天翔る、美章園!0.5 <大地の精霊使い>

星雲八号

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首都ラマ

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     首都ラマ

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 ジェストは、広場に民衆を集め、
「これ以上、日本人を見殺しにしてはいけない。とある情報すじによると、現在メトシェラにいる日本人を触媒とし、地球に刻印を打ち込み、ゲートを作るつもりだ!そして日本人を捕まえ、その肉体を己のものとし、寿命を延ばすことだろう。それは、前プレアディス皇帝アンテオカス・エピファネスも時乃真奈を使って実行しようとした。その計画は、ある方によって阻止されたと、報告を受けている。民衆よ!萌え文化好きだろ!ラノベ好きだろ!日本人を守るのだ!我に従え!これより首都ラマに捕らえられている日本人を助けるため、戦いに出る!一刻を争う。午後一時に全軍出陣する!よいか!」
 民衆は大声を上げて、ジェストに答えた。

 シルフィーヌは、大して用意するものはないので、実家に向かった。
 家の前には、一番下の弟、アザルヤが砂で遊んでいた。
「アザルヤ久しぶりだね」
「お姉ちゃんだ」
 シルフィーヌは、弟を抱き上げると、強く抱きしめた。
 家に入ると、母が出迎えてくれた。いつも母を見ると、精霊との契約のことを思い出す。だから、涙目になり辛いので、抱き付き、
「お母さん、ありがとう」
 と心から言った。妹たちの部屋に行くと、忙しそうに、戦争の準備をしていた。三人とも精霊使い。だけど契約した精霊の階級が低いので、シルフィーヌほど戦えない。
「みんな先に行くね」
 シルフィーヌは、軽く手を振り、家を出る。扉に、見たことない文字を書き込み、安全を願った。
 石原瑠奈は、シルフィーヌを待つ間、食べ物屋を巡っていた。ショルダーバックいっぱいになるまで、買い込んだ。途中、占い師に、止められ、
「あんた!ただ者じゃないね。わかるよ、くくく」
 と言われ、逃げた。そして酒場まで行くと、シルフィーヌが手を振っていた。

