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最低の告白~友人が悪役令嬢にされそうになった~
ハナ・ムラサキ⑥
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「王子、あなたの目がいつもハナ・ムラサキ様を追っていることは私、承知しておりました」
静まり返った会場でそう告白したのは、ヴィクトリア様だった。
えっ、そうなの? と驚く私を尻目にヴィクトリア様は項垂れている王子へ話しかける。
「私とあなたの関係は所詮、政略結婚であり私を愛していただけないことは覚悟の上でした。ですから王子が私との婚約を破棄しハナ・ムラサキ様との添い遂げたいと仰るのであれば、いつでもそれを受け入れる所存でした。ですのに、なぜこんなことをなさったのですか? そんなに私のことが、嫌だったのでしょうか?」
穏やかな口調、だけどその目には涙がいっぱいに浮かんでいる。
例え家ぐるみの付き合いだったとしても、ヴィクトリア様はエドワード王子に少なからず愛情を抱いていた。それが恋愛感情なのか、友人や相棒に向けるそれなのかはわからない。けれどエドワード王子は、それを裏切った。ヴィクトリア様がその理由を知りたがるのは、当然のことだろう。
「……ハナ・ムラサキを振り向かせるには、お前の存在が邪魔だった」
エドワード王子の言葉に、ヴィクトリア様が息をのむ。
「ハナは俺を『王子』としてではなくあくまで『ライジェルの人間』として見てくれた。俺はそんなハナの姿に惹かれていったが、俺がどれだけ甘い言葉をかけてもハナは愛想笑いでそれを流すだけだった。そのくせヴィクトリアには完全に心を開き、一緒にいる時は心底楽しそうな表情を見せている。俺は、それが妬ましくて仕方がなかった。だからお前を陥れ、ハナの関心を俺に向けようとしたんだ」
……最低の告白だ。
確かにエドワード王子から言い寄られたことは何度かあった。けれどそれは留学生である私に好意を持たせることで、ジェドとの関係を良くするための美辞麗句だと思っていた。
それに、私に好かれないからと言ってヴィクトリア様に嫉妬するのもおかしい。ヴィクトリア様は優しくて勉強も貴族としての振る舞いも完璧で、だからこそ憧れ友人になることができた。そんなヴィクトリア様に冤罪をかけて私が王子に靡くわけないだろう。
そう思っていた矢先。ぱしん、と乾いた音が響いた。
静まり返った会場でそう告白したのは、ヴィクトリア様だった。
えっ、そうなの? と驚く私を尻目にヴィクトリア様は項垂れている王子へ話しかける。
「私とあなたの関係は所詮、政略結婚であり私を愛していただけないことは覚悟の上でした。ですから王子が私との婚約を破棄しハナ・ムラサキ様との添い遂げたいと仰るのであれば、いつでもそれを受け入れる所存でした。ですのに、なぜこんなことをなさったのですか? そんなに私のことが、嫌だったのでしょうか?」
穏やかな口調、だけどその目には涙がいっぱいに浮かんでいる。
例え家ぐるみの付き合いだったとしても、ヴィクトリア様はエドワード王子に少なからず愛情を抱いていた。それが恋愛感情なのか、友人や相棒に向けるそれなのかはわからない。けれどエドワード王子は、それを裏切った。ヴィクトリア様がその理由を知りたがるのは、当然のことだろう。
「……ハナ・ムラサキを振り向かせるには、お前の存在が邪魔だった」
エドワード王子の言葉に、ヴィクトリア様が息をのむ。
「ハナは俺を『王子』としてではなくあくまで『ライジェルの人間』として見てくれた。俺はそんなハナの姿に惹かれていったが、俺がどれだけ甘い言葉をかけてもハナは愛想笑いでそれを流すだけだった。そのくせヴィクトリアには完全に心を開き、一緒にいる時は心底楽しそうな表情を見せている。俺は、それが妬ましくて仕方がなかった。だからお前を陥れ、ハナの関心を俺に向けようとしたんだ」
……最低の告白だ。
確かにエドワード王子から言い寄られたことは何度かあった。けれどそれは留学生である私に好意を持たせることで、ジェドとの関係を良くするための美辞麗句だと思っていた。
それに、私に好かれないからと言ってヴィクトリア様に嫉妬するのもおかしい。ヴィクトリア様は優しくて勉強も貴族としての振る舞いも完璧で、だからこそ憧れ友人になることができた。そんなヴィクトリア様に冤罪をかけて私が王子に靡くわけないだろう。
そう思っていた矢先。ぱしん、と乾いた音が響いた。
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