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歌姫と仕留めた獲物

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「はぁ?」

苛立たし気に、思わずそう返すハンス。しかしエリーゼはそれを気にすることなく、それどころか先ほどのきゃぴきゃぴした笑顔――どこかわざとらしい印象すらあるほど、跳びぬけに明るい表情――でまだまだハンスに話し続ける。

「ハンちゃんにだってお父さんとお母さんがいるはずだよね。他にも兄弟姉妹とかがいても、おかしくない。そんな家族いるなら、そのウサギもきっとハンちゃんと家族のみんなで食べるんだよね。ねぇ、ハンちゃんって家族は何人いる? お父さんとお母さんはどんな人?」

エリーゼの至って平凡で、平和で、本来ならただの世間話で済んでしまいそうな会話。しかし、ハンスはその質問を聞いた瞬間に顔を強張らせ――エリーゼからさっと、目を逸らす。

「……別にそんなこと、お前に教える必要ないだろ。俺が何人家族だって、お前には関係ないだろうが」

「……うん、まぁ、そうだけど何となく気になったから……でもハンちゃん、それだともしかしたら一人で暮らしてるってこと? いくらなんでも、こんな場所で一人暮らしなんて大変なんじゃない?」

エリーゼの言葉はどこまでも素朴で、真っすぐで、裏表や下心があるとは思えない。



――だが、それがハンスにとってはかえって疎ましかった。



「……そんなもん、どうだっていいだろ。俺はこれから、このウサギを捌いて適当に処理する。……お前はもう帰れよ」

できるだけ突き放したような言い方で、そう告げるハンス。
しかし――エリーゼはつっけんどんなその答えに落胆することなく、むしろ再び目を輝かせ始めた。

「わぁ、ハンちゃんって料理とかもできるの? すごいなぁ。ねぇ、もし良かったらなんだけど……一緒に、食べていい?」
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