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シルフィーヌ
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シルフィーヌ
1
シルフィーヌは、幼いころから、面倒見の良い子でした。父は、錬金術に没頭し、ホムンクルスを作ることに夢中でした。それ故、家計は、火の車、母は、シルフィーヌと三人の娘と二人の息子を育てるために、夜遅くまで、薬草の仕事をしていました。長女のシルフィーヌは、早くから薬草の知識を身に着けて、母の手伝いをしました。それでも、家計は、豊かにならず、お粥だけの日も数多く、妹たちは、お腹をすかせて、夜も寝付かない日々を送っていました。十二歳になった、シルフィーヌは、町で張り紙を見ました。
『求!精霊使い 高給優遇』
給料を見ると、ありえない金額でした。家に帰り、母に精霊使いになる方法を聞くと、
「精霊に選ばれなかったら、その精霊に食べられるのよ」
シルフィーヌは、それでも、家族のためにと毎日、森に出かけて、精霊を呼び続けました。しかし、何の応答もありませんでした。
ある日のこと、いつものように、森に出かけると、黒髪の少年が座り込んでいました。シルフィーヌは、恐る恐る近寄ると、
「まいど!」
と黒い目を向けて挨拶してきた。シルフィーヌは、怖くなり逃げようと思うと、服を掴まれ、
「君、エルフだよね。耳でわかるよ」
と言ってきたが、シルフィーヌは、
「エルフじゃなり、エロフ」
「何、そのエロそうな民族」
「ぶー」
「ごめん。ところで、ここ何処なんだい」
「ここは、マゴクの森の中」
「じゃ、なんて世界、ほらよく言うよね、昭和の世界とか」
「世界は、よく分からないけど、ここメトシェラは、プレアディスに属している惑星だよ」
シルフィーヌは、掴まれていた手をほどくと、まじまじと少年を見た。とても綺麗な顔立ちで、身なりもすごくいい、年の頃は、十七位、好きになったわけではないが、心が揺さぶられた。
「名前!名前なんて言うの?」
「遠藤真一」
「しんちゃんか」
「それ言うな」
遠藤は、容赦なく叩いた。
「うちくる?」
「いいのかい?」
「いいよ。一人増えても大して変わらないから」
シルフィーヌは、遠藤を家に連れてきたが、母は、理解できず、ドアを閉めてしまった。やむをえず、弟の部屋の窓から家に入る。遠藤は、弟たちに挨拶し、バッグの中から、人型の人形を出して見せた。弟たちが食いつくかと思ったが、シルフィーヌが食いつき、
「何それ、呪いに使うあれ?違うの」
「これは、オメンライダーと言うんだ」
「ほほぅ。触ってもいい?」
「どうぞ」
シルフィーヌは、隅から隅まで、人形を眺めた。とても楽しい時であったが、外が騒がしくなってきた。窓から覗くと、貴族の軍人が二十人程来ている。部屋に母が来たと思ったら、軍人たちも来て、遠藤を拘束し連れて行った。シルフィーヌは、人形を握りながら、叫び続けた。
「遠藤!遠藤を返して!」
シルフィーヌは、夜まで泣き続け、食事もしなかった。そして、暗い夜道を森に入り、大地にうつ伏せになり、
「大地の精霊よ、あたしに力を与えたまえ」
しかし、呼びかけに答えたのは、精霊ではなく、妖獣であった。鋭い牙をむき出しに、襲いかかろうとしている。しかし、その間に割って入った人影があった。後姿から、エロフだと分かる。
「アースアロー」
妖獣は、瞬殺された。助けてくれた。エロフは、振り向き、
「大丈夫だった御嬢さん」
「ありがとう」
「わたくしは、大地の精霊使い、フィフィル。あなたは?」
「あたしは、シルフィーヌ、人を助けたいのだから、精霊使いになりたいの!直ぐに」
フィフィルは、優しく、シルフィーヌを起こし、頭を撫で、
「あなた、ほんと、わたくしの幼いころみたいね。もう千年も前だけど、いいわ試練に打ち勝ったら、大地の精霊と契約させてあげる」
