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三船祐樹②
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「ったく、アイツは本当に使えねーよな」
言いながら、それでも三船祐樹の口元には嫌らしい笑みを浮かべている。
三船祐樹には妻と子があり、家族を大切にしている彼は若い女性を相手に恋愛感情を拗らせているわけではない。
だがそれでも後輩を「女」として見た時に、決して自分に言い返せないことをわかっていながら罵倒し怒鳴り散らすのはこの上ない快感だった。
先輩である自分に逆らえず、もはやその姿を目にするだけで縮こまり自信を無くしている彼女は三船祐樹にとっての玩具である。どれだけ乱暴に扱っても、いや、その存在を詰り否定すれば否定するほど三船祐樹は楽しくて楽しくて仕方がない気持ちになるのだった。
三船祐樹は鼻歌交じりに、自分の車へと乗りこむ。彼は全てのストレスを職場で発散させているため、家庭では「良き父、良き夫」を完璧に演じている。保護者会ではイクメンと持て囃されるし、近所での評判も良いのだ。
――だが、当の三船祐樹はそれが自分の正当な評価であると思い込んでいる。
三船祐樹は自分が恨みを買うことなど想像もしていないし、まして自分の言動が他人を害していることなど夢にも思わない。職場で後輩を苛め抜いていることは「全て仕事ができない彼女が悪い」、むしろ「声を荒げて厳しいことを言ってしまうのは、それだけ自分がきちんと仕事をしているから」だと信じ込んでいるのだが……上機嫌でエンジンをかけた三船祐樹は、鼻歌交じりに車を発進させる。
夕闇が迫り、車のライトを点けなければならなくなった頃。愛する家族の待つ家で、温かい食事を囲む光景を思い描いていた三船祐樹だったが――その背後に迫る、黒い影に彼は気がついていなかった。
言いながら、それでも三船祐樹の口元には嫌らしい笑みを浮かべている。
三船祐樹には妻と子があり、家族を大切にしている彼は若い女性を相手に恋愛感情を拗らせているわけではない。
だがそれでも後輩を「女」として見た時に、決して自分に言い返せないことをわかっていながら罵倒し怒鳴り散らすのはこの上ない快感だった。
先輩である自分に逆らえず、もはやその姿を目にするだけで縮こまり自信を無くしている彼女は三船祐樹にとっての玩具である。どれだけ乱暴に扱っても、いや、その存在を詰り否定すれば否定するほど三船祐樹は楽しくて楽しくて仕方がない気持ちになるのだった。
三船祐樹は鼻歌交じりに、自分の車へと乗りこむ。彼は全てのストレスを職場で発散させているため、家庭では「良き父、良き夫」を完璧に演じている。保護者会ではイクメンと持て囃されるし、近所での評判も良いのだ。
――だが、当の三船祐樹はそれが自分の正当な評価であると思い込んでいる。
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