学野さんは学校にいたくない

まなびと授業

（勉強なんて家でやった方が集中できるし、授業なんて受けたくないな）

　まなびはほぼ全ての科目で学年トップの成績だが、授業中はいつも学校が終わった後のことばかり考えていて先生の話なんて真面目に聞いていない。



　教師や他のクラスメートに見せるためノートはしっかり書いているが、実は授業ノートの下にこっそり自分ノートを隠している。それにはいつも、「学校が終わったら・学校がない日は何がしたいか」を書いているのだ。

（今日はまっすぐ家に帰って、動画見ながらゲームしたいな。世界の謎とか都市伝説系の動画）

　まなびのマイブームはオカルト系動画だ。肉声で読み上げたものより、音声合成ソフトで読み上げたものの方がいい。読み間違いもあるとはいえだいたい字幕がついているし、作業しながらでも聞き取りやすい。気になったら一度手を止めて、動画を少し戻して見直せばいいのだ。

（でもまぁ、動画見始めると止め時わかんなくなるし仕方ないけど宿題から終わらせるか。作業用BGM流せば一時間ぐらいでいけるよね。で、終わったら動画＆ゲームタイムだ）

　勉強はしっかりやるまなびだが、それも学校外で過ごす自分タイムを誰にも邪魔されずじっくり楽しむためだ。成績さえ良ければ、学校外で何をしようと大概の大人は黙るし「真面目でしっかり者の優等生・学野まなび」のイメージは保たれる。だからまなびは面倒でも、勉強だけはしっかりする。

（あー、でも漫画動画も気になるな。こないだストーリー編のエピソート５までイッキ見したけど、わりと本気で続き気になるし……でもあの後しばらく日常編挟んでたから、まだかな）

　そう思いながら、まなびはその動画のキャラを自分ノートに描いてみる。なかなか上手い出来だ、そのうちまなびは落書きの方に夢中になる。

「学野。次の問題、前へ」

「あ、はい」



　まなびは慌てて自分ノートを教科書で隠し、黒板に向かう。

　複雑な確率の問題だが、この程度なら学習済みだ。いくつもの「×」と分数を使いこなし、見事正解を導き出す。どうやら難問だったらしいそれを解いたことで、クラスからは感嘆の声が上がるがまなびはそんなもの気にしない。



（とりあえず帰ったらPC直行だな）

　それだけ思って、まなびは再び自分ノートへの落書きに戻るのだった。