シルフィーヌは、嬉しくなり、涙を流した。
「試練はね。受けるのはいいけど、失敗したら、あなたの命をさしだしなさい。わかりましたか?」
「はい。覚悟できています」
フィフィルは、目を細めて、
「試練は、あなたの母親の首を持ってくること」
シルフィーヌは、顔から血の気が失せるのを感じた。確かに母のしたことは、憎い、たぶんお金のために、遠藤を売ったのだろう。でも、愛する母を殺すことはできないと嘆いた。
「精霊使いを甘く見ない方がいいわよ。魔女とそんなに変わりない」
フィフィルは、鋭い眼差しで、シルフィーヌを見た。
シルフィーヌは、挨拶もしないで、森を後にした。自分が憧れていた、精霊使いがこれほど、残酷で愛がないと知り、涙が流れた。
家に帰ると、母と目があった。シルフィーヌは、涙を流し始めた。
「あの日本人の子のことかい。もう忘れるんだよ。悪魔のような黒い髪、闇の魔法にとりつかれているような黒い瞳。怖い怖い」
シルフィーヌは、妹たちのいる自分の部屋に入った。悲しくて、まだ、涙を流している。妹たちは、ハンカチを持ってきて、涙を拭いてあげた。その優しさが、また、涙をそそり、妹たちの手をとり、泣いてしまった。なぜか、妹たちも泣きだし、収拾がつかなくなってきた。
夜になり、シルフィーヌは、包丁を取り、母の寝込みを襲おうとしたが、母の顔を見ると、涙が溢れて、何もしないで、森に入っていった。
フィフィルは、シルフィーヌを見つけ、
「シルフィーヌ首は?」
「ないです」
「しかたないね。約束通り、あなたが死ぬのよ」
そう言うと、シルフィーヌは、植物でバインドされ、動けなくなった。フィフィルは、アースアローを打ち込んだ。瞬間、マジックシールドが張られた。
「誰?」
フィフィルは、辺りを見渡した。そこに、光に包まれた四枚羽の精霊が現れた。
「フィフィルあなたのことは、何千年と見てきました。人格、品性、愛、どれもあなたからは、感じられなかった。精霊の力が使えることにより、傲慢になり、不品行のかぎりをつくし汚れた俗物となり、もはや、あなたを生かしておくことはできません」
フィフィルは、攻撃しようとしたが、大地の精霊の能力は、何も使えなかった。そして、精霊から出された、大地の大剣で刺し通され、息絶えた。
シルフィーヌは、怖くなり、後ずさった。精霊は、そんなシルフィーヌにお構いなく、近づき、
「私は、大地の大精霊、ノア」
そう言うと、シルフィーヌの体に、読むことのできない文字を書き刻んだ。
その後、シルフィーヌは、意識を失い、一週間、森の大地に倒れていた。夢の中で、精霊の使い方を学び、その力は、メトシェラでもトップクラス。
一週間も時がたったのに、服に汚れもなく、臭くもない。家に帰り、母に抱き着き、殺そうとしたことを悔いた。
シルフィーヌは、簡単に、荷物をまとめ、母にしばらく家を空けることを願った。母は、快く申し出を受け入れた。
2
シルフィーヌは、貴族の館へ行くと、精霊を使って、探索させた。結果、三軒目の館に、遠藤がいることが、分かった。夜になり静まった頃に、ストーンゴーレムを召喚し、門を壊し中へ入った。軍人たちが出てきたが、ゴーレムを次々出し。攻撃した。人の体力は、そんなにもつものではないので、軍人たちは、疲れ果ててしまった。シルフィーヌは、ゴーレムに軍人たちを見張らせ、遠藤のもとに急ぐ、
「遠藤!遠藤!どこ」
シルフィーヌは、叫ぶ。すると、奥の部屋から、
「シルフィーヌここだ」
大地の大剣で扉を壊し、遠藤を助ける。背の低いシルフィーヌは、抱き付くだが、遠藤は、恥ずかしく、腕をほどいた。
外が騒がしくなり、ゴーレムの消失を感じた。急いで裏口から、逃げるが、軍隊に囲まれてしまう。そこに黒光りの亜空間潜水艦が割り込んできた。間髪入れず、砲撃が始まる。軍隊は、壊滅状態になり、シルフィーヌと遠藤は、潜水艦の中に誘導された。艦長室に案内され、そこにいたのは、ジェストであった。