        2

二人は、ストーンゴーレムに乗り、マゴクの町の入口に待機した。まだ、一時ではなかったからである。
時が進み、午後一時集まった兵士は、約四千二百、シルフィーヌのストーンゴーレムを先頭に、首都ラマに向け進軍した。そのほとんどのものは、馬車に乗り移動した。
各自休憩しながら、午前三時には、首都近郊についた。交代で仮眠をとり、斥候を放った。
斥候の話によると、宮殿に巨大な塔があり、そして巨大な砲塔が空の彼方に向かって伸びていると言うことであった。ジェストは、シルフィーヌと話、それが、異世界と繋ぐ兵器であると断定した。また触媒は日本人であると確信した。
「日本人を助け出せば、あの兵器は可動できない―捕らわれている場所を探し出すんだ」
 シルフィーヌは、ゴーレムを消し、服装を整えた。石原瑠奈は、もう何日もお風呂に入っていないことを気にした。
首都への街道は何時もと同じ賑わいであった。シルフィーヌは通行書を見せると、すんなりラマに入ることができた。途中占い師がうるさく付きまとったが、なんとか振り切ることができた。魔法の杖を売っている店があり、石原瑠奈は、見入ってしまった。そうあの映画の影響である。シルフィーヌは、石原に、必要ないと言い聞かせた。
シルフィーヌは、初めて入る酒場に入った。店の雰囲気は、あまり変わりがない、しかし、何かおかしい、目線が気になる。石原は、店の奥に、以前見た、男の姿を確認した。
「シルフィーヌ出た方がいいよ」
「どうして」
「以前、私を見ていた男がいるの」
「なるほど、あの男だな」
 そう言うと、シルフィーヌは、男に近づき、「おい!ぼっちゃんいい子だ金だしな」
 と言った。石原は、笑う所ではないが、心から笑った。
「何言ってやがる。くそが、俺の腹パン食らいたいのか」
 そう言うと、男は、シルフィーヌにパンチを繰り出した。しかし、ひらりとかわし、膝蹴りを入れ、右手でアッパーをした。男は、口から血の塊と歯が飛び出し、倒れた。懐を探すと、通行書に『中野』と書いてあった。他にはないかと探ると、暗号で書かれた、手帳が出てきた。シルフィーヌは、目を通すと、顔が青ざめた。
「罠か」
「どうしたの?」
 石原は、覗き込む。
「あたしたちを首都に入れ、一網打尽にする計画」
 そう言い終わると、店にいた屈強な男が、ロングソードと盾を持ち、襲いかかってきた。
「プラントバインド」
 植物のつるで男は、動けなくなった。二人は急ぎ、ジェストの元に向かった。しかし、大通りは、屈強な戦士で溢れていた。
「これみんな相手するのか」
 シルフィーヌは、ため息を出し、
「瑠奈!ライトニングナイト1レギオン」
 石原瑠奈は、召喚させると、攻撃させた。屈強な戦士たちは、皆倒れた。
 綺麗に掃除をされた大通りを下ると、軍隊が出てきた。しかもヘリコプターが支援していた。
 シルフィーヌは、ヘリコプターにプラントバインドさせ墜落させた。しかし、軍隊は、前進してきた。銃の弾が、腕にあたり、軽く負傷したが、怯むことなく、
「大地の精霊よ、我!召喚する。オリハルコンゴーレム」
 巨大なゴーレムは、軍隊を、家を、町を壊していく。シルフィーヌは、心の中で、住みなれた町に対して謝った。
 現在の状況的に、首都の外に出るのは、難しい、ならばと、シルフィーヌは、宮殿に向かって走り出した。途中、軍人たちに呼び止められるが、アースアローで倒していった。
 宮殿に着くと、可動橋は上げられ、大きな堀が行く手を阻んだ。
「あたし水苦手だけど、行くしかないね」
「泳ぐの?」
「だね。あそこの船着き場まで行けば、中にいけるよ」
 石原も覚悟を決め、シルフィーヌと同時に、堀に飛び込んだ。すると、石原の霊脈が輝きだし、清め始めた。船着き場に着くと、石原は、濡れていなかった。シルフィーヌは、ずぶ濡れで体の線がよくわかる。石原は、思わず、
「エロフ!」
 と言った。シルフィーヌは、恥ずかしくなり、精霊に清めてもらった。そこに、東方向から誰かが来た。ジェストと天王寺であった。
「よく無事だったな」
 二人もずぶ濡れだが、乾かす方法がない。天王寺は、恥ずかしそうに、体を手で隠している。
「みんなは?」
「だめだ、闇ギルドの連中にやられた。軍隊も南から上がってきている。結局、ここに来るしかなかった」
「なら、虎穴に入らずんば虎子を得ずです」
「何それ?」
「危険を避けていては、大きな成功もないということです」
 と石原は、言った。
「よし、宮殿の塔の下に何かあるかもしれない。行こう」
 ジェストは、そう言うと、ズボンの絡みを取りながら、宮殿の中に入った。当然出てきたのは、親衛隊である。シルフィーヌは、ゴーレムを維持するのに、マナを使い、あまり攻撃ができない。天王子は、格闘し、銃を奪い敵を倒していった。ジェストは、親衛隊を物色しながら、銃やそれなりのものをポケットに入れた。石原瑠奈は、ハンドガンを拾い掴むと、雷が出て感電し銃を落とした。あまりのことに、驚き、シルフィーヌに抱き付いた。
「たぶん。ライジングという御使いが何かをかけてあるかもね」
 二人は、天王寺を追いかけて、宮殿内部に入った。そこは、どこも大理石でできており、とても清潔で豪華であった。シルフィーヌは、いくつもの隠し扉を精霊で見極め、入って行く。すると、悪臭のする扉があった。天王寺は、内心嫌な予感がした。たぶん。そうだからである。
 ジェストは、扉を開けた。そこには、日本人の男女が隙間なく入れられていた。あまりの光景に、石原瑠奈は、涙を流し、しゃがみ込んだ。日本人たちは言った。
「殺して下さい。もう生きているのが辛い。お願いします。殺してください」
「みんな聞いてくれ、私たちは、日本人を助けに来た。ここにいるもの誰一人死んではいけない」
 天王寺は、大声で言った。
「助かる。どうやって、もう何人も触媒にされているんだぞ」男は叫んだ!
「ジェスト様、イ四百を使えないのですか?」
「無理だ、時乃澄香のゲートまで行く必要がある」
 その瞬間後ろから、ジェストが槍で刺された。天王寺は、素早く蹴りを入れ、扉を閉めた。
「石原、扉を、雷で溶かすんだ」
「はい。でも、レベルはどれくらいですか、私は、上位のほうが安定して出せます」
「なら、でかいのたのむぜ」と天王寺
「ライトニングシーボルト」
 雷が落ち、扉を溶かし、密室にした。
『おろか者たち、われは、メトシェラの王ソドムである。その部屋がお前たちの棺桶だ。そう。そここそ触媒に必要な、百人を溜める場所、まあ実験で何人かは、使わせてもらったがな。さあ、あと十秒だ!安心しろ即死だから』
 石原瑠奈の行動は、早かった。部屋の中央に立つと、金色の聖方陣を展開し、
「空間跳躍!座標、高尾野グラウンド!」
 金色の光が部屋中に満ち、そこにいた全ての人は、消えた。青年は、長い時間に感じた。息をしているかもよくわからない。エレベーターに乗った時のような浮遊感があり、その後、地面のような感触があった。
 そこは、高尾野グラウンド、何故か、大きな窪みがある。青年は、看板をみて、泣き崩れた。
「日本だ」
 この日、日本人の男女九十九人とベルニケ人天王寺ロシア、エロフ族のシルフィーヌ、ジャパンの代表ジェストそして、百人目の日本人だった、石原瑠奈は、日本に跳躍した。

