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人の心とかないんか?

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 努力なんて、どれだけやったって実るかどうかはわからない。



 夢や目標のためにどれだけ頑張ったってそれが叶うとは限らないし、どれだけ足掻いたってダメな時はダメだ。

 そのくせ、「成功する者はみんな努力している」「何か素晴らしい成果を上げた人間は、それだけ凄まじい苦労を経験している」という漠然とした希望を人はなぜか信じている。現実はいつも結果が全てで、失敗したら目もくれないのに……



 どれだけ経過を力説しても、「頑張った」「できることはやった」と力説しても、結果が伴わなければ他人はそれを「言い訳」と一蹴する。

 事実とはいえ、そこで他人を思いやる気持ちがあれば少しはそんな突き放すような言い方を躊躇うはずだ。真心、思いやり、相手の気持ちを考える。そういうものがブレーキとなれば、いくら結果が出なくても少しは温かい言葉をかけるようになるだろう。



 だけど、それでも貶すような表現を使い続けこちらの心身を消耗させることに全力を注ぐような奴なら……捨ててしまって、良かったと思う。



「俺、サモナーのことはわからないし君の苦労はきっと想像以上だと思う、けど……俺を助けてくれた君は、優しいしきちんとやるべきことができる人間だからさ。だから、そんなに落ち込まないで……」

 そこまで言って俺は、はっとする。



 何かしれっとマリーを励ます流れになっているが、俺ってゴブリンの前に勝手にしゃしゃり出てきたところを呆気なく返り討ちにされ先にやられそうになったのを助けてもらったんだよな? 偉そうなことを言ってるが、すごく恥ずかしくなってきた。忘れていた羞恥心がカッと胸の奥から湧き上がる、ヤバい。恥ずい。



 いきなりそれらしいことをドヤ顔で言って、マリーは反応に困っていないだろうか……そう思っていると、マリーはふいと目を逸らす。



「……ありがとうございます」

 ぽつりと零れ出たマリーの言葉は、そんな俺の居心地の悪さを一瞬で打ち消した。
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