元社畜が異世界でスローライフを行うことになったが、意外とそれが難しすぎて頭を抱えている

尾形モモ

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美少女のピンチに立ち向かわなければ漢じゃない

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 頭がいい人にも悪い人にも見える。横文字を羅列するということは、そんな不思議な行為だ。

 俺の社畜人生全てをかけても聞いたことのない単語の洪水に、目を白黒させる俺をモンスター(仮)――この呼び方、なんかいちいち面倒くさいな。なんかよくわからないけど、ここではとりあえず「ゴブリン」と呼ぶことにしよう――改めて、ゴブリンは何も言えずにまごつく俺を見ると半笑いを浮かべ言葉を続ける。

「その様子じゃ、どうやらただの素人みたいだな……仕方ねぇ、ついでにぶっ殺してやるよ」

 言いながらゴブリンは、何かを地面に投げ捨てて俺の方へと近づいてくる。

 そこで俺はようやく、ゴブリンに捕まっていた誰かの存在に気がついた。先ほど助けを求めたのはこの人間――少なくともゴブリンよりは、人間に近しい姿をしている青い髪の美少女らしい。



 ――ゴブリンが何の意図があって、この少女に攻撃を加えたのかはわからない。



 強盗か、暴行か。ペットが小さなぬいぐるみやオモチャで遊ぶように、大した意味はないのかもしれない。だが、少女の痛ましい姿を見ればそのどれもきっと許されないだろう。何度も地面に擦りつけられただろう、泥で汚れた白い肌。うっすらと血が滲むその傷は、比較的軽いものだろうが見ていて痛々しいことに変わりはない。
 助けなければ。守らなければ。

 怯え、不安、恐怖、絶望。そんな感情を漂わせたその姿は、そう思わせるには十分だった。



 ――やっぱり、助けなければ。



 強きを挫き弱きを助く。
 俺は、そんな高尚な理念を持ち合わせているわけではない。だが、この状況は俺を「やっぱりこのゴブリンを何とかしなければ」と奮い立たせるには十分だった。ここで逃げたら漢じゃない。漢気でも義理人情でも何でもいい。――今は何がなんでも立ち向かうべきだ。

「お、お、おう……」



 かかってきやがれ、という勇ましい言葉を口にすることはできないがそれでも俺は息を飲み――ゴブリンに向かって一応の、戦闘態勢を取ってみせた。
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