長く語り合い、シルフィーヌは、血判し、ジェストの仲間になった。
遠藤は、時乃澄香が作った。ゲートから、日本に送ることになった。
「時乃澄香って伝説の御使いですよね」
「我は、奴とは腐れ縁でな。昔、ゲートを託された」
シルフィーヌは、ジェストに遠藤を任せ、山に籠ることにした。そこで、大地の精霊と交わり、その力を強めていった。
3
「あれが、マゴクの町だよ」
夜の街道から、町の灯りが見えてきた。隼人は、石原瑠奈の膝枕で熟睡している。
町に近づくと、花火のように光が交差している。明らかに、様子がおかしい。
風の精霊なら、遠見の術とか使えるが、大地の精霊では、できない。
更に近づくと、装甲車や戦車が町に入って行くのが見えた。シルフィーヌは、ジェストたちの隠れ家が分かり、攻撃していると判断した。
「瑠奈、瑠奈」
「どうしたのシルフィーヌ」
「マゴクの町が軍隊に襲われている。たぶん、ジェスト様をかくまっているからだと思う」
「どうすればいいの?」
「瑠奈は、隼人を守っていたらいいよ。戦いは、あたしで大丈夫!だって、みんながいる町だから」
そう言うと、ゴーレムに戦う命令を出し、突き進む、装甲車を殴り、戦車を踏みつける。軍人たちの銃撃をマジックシールドで避け、町の大通りを進む。メトシェラの特殊部隊が、シルフィーヌたちに目を付け、狙撃の準備に入っていた。その様子を、風の精霊使い、エルは見ていた。姉の危険を知り、サムエルとラキエルに支持を出す。二人は、火の精霊の力で、ファイアーアローを特殊部隊に放った。特殊部隊員は、火だるまになり、その命は尽きた。
他の特殊部隊員は、近接攻撃をするため、ワイヤーで屋根伝いを走っていた。その様子をシルフィーヌも見ていた。しかし、特殊部隊は、火だるまになった。路地から、サムエルとラキエルが出てきた。
「お姉ちゃん」
「二人ともありがとう、早く乗って」
二人は、ゴーレムの首にしがみついた。シルフィーヌよりも小さく、十二歳から十四歳と言ったとこだろう。
「お姉ちゃん。この獣人さんと男の子は?」
「二人は、日本人だよ」
「オメンライダーなんだ」
シルフィーヌたちは、町の北側にある、ジャパンの隠れ家に向かった。辺りは、軍隊に包囲され、進むのに、非常に苦労した。
「一掃するしかない。みんな下りて」
そう言うと、シルフィーヌは、ストーンゴーレムを大地に帰し、
「大地の精霊よ、我!召喚する。オリハルコンゴーレム」
赤黒い、身長二十メートルはある、ムキムキのゴーレムが現れた。シルフィーヌが指示を出すと、軍隊を蹴散らした。
サムエルとラキエルもファイアーアローを雨のように降らした。軍人たちも銃で応戦するが、マジックシールドのために、弾は届かない。すると、前から戦車の大群が現れ、ゴーレムに砲撃を始めた。その体は、削られ、徐々に力を失った。
石原瑠奈は、隼人をバリィで守っていたが、このままでは、押されると思い。
「ライトニングナイト1レギオン」
と言った。四千のライトニングナイトは、戦車を相手に手に持つ、雷の剣で戦い。全ての軍隊を沈黙させた。
隠れ家から、ジェストと天王寺、そして、シルフィーヌの弟、ハナヌヤが出てきた。みんなの無事を見て、シルフィーヌは大喜びした。
「シルフィーヌ、今日の報酬は五千リラだ!振り込んでおくからな」
ジェストは、そういうと、シルフィーヌと握手した。天王寺は、石原瑠奈を睨んでいたが、ため息を一つして、石原の肩に手を置いた。
「石原よくやった」
その後、ジェストに隼人を託し、マゴクの町から、残存軍隊を排除した。そして、二日後。
「今日は、祝宴だ。飲んで食べろ!」
ジェストは、自腹で、全ての飲食費用を出した。
