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大地に燃える一輪の花
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大地に燃える一輪の花
1
二日後、時乃の家に、遠藤真一から、結婚式の招待状が届いた。それを、シルフィーヌに見せると、飛び上がり喜んだ。
ここ数日の間に、時乃は、第五工場にゲートを作り、届く範囲にあった。亜空間駆逐艦不知火を地球に入れることに成功した。作業中も赤ちゃんと離れるとよくないと判断し、シルフィーヌに抱いてもらった。赤ちゃんが時々「ビール持って来い」とか寝言で言っているが知らないふりをした。
石原瑠奈は、マスコミからも解放され、時乃の家に遊びに来た。シルフィーヌに買ってもらったメトシェラのショルダーバッグは、いつも愛用している。
呼び鈴を鳴らすと、斉藤が出てきた。工場に居るということであった。石原は、スマートフォンで連絡をとるが、時乃は、電源を落としているようである。しかたがないので、あすなろ荘に行き、高遠を訪ねた。ドアノブを回したがやはり開かない。ノックしてみるが、返事がない。しかたなく、座り込むと、ドアが開き、高遠美鈴が出てきた。今日は、制服ではなく、和服テイストのゴスロリを着ている。
「我契約者よ、何かあったか」
「急に、色んなことから、解放されて、つい散歩にでたけど、目的なく歩きながら、澄香の家に着いたの、でもメイドさん以外誰もいなくて、それで、心寂しくしていたら、高遠さんに会おうと思ったの」
「それで来たわけだ」
「はい。おじゃまでしたか?」
「別にかまわんよ。今日は少し、あるところに出かけていたのでな、遅くなってすまない」
「どこ行っていたの?」
「外国、それ以上は、言えない」
「わたしも、この間ロシアにいったんだよ」
「世界を色々見るといい。でも、時が来たら、職務に就くんだ」
石原は、高遠と話すと落ち着き、帰ることにした。あすなろ荘の階段を下り、スマートフォンで時乃に電話する。今度は繫がり、シルフィーヌに代わってもらった。そして、明日遊ぶ約束をした。
*
シルフィーヌは、遠藤から来た結婚式の招待状の返信はがきに、出席という所を丸をし、ポストに出した。傍には、斉藤さんがいる。まだ、一人では、ポストに行けないだろうと判断した。時乃の配慮であった。
帰りに、魚屋があり、生簀の中を魚が泳いでいた。シルフィーヌは、メトシェラでの呼び名で魚の名前を言っていた。魚屋のおじさんは、最近、魚の名前も知らない子が増えていると思い込んだ。
家に帰ると、大阪に行った時の服に着替え、水野に買ってもらった財布を鞄に入れる。シルフィーヌは、メトシェラ金貨を多く持っていたので、小遣いには、困っていなかった。
チャイムが鳴り、石原が迎えに来た。時乃は、赤ちゃんを抱きながら、握手をした。シルフィーヌは、大人っぽいショートブーツを履き、時乃に手を振った。
二人は、喫茶桜の花で、食事をとった。店員は、ひそひそと何か話していたが、石原は、慣れていたので、気にもしなかった。コーヒーを持ってきてくれた店員は、
「瑠奈ちゃん歩けるように、なったのね」
「私の契約者の主は、恵みを注いでくれました」
「聞かないほうが良かったかな。ごめんなさいね」
店員は、頭を下げ、厨房へ行った。
シルフィーヌは、石原に、
「大切なことを話す時、なんか硬いよ」
「そうかな」
「そうだよ」
二人は、店を出ると、歩いて、ゲームセンターセゴワールドに来た。
シルフィーヌは、クレーンゲームを眺めると、お金を崩した。そして、ゲームにお金を投入すると、クレーンを操り、何も取れなかった。シルフィーヌは、石原に抱き付き、顔をうずめた。
石原は、パチンコを始めた。シルフィーヌは、何が楽しいのか分からなかった。その後に、石原は、太鼓の鉄人を披露し、シルフィーヌをびっくりさせた。
ゲームセンターセゴワールドを出ると。一人の少女がいた。その少女は、石原瑠奈に詰め寄ると、
「嘘つき!」
と言った。石原は、それでも落ち着き、話だした。時乃のこと、御使いのこと、契約のこと、しかし、錦野萌は、理解できず、
