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わからない(わからなすぎて何がわからないのかもわからない)

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 マリーのその言葉を聞いた瞬間、俺は正直ほっとしてしまった。

 少なくとも俺はイレギュラーではない、俺以外にも同じような境遇の人間がいる。

 根本的解決にはなっていないとはいえ、「異常事態に遭っているのは自分だけではない」という事実だけで人間は意外と安心するものだ。と同時に、俺は腹を括る。

 俺と同じように神の――その人たちが聞いた神の声は、俺と同じポンコツ女神のそれとは違うかもしれないと考えるとちょっと羨ましいが――声が聞こえた人間がいる、そしてそれをマリーも知っているということはここで「実は神の声が聞こえるんです」と正直に話しても一応受け入れてもらえる可能性は高いわけだ。そこで、俺はなんとか腹を括る。



 ……いや、それは嘘だ。

 まだ自分でも完全に受け入れることのできないこの状況を、自分より年下の美少女へ正直に話すのはなかなか勇気がいる。だがマリーはそんな俺の逡巡を理解しているのか、黙って俺が話し出すのを待っていてくれる。

 今の俺の状態をシンプルにまとめるとしたら、「何が何だかわからなすぎて『何がわからないのか』ということすらもわからない」だ。口に出し始めたら自分でも、焦って何を言えばいいのかわからなくなるかもしれない。



 だけど――自分の置かれている境遇を、素直に教えてくれたマリー。辛かったかもしれない過去を、初対面の俺に話
 してくれたマリー。そんな彼女が相手であるのなら――と思うと俺は今の状況を話し始めていた。



「そう、なんだ……俺は実は、女神の声が聞こえているんだ。それに……信じてもらえないかもしれないけれど、俺はもともとこことは違う世界の人間なんだ」

 なんとか絞り出したその言葉にマリーは目を見開いていたが――それでも真面目な表情で、俺の話の続きを待ちわびるように俺の目を真っすぐに見つめていた。
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