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聖女とは結婚できませんよ?~王子の盛大なる勘違い~

リン・フウカ⑧

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 得体の知れない女にうつつを抜かして聖女だ婚約破棄だと喚いた挙句、本物の聖女であるアンナ様に無礼を働いたこと。

 さらに留学生である私の前でジェドを「田舎」と言い切ったことが問題視され、王位は現国王陛下の弟であるカルロ様が継ぐことになったようだ。彼とはあまり面識がないものの、柔和で穏やかな人物らしいので妻である聖女リリアン様と支え合い、上手くやっていくことができるだろう。

 代わりにエドアルド様は王族の一員という身分は剥奪されなかったものの「再教育」と称し、王城での軟禁生活が続いているようだ。「全部セシリアのせいだ、俺はあの魔女に誑かされたんだ」とあくまで自分の否を認めず、逃げてばかりだったのがかえって悪かったらしい。

 まぁ王城なら特に不便なこともないし、生きていくには問題ないだろう。



 一方、セシリア様は王子との結婚も聖女の道もどちらも諦めてしまったらしい。

 あの騒動の後、すぐに行方をくらましたもののその特徴的な容姿のためあっさりと捕まり、今では教会に仕える修道女として働いているそうだ。あんなに自分の欲望を丸出しにする人に、修道女なんて勤まるのかしら? そう思ったけれどその辺りは教会が厳しく指導するつもりらしいので、きっとなんとかなるだろう。



 そうやって色々なことが変わった中で、アンナ様はそのまま聖女としての活動を続けている。

「もう婚約はこりごりよ」と言ってこれからは聖女として生きることに専念するつもりらしいが、聖女と結婚できないのはあくまで王族の人間だけ。そのうち誰かと婚姻を結ぶこともあるかもしれないだろう。

 何にせよ私の行動は評価されたし、ジェドもこの国の人々から信頼を勝ち取ることができたようだ。留学生としての責務は全うできて良かった、と私はそっと安心したのだった。
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