「そんな話聞いたことない!まだ異世界人に治してもらったと聞いた方が信じれたよ」
そう言うと走り去ろうとしたので、石原は、追いかけ、錦野の手を掴んだ。
「時乃澄香は、異世界の御使いなの」
「ふ~ん。私が、異世界の話しを出したから、後から、足したのね」
シルフィーヌが応援で入って来た。
「見て、この耳、この髪、この目」
「何この子、外国人、耳なんて整形すれば、その程度のとんがりできるでしょ」
シルフィーヌは、時乃が本当に御使いであることを語った。しかし、錦野は、手をほどこうとした。
「二体一なんて、卑怯じゃないの」
石原は、その言葉で、手の力を緩めた、錦野は、バランスを崩し倒れそうになったところを、シルフィーヌが支えた。
「じゃさー行ってみる?メトシェラに」
シルフィーヌは、屈託のない笑みを浮かべている。
「ほんとに行くの?」
「行こう!」
「もう、離しなさいよ」
石原は、何も準備していないのに、強引かと思ったが、錦野に理解してもらうには、体験するのが一番と判断した。
「聖方陣展開!空間跳躍!」
三人は、地球から姿を消した。
2
少女は、エレベーターに乗っているような、浮遊感を感じていた。すぐに足で立っている感触があり、目を開けた。
「ここ何処?」
「あたしんちだよ」
シルフィーヌは、嬉しそうに、家の中を見せる。
「外出る?出るなら、フード付きマント着てね」
石原は、直ぐに受け取ると、マントを着て、フードを深く被った。錦野は、よく理解できず、もたもたしていると、シルフィーヌが、無理やり着せた。
「この星では、日本人は、捕まったり、虐待に会うのだから、フード被ったり、猫耳付けたりするの」
「この星って、ここ日本でしょ。だってフィギュアとかオメンライダーの絵とかあるし」
「あはは。それは、あたしの家だからだよ。さあ。外出ようか。それと、猫耳、それとも髪染める?」
シルフィーヌは、嬉しそうにしている。
「染めると、お母さんに怒られるよ」
「じゃ、猫耳ね。今度は、動物使わないから。行こう」
シルフィーヌは、ドアを開け、はしごを先に降りる。錦野もはしごを下りてくると、手でパンと叩き、指で2を作り、次に指で丸を作り、眉毛辺りに、手をかざしている。
「何!シルなんとか」
「いあー別に、しましま」
「シルフィーヌ、私の見ないでよ」
「見ないでってことは…さっきのあれ」
「ごめん、ごめん、もうしないから」
シルフィーヌは、舌を出して、頭を掻いている。
ラマの町に入る検問所に、シルフィーヌが通行書を出すと、何事もなく入れた。あの一連の騒動で、難しいことになっていると創造したが、町は、いつも通りの活気であった。
「これって、映画の撮影じゃないの?」
「みんな本物のだよ。耳も尻尾も触るとわかるよ。でも、殴られても責任とらないよ」
錦野は、石原の能力で、別の星に来ていることを認めるしかなかった。それでも、自分が石原にいだいた思いを悪いと言葉で言えなかった。
「シルフィーヌじゃないか!」
一人の青年が声を掛けてきた。
「おお!エルスカルじゃないか」
「ジェスト様は、今、八番街のマキって言う酒場にいますぜ」
「ありがとう!助かる」
青年とは、その場で分かれた。三人は、闇医者に行き、石原には、猫の耳を錦野には、狐の耳を頭に付けた。今度の耳は、一週間で取れるそうである。二人は、フードを被らない解放感が嬉しかった。シルフィーヌは、服も用意してあげたかったが、早くに、ジェストに会いたかったので、八番街のマキと言う酒場に急いだ。途中、占い師が絡んできたが、石原は、錦野に、魔術に深く関わっているから、相手にしないほうがいいと説明した。
酒場に入ると、シルフィーヌは、多くの仲間と会い、喜んだ。カウンター席を見ると、ジェストが、あわあわを飲んでいた。三人に気が付くと、席を立ち、シルフィーヌと握手をし、石原瑠奈とおじぎをし、錦野には、自己紹介をした。
ジェストは、現在の状況を話した。
「ソドム王と貴族は、宮殿に立てこもっている。闇ギルドの連中も、同じく宮殿にいる。何故そうなったかと言うと。世界中から、日本人を助けるために、ここマラに集結したからである。タイミング良く我も、メトシェラに戻ることができ、現在の状態を保持している。今後は、現政権を倒し、プレアディスから独立し、我々が日本から学んだ多くのもので、国を維持していきたい」
