ブラックライダー

土橋絵里⑤

「ブオン！」と低い音が鳴り響いた。



　その轟音は地獄の鐘を鳴らすように、何度も繰り返される。

　その度に、土橋絵里の足を縛り付けたロープへ振動が伝わってきた。土橋絵里の目が、拘束された先――真っ黒なバイクを捉えた瞬間に二つのタイヤが勢いよく回りだす。その瞬間、土橋絵里はブラックライダーが何をするつもりなのか瞬時に悟った。
　咄嗟に逃げようとした土橋絵里。だが、それよりも早く―――非情なエンジン音が響き渡る。

「っいやあああああああああああああっっっ！！！！！！」

　抵抗する間もなく、一気に加速したバイクによって土橋絵里は道路を引きずられる。

　舗装されているとはいえ道路上を、凄まじい速度で引きずられた土橋絵里の体は全身をおろし器にかけられたように少しずつ削られていく。

「っやめでえええええぇぇぇぇぇっ！　いだいっ、いだあ゛いぃぃぃぃぃっ！」

　皮膚が裂け、血が滲み、その痛みに泣き叫ぶ土橋絵里だがそれはブラックライダーのバイクが出すエンジン音と道路を走る走行音で掻き消されてしまう。



　それどころか、ブラックライダーはただ真っすぐ走るのではなく蛇行した走り方をするようになり――土橋絵里の身体はますます痛めつけられていった。