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これぞ社畜の鑑!(無理なものは無理)

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「先ほどご覧になったと思いますが、私は妖精を召喚して彼らの力を借りることができます。人間にはできないことをしてもらったり、その力で魔物を退治することができますが……その召喚が、私は遅いのです」

 気まずそうに目を逸らすマリーは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。



 あぁ、なんとなくこの表情はわかる気がする。

 自分に非があることを認めつつ、それを素直に謝罪しない……というかしたくない顔。自らの過ちを認めない、それは社会的には決して評価できない行為だろう。だが――できないものは、できない。努力とかやる気とかそういうものでどうにかなるようなことではない、とにかくできないのだ。

「じゃあ、どうしろって言うんだよ!」

「俺には無理だ! もうお前がやれよ!」

「何をどうしたって、できないものはできないんだよ!!」

 そう叫びたい気持ちを必死に抑えつつ、頭を下げることしかできない者の悲しみ。



 あぁ、これぞ社畜の姿。美少女でも、異世界の人間でも、今の彼女は前世の俺と同じだ。押し黙る俺を前に、マリーは眉間に皺を寄せながら言葉を続ける。

「私は初級サモナーですし、その、サモナー自体が召喚に時間のかかる仕事で……ただ、その中でも私は特に遅いのでパーティーのメンバーに迷惑をかけていたんです。何度も叱責され、練習もして、なんとか召喚をスムーズに行えるよう努力はしたのですが……でも、私はパーティーにとって足手まといだと判断されて、追放されることが決定したところなんです」

 唇を噛み締めるマリーは、暗い顔で俯く。



 この世界のパーティーとか、魔物とか、戦闘スタイルとか、そういうものが何なのか俺には全くわからない。

 けれど何か行動を起こすのに時間がかかる、何かさせようにも遅いというのは致命的な欠陥なのだろうということだけは理解できた。



 ここは俺が転生した後の異世界で、しかもポンコツ女神が用意した場所だから正直よくわからないところは多数ある。だが、ただ一つわかるのは「一度『のろま』の烙印を押されたら誰もそれをフォローしてくれず、集団の中で孤立し蔑まれる」という残酷な道理がこの世界にも存在するという事実だった。
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