シルフィーヌもジェストの横に立ち、
「あたしも手伝うよ!」
「シルフィーヌ、日本に行かないの?」
石原は、黒い目をシルフィーヌに向けた。
「あたしは、メトシェラ産まれだし、やっぱり、ここ好きなんだ。だから帰ったら水野に伝えて、シルフィーヌは、水野のこと好き。そして一緒にいたけど、今は、やるべき使命を優先しますってね」
シルフィーヌの頬を一筋の涙が流れた。
「え!なんか私たち帰る前提?」と石原。
「そうだよ、仲直りした。石原瑠奈と錦野萌は、日本で、あたしたちを応援するのです」
「私がいなくても大丈夫なの?」
石原は、首を掲げた。
「瑠奈、それは、思い上がりだよ。あたしたちをもっと信頼して」
「そうだね。ごめんね」
「いいよ。いいよ。これからもっと色んなことあると思う。それは、瑠奈は重荷を負わないといけないから」
シルフィーヌは、石原の肩に手を置き、またの再会を願った。
錦野は、全てのことを理解し、石原に心から謝った。石原は、錦野に抱き着き、心から、受け入れた。
ジェストとシルフィーヌは、二人に、早く日本に戻ることを勧めた。
そして、空き地から、空間跳躍した。ただ、座標が上手くとれず、高遠美鈴の部屋に現れた。高遠は、正座をし、畳に座っていた。
「二人とも!畳に靴で上がるな!」
「ごめんなさい。ここしか座標を思いつかなくて」
そう言うと、二人は、靴を脱ぎ、雑巾を持ってきて、畳を拭いた。
「高遠さんって、ここに住んでいるのですね」
錦野は、不思議そうに、部屋の中を見ている。部屋の中には、段ボール箱と布団があるだけなのである。
「二人とも、あまり外の物を持ち込まないように、特にその耳!外してあげるから、今日は、帰りなさい。もう二十時回っている」
石原と錦野は、耳を外してもらい、大切に持って帰った。
夜も遅かったが、怖くはなかった。それは、傍に親友がいるから。
3
石原瑠奈は、二年生にかろうじて進級し学校へ通うようになった。通学時隣には、錦野萌がいた。二人の結束は、硬く、親友の絆で結ばれていた。これも、シルフィーヌのおかげである。教室に入ると、みんなに挨拶をし、高遠には、握手をした。
時乃も同じクラスだが、出席扱いで、理事長室にいる。それは、この学校が、フィンの残してくれたものであり、自分が切り盛りする必要があると感じたからである。もう一つの理由は、赤ちゃんである。あれから少し大きくなり、離乳食を食べるようになっていた。
休み時間になり、石原と錦野が理事長室にノックをしてから入って来た。
「いいとことに来たな」
時乃は、ツインテールに縛った髪を揺らしながら、とても嬉しそうにしている。
「今からオムツをかえる」
「澄香、いい加減にしろ」と赤ちゃん。
「いい子だねーオムツ開けようか、うわーうんちしているね」
そう言いながら、お尻を丁寧に拭き新しいオムツを穿かせる。
「澄香ごめんなさい。もうビールくれとか言わないから、みんなの前で、オムツ換えるの勘弁してください」と赤ちゃん。
石原も錦野も大笑いした。
「そろそろ、フラットも第一エボリューションする」
「何ですか、それ」錦野が聞いた。
「みんなの知っているゲームで言う進化だが、ダーウィンの進化論とは違う。そろそろかな」
時乃は、赤ちゃんのお腹に何か書いた。しばらくすると聖方陣が展開し、赤ちゃんは、幼女になった。
「澄香!服ないのか、というか、まだこんなに小さいし、早く力を取り戻してくれよ」
フラットは、胸を隠しながら、カーテンに巻き付く。
石原は、バスタオルを持ってきて、フラットに掛けてあげた。
「後で、家から、私のお古だけど、服もってきてあげるね」
フラットは、親指を立て、ナイスを送った。
「そうそう、今度の遠足、熊本の水前寺公園だって」
「いい所なのかい?」
「とても水の綺麗な公園ですよ」
「彼も行くわけだ。ならわたしも行こう」
時乃は、真鍮色の髪を揺らし、石原を見つめ言った。
石原は、少し心配であったが、時乃も行くということで、安心した。
