追放された黒髪剣士はひたすら逃げる

尾形モモ

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追放された者

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 何かしら事情があって、冒険者が「冒険者」を辞めパーティーを抜けることはよくある。



 例えば魔物との戦いや加齢など、身体的な事情でこれ以上の冒険は厳しいと考えた場合。この場合はパーティー間での協議を重ねた末、行われるものであり「本人に落ち度なし」と考えられることが多い。状況にもよってはその後の生活や再就職のサポート、補償金などを受け取られるケースもあり冒険者を辞めた後の受け皿は十分であると考えられている。

 他に育児出産など人生設計に関わる出来事や病を治すための療養、本人の心変わりによる転職など冒険者が急にパーティーからいなくなってもそれをどうにかサポートする体制はこの世界にきちんと組み込まれていた。



 だが、テツヤのように一方的にパーティーから追放――明確な理由はない、他のメンバーから無理やり追放を言い渡された事実上の「クビ」はそうもいかない。



 冒険者パーティーは基本的に信用業で成り立っているものだ。互いに命を預け合う以上、強固な信頼がなければパーティーを組むことはできない。そのパーティーを追放されたとなれば、他者からの視線は実に冷ややかなものとなる。

 よほど、冒険者としての実力がないか。よほど、本人の性格に難ありか。よほど、追放されても仕方ないほどの落ち度があるか――そんな風に見られ、別のパーティーに加入することは難しくなるのだ。
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