 しばらくは、窪みにいたが、それぞれ、グラウンドの居場所のいいところに移動した。
 石原瑠奈は、ジェストとシルフィーヌを治療していた。すると、肩に温かみを感じたので、振り返ると、二人の姿があった。
「高遠さん!それに澄香」
「よくやった。石原瑠奈!日本人を助けたな。今後は、プレアディスに神隠しで行かないように、時乃が見張る」
 高遠がそう語ると、
「石原、わたしのために、多くの試練を受けてくれてありがとう、良き契約者が与えられ感謝だ」
 時乃澄香は、頭を下げた。手には、赤ちゃんが抱かれている。
「石原、君のスマートフォンだ。日本人を保護してもらうといい」
 石原は、電話をしたが、なかなか信じてもらえなかった。しかも自分自身が、捜索願が出されているのを知ることになる。時乃と高遠は、ジェスト、天王寺、シルフィーヌと握手を交わし、自己紹介した。そして、しばらくの間、時乃の家に泊まることを勧めた。しかしジェストは、すぐにメトシェラに戻りたいと言うので、時乃は、人目につかない様に、跳躍させた。
 その後、警察が来て、九十九人の日本人と、石原瑠奈を保護した。時乃は、機転を利かし、高遠、天王寺、シルフィーヌをタクシーに乗せた。シルフィーヌは、車に乗ったのが初めてであったので、あちらこちら、動いて落ち着かない。
 そして、時乃の家に着き、高遠は姿を消した。時乃澄香は、自分の表札を何度もなぞっていた。そして、カードキーを入れ、中へ入る。そこには「おかえりなさい、澄香」と言ってくれるフィンはもういない。
 時乃は、目を潤ませながら、赤ちゃんを見る。
「いい子だねーフラット」
 と、弱みに付け込む笑みをもらした。そして、二人を家の中に案内して、石原からの連絡を待った。
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