校内の桜も散り、新しい動きが地球にあるだろう。
了
1
二日後、時乃の家に、遠藤真一から、結婚式の招待状が届いた。それを、シルフィーヌに見せると、飛び上がり喜んだ。
ここ数日の間に、時乃は、第五工場にゲートを作り、届く範囲にあった。亜空間駆逐艦不知火を地球に入れることに成功した。作業中も赤ちゃんと離れるとよくないと判断し、シルフィーヌに抱いてもらった。赤ちゃんが時々「ビール持って来い」とか寝言で言っているが知らないふりをした。
石原瑠奈は、マスコミからも解放され、時乃の家に遊びに来た。シルフィーヌに買ってもらったメトシェラのショルダーバッグは、いつも愛用している。
呼び鈴を鳴らすと、斉藤が出てきた。工場に居るということであった。石原は、スマートフォンで連絡をとるが、時乃は、電源を落としているようである。しかたがないので、あすなろ荘に行き、高遠を訪ねた。ドアノブを回したがやはり開かない。ノックしてみるが、返事がない。しかたなく、座り込むと、ドアが開き、高遠美鈴が出てきた。今日は、制服ではなく、和服テイストのゴスロリを着ている。
「我契約者よ、何かあったか」
「急に、色んなことから、解放されて、つい散歩にでたけど、目的なく歩きながら、澄香の家に着いたの、でもメイドさん以外誰もいなくて、それで、心寂しくしていたら、高遠さんに会おうと思ったの」
「それで来たわけだ」
「はい。おじゃまでしたか?」
「別にかまわんよ。今日は少し、あるところに出かけていたのでな、遅くなってすまない」
「どこ行っていたの?」
「外国、それ以上は、言えない」
「わたしも、この間ロシアにいったんだよ」
「世界を色々見るといい。でも、時が来たら、職務に就くんだ」
石原は、高遠と話すと落ち着き、帰ることにした。あすなろ荘の階段を下り、スマートフォンで時乃に電話する。今度は繫がり、シルフィーヌに代わってもらった。そして、明日遊ぶ約束をした。
*
シルフィーヌは、遠藤から来た結婚式の招待状の返信はがきに、出席という所を丸をし、ポストに出した。傍には、斉藤さんがいる。まだ、一人では、ポストに行けないだろうと判断した。時乃の配慮であった。
帰りに、魚屋があり、生簀の中を魚が泳いでいた。シルフィーヌは、メトシェラでの呼び名で魚の名前を言っていた。魚屋のおじさんは、最近、魚の名前も知らない子が増えていると思い込んだ。
家に帰ると、大阪に行った時の服に着替え、水野に買ってもらった財布を鞄に入れる。シルフィーヌは、メトシェラ金貨を多く持っていたので、小遣いには、困っていなかった。
チャイムが鳴り、石原が迎えに来た。時乃は、赤ちゃんを抱きながら、握手をした。シルフィーヌは、大人っぽいショートブーツを履き、時乃に手を振った。
二人は、喫茶桜の花で、食事をとった。店員は、ひそひそと何か話していたが、石原は、慣れていたので、気にもしなかった。コーヒーを持ってきてくれた店員は、
「瑠奈ちゃん歩けるように、なったのね」
「私の契約者の主は、恵みを注いでくれました」
「聞かないほうが良かったかな。ごめんなさいね」
店員は、頭を下げ、厨房へ行った。
シルフィーヌは、石原に、
「大切なことを話す時、なんか硬いよ」
「そうかな」
「そうだよ」
二人は、店を出ると、歩いて、ゲームセンターセゴワールドに来た。
シルフィーヌは、クレーンゲームを眺めると、お金を崩した。そして、ゲームにお金を投入すると、クレーンを操り、何も取れなかった。シルフィーヌは、石原に抱き付き、顔をうずめた。
石原は、パチンコを始めた。シルフィーヌは、何が楽しいのか分からなかった。その後に、石原は、太鼓の鉄人を披露し、シルフィーヌをびっくりさせた。
ゲームセンターセゴワールドを出ると。一人の少女がいた。その少女は、石原瑠奈に詰め寄ると、
「嘘つき!」
と言った。石原は、それでも落ち着き、話だした。時乃のこと、御使いのこと、契約のこと、しかし、錦野萌は、理解できず、
「そんな話聞いたことない!まだ異世界人に治してもらったと聞いた方が信じれたよ」
そう言うと走り去ろうとしたので、石原は、追いかけ、錦野の手を掴んだ。
「時乃澄香は、異世界の御使いなの」