石原瑠奈とシルフィーヌは、小さな酒場にいた。シルフィーヌは『あわあわ』とか言うのを飲んでいる。とても美味しそうなので、石原も飲みたかった。でもなぜか、シルフィーヌは、飲ませようとしない。
「その、あわあわ飲ませてよ」
「だめ!」
「何故?」
「それは、瑠奈が特別だから、飲んだらだめなの、どこかで学んでいないの?」
「学んでいないです」
シルフィーヌは、顔を赤らめて、
「あなたは、特別なの、酒に酔ってはいけない。理由は、時乃澄香ではない方、ライジングという御使いに聞くのね」
「ライジング?」
石原は、心当たりがなく誰か分からなかった。そして、脇腹に手を入れ、黄金色に輝くハンマーを取り出した。それを見た、シルフィーヌは、慌てて、
「早くそれをしまいなさい」
「え!わかった」
以前は黄金色に輝いていなかったが、もの凄い輝きをしたハンマーを石原は、脇腹にしまう。
「それ、誰かにもらったの?」
「はい、高遠さん」
「ふ~その方は、御使いです。間違いなく、ライジング」
「それから、それ何と思う?」
「ハンマー」
「違います。でも、あたしも、今は、それ以上言えないかな」
「えー教えてよ」
「はっきりと知らないんだよね」
そう言うとシルフィーヌは、寝てしまった。
そこに、ジェストが来て、
「石原、今回の活躍とても良かった。これは、少ないが貰ってくれ」
ジェストは、一千リラを渡した。初めての大金に、慌てたが、快く貰った。
ジェストも『あわあわ』を一杯飲むと、テーブルで寝てしまった。石原は、やっと分かった。これは、強いお酒なのだと。
石原は、初めてもらった報酬で、酒場の二階の部屋を借り、ベッドにシルフィーヌを寝かせた。ジェストをどうしようかと思って、下に降りると、姿は、なかった。不思議な人である。
次の日の朝、石原は、早くから目が覚め、町をうろついていた。綺麗な宝石店があり、ガラス越しに食い入るように見ていた。すると店の店主が、中で見ることを勧め、身近に見ることができた。この店は、普通の宝石店ではなくて、マナの宿ったものを売ってことが、分かった。エメラルドグリーンの菱型のイヤリングにひかれ、昨日の報酬で買うことにする。
酒場にもどると、シルフィーヌは、精霊に清めてもらっていた。
「ただいま。シルフィーヌ」
「いあーごめんね。寝ちゃったみたい」
「いいよ気にしないで、ところで、プレゼントがあるんだけど」
「何、何」
石原瑠奈は、イヤリングの入った箱を渡した。
「え!こんな上質なもの貰っていいの」
「お礼です」
「ありがとう、さっそく使うね」
そう言うと、シルフィーヌは鏡の前に行き、耳にイヤリングを止めた。
「これ、マナ凄い!」
そう言うと、石原瑠奈に抱き付いた。
1
シルフィーヌは、幼いころから、面倒見の良い子でした。父は、錬金術に没頭し、ホムンクルスを作ることに夢中でした。それ故、家計は、火の車、母は、シルフィーヌと三人の娘と二人の息子を育てるために、夜遅くまで、薬草の仕事をしていました。長女のシルフィーヌは、早くから薬草の知識を身に着けて、母の手伝いをしました。それでも、家計は、豊かにならず、お粥だけの日も数多く、妹たちは、お腹をすかせて、夜も寝付かない日々を送っていました。十二歳になった、シルフィーヌは、町で張り紙を見ました。
『求!精霊使い 高給優遇』
給料を見ると、ありえない金額でした。家に帰り、母に精霊使いになる方法を聞くと、
「精霊に選ばれなかったら、その精霊に食べられるのよ」
シルフィーヌは、それでも、家族のためにと毎日、森に出かけて、精霊を呼び続けました。しかし、何の応答もありませんでした。
ある日のこと、いつものように、森に出かけると、黒髪の少年が座り込んでいました。シルフィーヌは、恐る恐る近寄ると、
「まいど!」
と黒い目を向けて挨拶してきた。シルフィーヌは、怖くなり逃げようと思うと、服を掴まれ、
「君、エルフだよね。耳でわかるよ」
