学野さんは学校にいたくない

まなびとおやつ交換

　あかりからチョコレートをもらったまなびは、自分もバッグの中を探る。



　善因善果、等価交換。何かいいものをもらったら、同じように自分も恩返しするのがマナーというものだ。

　特に食べ物は、遠足のおやつ交換の時間しかり毎年のお中元・お歳暮しかり感謝やお返しはしっかりすべきだ――まなびはそう、考えている。

　とりわけお菓子は正式な感謝の品とまではいかない、ちょっとしたお礼にぴったりだ。自分が甘いものを食べたい時のため、そして今のように何か人から物をもらったり助けてもらったりした時のためにまなびは複数のお菓子を持ち歩いている。



　喉がカラカラになってしまった時のための、美味しいのど飴。これはゲームキャラとのコラボパッケージで一つ一つに可愛い絵柄が描いてあるから、きちんと洗ってシールやキーホルダーにリメイクするつもりだ。だから簡単には人にやれない。

　ストロベリーチョコレートとミルクチョコレートを合わせた、二層のチョコレート。好感度の高い誰からも好かれるお菓子だ。だが今、あかりからはチョコレートをもらったばかり。同じようなチョコレート系のお菓子を渡すのはできるだけ避けた方がいいだろう。よって、これもパス。



　それなら、とまなびはあるお菓子を取り出す。

「じゃあ、私からはこれ！」

　言いながらまなびが渡したのは、紅茶味のビスケットだった。

　鞄の中に入れていても割れにくく、サクサクした歯触りと上品な味が楽しいビスケット。個包装じゃないのが難点だが、今はもうクラスメートが何人か集まっている状況だ。同じようにみんなに、数個ずつ渡していけば中身は三分の一ほどまでに減る。



　残りは、学校から帰って一人で食べちゃおう――そんなことを考えていたら「まなび」と背後から話しかけてくる声が聞こえてきた。