「ふ~ん。私が、異世界の話しを出したから、後から、足したのね」
シルフィーヌが応援で入って来た。
「見て、この耳、この髪、この目」
「何この子、外国人、耳なんて整形すれば、その程度のとんがりできるでしょ」
シルフィーヌは、時乃が本当に御使いであることを語った。しかし、錦野は、手をほどこうとした。
「二体一なんて、卑怯じゃないの」
石原は、その言葉で、手の力を緩めた、錦野は、バランスを崩し倒れそうになったところを、シルフィーヌが支えた。
「じゃさー行ってみる?メトシェラに」
シルフィーヌは、屈託のない笑みを浮かべている。
「ほんとに行くの?」
「行こう!」
「もう、離しなさいよ」
石原は、何も準備していないのに、強引かと思ったが、錦野に理解してもらうには、体験するのが一番と判断した。
「聖方陣展開!空間跳躍!」
三人は、地球から姿を消した。
2
少女は、エレベーターに乗っているような、浮遊感を感じていた。すぐに足で立っている感触があり、目を開けた。
「ここ何処?」
「あたしんちだよ」
シルフィーヌは、嬉しそうに、家の中を見せる。
「外出る?出るなら、フード付きマント着てね」
石原は、直ぐに受け取ると、マントを着て、フードを深く被った。錦野は、よく理解できず、もたもたしていると、シルフィーヌが、無理やり着せた。
「この星では、日本人は、捕まったり、虐待に会うのだから、フード被ったり、猫耳付けたりするの」
「この星って、ここ日本でしょ。だってフィギュアとかオメンライダーの絵とかあるし」
「あはは。それは、あたしの家だからだよ。さあ。外出ようか。それと、猫耳、それとも髪染める?」
シルフィーヌは、嬉しそうにしている。
「染めると、お母さんに怒られるよ」
「じゃ、猫耳ね。今度は、動物使わないから。行こう」
シルフィーヌは、ドアを開け、はしごを先に降りる。錦野もはしごを下りてくると、手でパンと叩き、指で2を作り、次に指で丸を作り、眉毛辺りに、手をかざしている。
「何!シルなんとか」
「いあー別に、しましま」
「シルフィーヌ、私の見ないでよ」
「見ないでってことは…さっきのあれ」
「ごめん、ごめん、もうしないから」
シルフィーヌは、舌を出して、頭を掻いている。
ラマの町に入る検問所に、シルフィーヌが通行書を出すと、何事もなく入れた。あの一連の騒動で、難しいことになっていると創造したが、町は、いつも通りの活気であった。
「これって、映画の撮影じゃないの?」
「みんな本物のだよ。耳も尻尾も触るとわかるよ。でも、殴られても責任とらないよ」
錦野は、石原の能力で、別の星に来ていることを認めるしかなかった。それでも、自分が石原にいだいた思いを悪いと言葉で言えなかった。
「シルフィーヌじゃないか!」
一人の青年が声を掛けてきた。
「おお!エルスカルじゃないか」
「ジェスト様は、今、八番街のマキって言う酒場にいますぜ」
「ありがとう!助かる」
青年とは、その場で分かれた。三人は、闇医者に行き、石原には、猫の耳を錦野には、狐の耳を頭に付けた。今度の耳は、一週間で取れるそうである。二人は、フードを被らない解放感が嬉しかった。シルフィーヌは、服も用意してあげたかったが、早くに、ジェストに会いたかったので、八番街のマキと言う酒場に急いだ。途中、占い師が絡んできたが、石原は、錦野に、魔術に深く関わっているから、相手にしないほうがいいと説明した。
酒場に入ると、シルフィーヌは、多くの仲間と会い、喜んだ。カウンター席を見ると、ジェストが、あわあわを飲んでいた。三人に気が付くと、席を立ち、シルフィーヌと握手をし、石原瑠奈とおじぎをし、錦野には、自己紹介をした。
ジェストは、現在の状況を話した。
「ソドム王と貴族は、宮殿に立てこもっている。闇ギルドの連中も、同じく宮殿にいる。何故そうなったかと言うと。世界中から、日本人を助けるために、ここマラに集結したからである。タイミング良く我も、メトシェラに戻ることができ、現在の状態を保持している。今後は、現政権を倒し、プレアディスから独立し、我々が日本から学んだ多くのもので、国を維持していきたい」
シルフィーヌもジェストの横に立ち、
