕たちはご先祖様の日記を頼りにダンジョン核入手の為の行動を再開した。
とはいえ、僕とニンジャの戦闘の巻き添えでこのダンジョンのボスは死んだから、残りは雑魚ばかり。
折角だから、そいつ等はステラちゃんがレベルアップする為の糧になってもらうことにした。
罠などを解除しながら進み、のんびりと最深部に到着する。
ダンジョン核は健在で、アジ殿がそれを丸ごと収納するとワープポイントが現れる。これで僕達の冒険は終了だ。
あとはカイヴァ―ンの手先に気を付けながら帰宅して、セキュリティシステムにこのダンジョン核を組み込んだらいいだけ。
シオン・イオリの事は……、うーん……。
僕自身が口封じに行きたいけど、さっきのステラちゃんとのやり取りが引っかかるなぁ。
取りあえずは国王陛下に報告して様子見としようか。
――あの人はステラを生かしておきたいと思っているみたいだし、何か対策をとってくれるはずだよ。
つらつらと考え事をしながらだと、帰りはあっという間だ。
庭の術式の調整前にステラにおやつを食べさせたかったのに、またもやスンナリといかなかった。
家の前の通りに差し掛かると、時代錯誤なシルクハット姿の男が1人門扉の前に佇んでいるのが見えた。
夕陽をバックにする姿は酷く印象的。
不幸の象徴であるかのようだ。
「思ったよりも帰りが遅かったね。寄り道でもしていたかね?」
馴れ馴れしい口をきくものだと、男の顔を見上げれば、その切れ長の目は真っすぐにステラを見下ろしていた。
ロリコンのオッサンかな?
どうやって排除してやろうかと頭を悩ましかけるが、アジ殿の上擦った声に我に返る。
「お、お主は……カイヴァ―ン」
「え……?」
土星を統べる神はとっくにステラを特定していたらしい。
この圧倒的な存在からステラちゃんを守れるんだろうか?
「随分と可愛い姿に生まれ変わったものだね。弟君は。フリフリとした服装にフードはクマの耳。ホホ」
「うん? 私は女の子なんですっ」
「これは失礼。ところで、私からのプレゼント――アビリティはお気に召したかな?」
カイヴァ―ンはアイスブルーの瞳で僕の顔を見た。
どうして僕がアビリティを入手したのを知っている?
それすらも把握済み――いや、待て。流石におかしいよね。
オッサンはさっき僕等と接触したってこと?
この瞳の色、宵闇色の髪……。
そもそもダンジョン内部に何度も影響を与えるなんて、ただの人間に出来たのだろうか? 神なら出来るかもしれないけれど。
僕はやや混乱しながら、絞り出すように答える。
「……出来ることなら返したいけど」
「ほほっ。ふーむ。私の力の影響を一切受けたくないとみえる。安心しなさい。そのアビリティは使用していても、邪神への信仰心に影響を与えるものではない」
「……」
ちょっと待って。今凄い情報量の多かったような……。
僕の狼狽を気にも留めず、土星の神は言葉を続ける。
「今日は良い暇つぶしになった。ステラちゃん、茶番に付き合ってくれて感謝するよ」
「うん!」
「そのうち他の神々も会いにくるだろう。まぁ、私の様に善意を示すとは限らないがね」
「?」
カイヴァ―ンはブーツのヒールを鳴らして方向転換する。
夕日に向かって歩き去る男の影は長く伸び、何とも言えずに不気味だ。
なんていうんだろう。
盛大に試された――というか、遊ばれた? 一体どの時点から?
ちょっと腹が立ってくるよね。
可愛い義妹を守るのはなかなかに大変だ。
______________________________
思ったよりも長くなってしまいました。
義兄視点のサイドストーリーは一度終わりです。
本編→
アルファポリス:『魔法学校の売店をクビになったけど、皆の為にアイテム作りを続けます!』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/169407363/70443669
カクヨム:『魔法学校の売店係~実力を隠すアイテム士はドラゴンと一緒に旅費を稼ぐ!~』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896088693
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