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美少女の涙(ビューティー・ドロップ)

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 マリーの瞳から、うっすらと涙が滲み出る。



 潤み、より輝きを増したその瞳はマリーの美少女っぷりをさらに増強させた。

 あっ、どうしよう。女の子を泣かしちゃダメ? 泣き顔もカワイイ? こういう時、俺は何をして何を言うべき?

 混乱する俺に対し、マリーは口を開く。

「私……ずっと頑張ってきたんです……召喚が遅いのも、そのせいでみんなに迷惑かけてるのもちゃんとわかってたから……でも、でもどうしようもできなくて……」

 うっ、と耐えかねたように俯くマリー。涙が零れてしまうのを、懸命に堪えているのだろう。



 ……さすがに今は、声をかけるべきではない。そう悟った俺はひとまず、沈黙してマリーを見守る。



 周りからさんざん罵倒され、もっとああしろこうしろと言われ、平然としていられるはずがない。最初は反抗・反論できたかもしれないが続けられればその気力もなくなっていく。削られていく自尊心、歪んでいく認知。

 自分は本当に、仕事ができないのではないか? 価値のない、それどころか周りに迷惑をかける駄目な人間ではないのか――?

 一度そう考え始めれば、それを否定できなくなる。それでもなお、周囲の人間が「仕事ができない」「失敗ばかりしている」と罵ってくるとなれば尚更だ。

 マリーはそれでも、必死に耐えてきた。何度も何度も涙を飲み、何度も何度も我慢して、その果てに「追放」という最悪の仕打ちをもって追いやられた。本当はもっと泣きたかったはずだ、もっと「辛い」と訴えたかったはずだ。



 それが今、「涙」という形でようやくマリーから吐き出されている――その美しくも悲しく、苦しみに満ちた雫を俺は拭ってやれなかった。
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