「あたしも手伝うよ!」
「シルフィーヌ、日本に行かないの?」
石原は、黒い目をシルフィーヌに向けた。
「あたしは、メトシェラ産まれだし、やっぱり、ここ好きなんだ。だから帰ったら水野に伝えて、シルフィーヌは、水野のこと好き。そして一緒にいたけど、今は、やるべき使命を優先しますってね」
シルフィーヌの頬を一筋の涙が流れた。
「え!なんか私たち帰る前提?」と石原。
「そうだよ、仲直りした。石原瑠奈と錦野萌は、日本で、あたしたちを応援するのです」
「私がいなくても大丈夫なの?」
石原は、首を掲げた。
「瑠奈、それは、思い上がりだよ。あたしたちをもっと信頼して」
「そうだね。ごめんね」
「いいよ。いいよ。これからもっと色んなことあると思う。それは、瑠奈は重荷を負わないといけないから」
シルフィーヌは、石原の肩に手を置き、またの再会を願った。
錦野は、全てのことを理解し、石原に心から謝った。石原は、錦野に抱き着き、心から、受け入れた。
ジェストとシルフィーヌは、二人に、早く日本に戻ることを勧めた。
そして、空き地から、空間跳躍した。ただ、座標が上手くとれず、高遠美鈴の部屋に現れた。高遠は、正座をし、畳に座っていた。
「二人とも!畳に靴で上がるな!」
「ごめんなさい。ここしか座標を思いつかなくて」
そう言うと、二人は、靴を脱ぎ、雑巾を持ってきて、畳を拭いた。
「高遠さんって、ここに住んでいるのですね」
錦野は、不思議そうに、部屋の中を見ている。部屋の中には、段ボール箱と布団があるだけなのである。
「二人とも、あまり外の物を持ち込まないように、特にその耳!外してあげるから、今日は、帰りなさい。もう二十時回っている」
石原と錦野は、耳を外してもらい、大切に持って帰った。
夜も遅かったが、怖くはなかった。それは、傍に親友がいるから。
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石原瑠奈は、二年生にかろうじて進級し学校へ通うようになった。通学時隣には、錦野萌がいた。二人の結束は、硬く、親友の絆で結ばれていた。これも、シルフィーヌのおかげである。教室に入ると、みんなに挨拶をし、高遠には、握手をした。
時乃も同じクラスだが、出席扱いで、理事長室にいる。それは、この学校が、フィンの残してくれたものであり、自分が切り盛りする必要があると感じたからである。もう一つの理由は、赤ちゃんである。あれから少し大きくなり、離乳食を食べるようになっていた。
休み時間になり、石原と錦野が理事長室にノックをしてから入って来た。
「いいとことに来たな」
時乃は、ツインテールに縛った髪を揺らしながら、とても嬉しそうにしている。
「今からオムツをかえる」
「澄香、いい加減にしろ」と赤ちゃん。
「いい子だねーオムツ開けようか、うわーうんちしているね」
そう言いながら、お尻を丁寧に拭き新しいオムツを穿かせる。
「澄香ごめんなさい。もうビールくれとか言わないから、みんなの前で、オムツ換えるの勘弁してください」と赤ちゃん。
石原も錦野も大笑いした。
「そろそろ、フラットも第一エボリューションする」
「何ですか、それ」錦野が聞いた。
「みんなの知っているゲームで言う進化だが、ダーウィンの進化論とは違う。そろそろかな」
時乃は、赤ちゃんのお腹に何か書いた。しばらくすると聖方陣が展開し、赤ちゃんは、幼女になった。
「澄香!服ないのか、というか、まだこんなに小さいし、早く力を取り戻してくれよ」
フラットは、胸を隠しながら、カーテンに巻き付く。
石原は、バスタオルを持ってきて、フラットに掛けてあげた。
「後で、家から、私のお古だけど、服もってきてあげるね」
フラットは、親指を立て、ナイスを送った。
「そうそう、今度の遠足、熊本の水前寺公園だって」
「いい所なのかい?」
「とても水の綺麗な公園ですよ」
「彼も行くわけだ。ならわたしも行こう」
時乃は、真鍮色の髪を揺らし、石原を見つめ言った。
石原は、少し心配であったが、時乃も行くということで、安心した。
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