ブラックライダー

三船祐樹⑤

「！？　っが、があああああっ！！！！！」

　途端に三船祐樹の口の中で、激痛が広がる。



　舌の上で、頬の内側で、歯と歯肉の間で。火のような熱さと突き刺すような痛みに、三船祐樹は咄嗟に吐き出そうとするが今度はブラックライダーがその口を無理やりに閉じる。

　両頬を無理やり押さえつけ、その唇まですっぽり指で覆い隠すとブラックライダーは信じられないほどの怪力で三船祐樹の口を押さえつけた。

「んが、だず、げえええええっ！！！！！」

　助けて。許して。

　そう叫びたい三船祐樹だったが、ブラックライダーはそれを許さなかった。

　涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにし、喉の奥から必死に声を出そうとする三船祐樹の口を無機質に塞ぎ続けるブラックライダー。そのまま激痛が三船祐樹の口の中で弾け、暴れまわり、耐えがたい苦痛を与え続けると――やがて三船祐樹はぐったりと動かなくなり、白目を剥いて項垂れた。

　ブラックライダーは、何も言わない。首筋や手首を触って、脈を確認するとそのまま三船祐樹を放置し立ち去っていく。車を出て、自分自身と同じ真っ黒なバイクに跨るとそのままエンジンをかけハイスピードで三船祐樹の元から走り去っていった。



　車に残された三船祐樹の無残な死体。ありえないほどの暴力と凶悪さによって踏みつぶされた、その命の成れの果て。翌朝、三船祐樹のその死骸が確認されるとその死に様は瞬く間に彼の周囲にいた人間へと広がっていった。

　一体、誰の仕業か？　なぜ加害者は、このような殺し方をしたのか？



「――あの人、口が悪くていつも酷いことばかり言っていたから口を攻撃されたのかな」



　誰かが言ったその言葉は、三船祐樹にもブラックライダーにも届くことはない。