お姫様と秘密の魔法

尾形モモ

文字の大きさ
上 下
4 / 6

お姫様と魔法

しおりを挟む
「私の魔法の力は、この国の皆様を幸せにするために使います。人々が私の魔法で願いを叶え、その姿を見ていれば私も幸せになる……だから私は、魔法を使うのがとても幸せなのです」

 歌うように語るお姫様の周りで、風が踊る。



 驚くルーシーの前で、ピンク色の花びらが舞った。

 それに合わせてお姫様は、くるりと一回転する。同時に花の香りが漂い、その場の空気が一気に華やいだものとなった。戸惑うルーシーの前で、お姫様は続ける。

「感謝されること、笑顔で『ありがとう』と言ってもらえること。それはとても素晴らしいことです、だからそのために私は魔法を使う。私の力で、国中の人々を幸せにする。そうすることで私は、この国の皆様に感謝される世界一幸せなプリンセスになるのです」

 たくさんの花びらが降り注ぐ中、ルーシーの手元に一輪の花が降り注いだ。



 綺麗な花たちの中でも一際、美しいそれにルーシーが見惚れていればお姫様はそんなルーシーの手をそっと握る。

「まずはその花、あなたへのプレゼントとして差し上げます。最初の仕事は、この花を綺麗な花瓶に活けてくること。その次は、この花びらを片付けておいて……お願いして、よろしいかしら?」

 むせ返りそうなほど、辺りに満ちたフローラルな話にルーシーは呆気にとられながら頷く。



 こうしてルーシーはお姫様の魔法で、お母さんを治してもらう代わりにこの城の雑用係として働くことになったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。 以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。 不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。

マッチ箱のウンチ

はまだかよこ
児童書・童話
尾籠な話で申し訳ありません。昭和の中頃。小学生の大半に寄生虫がいた頃の話です。美弥子の検便の顛末、読んでください。

虹の橋を渡った猫が教えてくれたこと

菊池まりな
児童書・童話
あけみが生まれた頃には愛猫のちゃおがいた。遊ぶ時も寝るときもずっと一緒。そんなある日、ちゃおが虹の橋を渡ってしまう。家族は悲しむが、あけみは不思議な夢を見るようになり…。

ねむたくてねむたくて

しましまにゃんこ
児童書・童話
りすくんはねむたくてねむたくてしかたがないのにねることができません。それはきっとなにかがたりないせい。なにがたりないのかな? 寝かしつけのためのお話です。

おねしょゆうれい

ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。 ※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

Sadness of the attendant

砂詠 飛来
児童書・童話
王子がまだ生熟れであるように、姫もまだまだ小娘でありました。 醜いカエルの姿に変えられてしまった王子を嘆く従者ハインリヒ。彼の強い憎しみの先に居たのは、王子を救ってくれた姫だった。

処理中です...