ブラックライダー

土橋絵里③

　ひとしきりそれまでの「戦利品」を見終わった後、土橋絵里はイヤホンを取り出す。

　今度は音楽を聴くつもりなのだ。駅までの道のりは人も多く、足元もまだ明るい。歩きスマホは良くない、屋外でイヤホンは使うべきでない等という人間もいるがこの状況で少しの間だけなら特に危険はないだろう、と考えつつ適当な動画を選ぶ。サイトには既に、お気に入りのミックスリストができている。聴き慣れたそれなら、再生しっぱなしにしても問題ないだろう。それからすぐ、目線を上げると土橋絵里は歩き始める。



　――その瞬間、土橋絵里は違和感を覚えた。



　いつもは自分以外にも学生や、散歩中の老人や社会人がいるはずなのに気づけば誰もいなくなっていた。

　いつも通りの街並み、その中から人間だけが綺麗さっぱり消されている。妙なこともあるものだ、と考えたが土橋絵里は深く考えない。こういうことも、たまにはあるだろうと楽観的に考えていたが再び妙な気配に襲われる。動物的な本能、咄嗟の危機回避能力。しかし、それが働くより前に土橋絵里の体は後ろの方へと強く引っ張られた。