と言ってきたが、シルフィーヌは、
「エルフじゃなり、エロフ」
「何、そのエロそうな民族」
「ぶー」
「ごめん。ところで、ここ何処なんだい」
「ここは、マゴクの森の中」
「じゃ、なんて世界、ほらよく言うよね、昭和の世界とか」
「世界は、よく分からないけど、ここメトシェラは、プレアディスに属している惑星だよ」
シルフィーヌは、掴まれていた手をほどくと、まじまじと少年を見た。とても綺麗な顔立ちで、身なりもすごくいい、年の頃は、十七位、好きになったわけではないが、心が揺さぶられた。
「名前!名前なんて言うの?」
「遠藤真一」
「しんちゃんか」
「それ言うな」
遠藤は、容赦なく叩いた。
「うちくる?」
「いいのかい?」
「いいよ。一人増えても大して変わらないから」
シルフィーヌは、遠藤を家に連れてきたが、母は、理解できず、ドアを閉めてしまった。やむをえず、弟の部屋の窓から家に入る。遠藤は、弟たちに挨拶し、バッグの中から、人型の人形を出して見せた。弟たちが食いつくかと思ったが、シルフィーヌが食いつき、
「何それ、呪いに使うあれ?違うの」
「これは、オメンライダーと言うんだ」
「ほほぅ。触ってもいい?」
「どうぞ」
シルフィーヌは、隅から隅まで、人形を眺めた。とても楽しい時であったが、外が騒がしくなってきた。窓から覗くと、貴族の軍人が二十人程来ている。部屋に母が来たと思ったら、軍人たちも来て、遠藤を拘束し連れて行った。シルフィーヌは、人形を握りながら、叫び続けた。
「遠藤!遠藤を返して!」
シルフィーヌは、夜まで泣き続け、食事もしなかった。そして、暗い夜道を森に入り、大地にうつ伏せになり、
「大地の精霊よ、あたしに力を与えたまえ」
しかし、呼びかけに答えたのは、精霊ではなく、妖獣であった。鋭い牙をむき出しに、襲いかかろうとしている。しかし、その間に割って入った人影があった。後姿から、エロフだと分かる。
「アースアロー」
妖獣は、瞬殺された。助けてくれた。エロフは、振り向き、
「大丈夫だった御嬢さん」
「ありがとう」
「わたくしは、大地の精霊使い、フィフィル。あなたは?」
「あたしは、シルフィーヌ、人を助けたいのだから、精霊使いになりたいの!直ぐに」
フィフィルは、優しく、シルフィーヌを起こし、頭を撫で、
「あなた、ほんと、わたくしの幼いころみたいね。もう千年も前だけど、いいわ試練に打ち勝ったら、大地の精霊と契約させてあげる」
シルフィーヌは、嬉しくなり、涙を流した。
「試練はね。受けるのはいいけど、失敗したら、あなたの命をさしだしなさい。わかりましたか?」
「はい。覚悟できています」
フィフィルは、目を細めて、
「試練は、あなたの母親の首を持ってくること」
シルフィーヌは、顔から血の気が失せるのを感じた。確かに母のしたことは、憎い、たぶんお金のために、遠藤を売ったのだろう。でも、愛する母を殺すことはできないと嘆いた。
「精霊使いを甘く見ない方がいいわよ。魔女とそんなに変わりない」
フィフィルは、鋭い眼差しで、シルフィーヌを見た。
シルフィーヌは、挨拶もしないで、森を後にした。自分が憧れていた、精霊使いがこれほど、残酷で愛がないと知り、涙が流れた。
家に帰ると、母と目があった。シルフィーヌは、涙を流し始めた。
「あの日本人の子のことかい。もう忘れるんだよ。悪魔のような黒い髪、闇の魔法にとりつかれているような黒い瞳。怖い怖い」
シルフィーヌは、妹たちのいる自分の部屋に入った。悲しくて、まだ、涙を流している。妹たちは、ハンカチを持ってきて、涙を拭いてあげた。その優しさが、また、涙をそそり、妹たちの手をとり、泣いてしまった。なぜか、妹たちも泣きだし、収拾がつかなくなってきた。
夜になり、シルフィーヌは、包丁を取り、母の寝込みを襲おうとしたが、母の顔を見ると、涙が溢れて、何もしないで、森に入っていった。
