元社畜が異世界でスローライフを行うことになったが、意外とそれが難しすぎて頭を抱えている

その謎を解明すべく、我々はサモナー美少女へ質問を投げかけることにした！

　ピンポーン！　大正解～！

　明るくそう言いたいところだが、そんな能天気な話題ではない。「えっと……」とゴニョゴニョしながら、俺は一瞬で頭をフル回転させる。



　どうしよう、ここで素直に肯定していいものだろうか。

　これが社畜時代なら面倒事を避けるために「いやぁ、そんなわけありませんよ～」と乾いた笑みと共に言えるのだが今のこの世界は色々とファンタジーだ。明らかに人外のモンスターもいる、サモナーという謎の職業をしている美少女もいる。魔法とか召喚とか、理論のよくわからない現象も存在している。

　そうなると、「神様の声が聞こえる」と主張することは別におかしくない、むしろ「事実」を「事実」として伝えるという観点ではむしろ正しい行動と言えるのではないのではないか？

　マリーの言葉を思い起こすに、俺がこの世界でかいた恥は全てあの「ポンコツ女神様のポンコのせいなのです！」でカバーしきれることになる。実際、今の俺の状況はほぼあのポンコツ女神のせいだし……ならば、ここで肯定することは決しておかしな話ではない。



　ただ――俺がその選択肢に飛びつけない理由も一つだけ存在する。



「……その、俺も今はすごく混乱してるから聞くんだけど……君が言うには『この世界ではたまに神の声が聞こえる』って主張する人間が現れるんだよね？　ってことは……俺以外にも、そういう人間がいるってことなのかい？」

　恐る恐る、しかし尋ねずにはいられなかったその質問。それを聞いたマリーが、どんな返答をするのか疑問だったが――返ってきた言葉は意外にあっけらかんとしたものだった。



「はい、その通りです。彼らは『この世界とは全く別の世界から来た』と主張することもあれば『自分が今まで何をしていたかさっぱりわからないが、急に神の声が聞こえるようになった』と訴える人もいてその言い分は様々なんですが……『神の声が聞こえた』というその証言に関してだけは、珍しいけれど各地で報告されているケースなんです」