フィフィルは、シルフィーヌを見つけ、
「シルフィーヌ首は?」
「ないです」
「しかたないね。約束通り、あなたが死ぬのよ」
そう言うと、シルフィーヌは、植物でバインドされ、動けなくなった。フィフィルは、アースアローを打ち込んだ。瞬間、マジックシールドが張られた。
「誰?」
フィフィルは、辺りを見渡した。そこに、光に包まれた四枚羽の精霊が現れた。
「フィフィルあなたのことは、何千年と見てきました。人格、品性、愛、どれもあなたからは、感じられなかった。精霊の力が使えることにより、傲慢になり、不品行のかぎりをつくし汚れた俗物となり、もはや、あなたを生かしておくことはできません」
フィフィルは、攻撃しようとしたが、大地の精霊の能力は、何も使えなかった。そして、精霊から出された、大地の大剣で刺し通され、息絶えた。
シルフィーヌは、怖くなり、後ずさった。精霊は、そんなシルフィーヌにお構いなく、近づき、
「私は、大地の大精霊、ノア」
そう言うと、シルフィーヌの体に、読むことのできない文字を書き刻んだ。
その後、シルフィーヌは、意識を失い、一週間、森の大地に倒れていた。夢の中で、精霊の使い方を学び、その力は、メトシェラでもトップクラス。
一週間も時がたったのに、服に汚れもなく、臭くもない。家に帰り、母に抱き着き、殺そうとしたことを悔いた。
シルフィーヌは、簡単に、荷物をまとめ、母にしばらく家を空けることを願った。母は、快く申し出を受け入れた。
2
シルフィーヌは、貴族の館へ行くと、精霊を使って、探索させた。結果、三軒目の館に、遠藤がいることが、分かった。夜になり静まった頃に、ストーンゴーレムを召喚し、門を壊し中へ入った。軍人たちが出てきたが、ゴーレムを次々出し。攻撃した。人の体力は、そんなにもつものではないので、軍人たちは、疲れ果ててしまった。シルフィーヌは、ゴーレムに軍人たちを見張らせ、遠藤のもとに急ぐ、
「遠藤!遠藤!どこ」
シルフィーヌは、叫ぶ。すると、奥の部屋から、
「シルフィーヌここだ」
大地の大剣で扉を壊し、遠藤を助ける。背の低いシルフィーヌは、抱き付くだが、遠藤は、恥ずかしく、腕をほどいた。
外が騒がしくなり、ゴーレムの消失を感じた。急いで裏口から、逃げるが、軍隊に囲まれてしまう。そこに黒光りの亜空間潜水艦が割り込んできた。間髪入れず、砲撃が始まる。軍隊は、壊滅状態になり、シルフィーヌと遠藤は、潜水艦の中に誘導された。艦長室に案内され、そこにいたのは、ジェストであった。
長く語り合い、シルフィーヌは、血判し、ジェストの仲間になった。
遠藤は、時乃澄香が作った。ゲートから、日本に送ることになった。
「時乃澄香って伝説の御使いですよね」
「我は、奴とは腐れ縁でな。昔、ゲートを託された」
シルフィーヌは、ジェストに遠藤を任せ、山に籠ることにした。そこで、大地の精霊と交わり、その力を強めていった。
3
「あれが、マゴクの町だよ」
夜の街道から、町の灯りが見えてきた。隼人は、石原瑠奈の膝枕で熟睡している。
町に近づくと、花火のように光が交差している。明らかに、様子がおかしい。
風の精霊なら、遠見の術とか使えるが、大地の精霊では、できない。
更に近づくと、装甲車や戦車が町に入って行くのが見えた。シルフィーヌは、ジェストたちの隠れ家が分かり、攻撃していると判断した。
「瑠奈、瑠奈」
「どうしたのシルフィーヌ」
「マゴクの町が軍隊に襲われている。たぶん、ジェスト様をかくまっているからだと思う」
「どうすればいいの?」
「瑠奈は、隼人を守っていたらいいよ。戦いは、あたしで大丈夫!だって、みんながいる町だから」
そう言うと、ゴーレムに戦う命令を出し、突き進む、装甲車を殴り、戦車を踏みつける。軍人たちの銃撃をマジックシールドで避け、町の大通りを進む。メトシェラの特殊部隊が、シルフィーヌたちに目を付け、狙撃の準備に入っていた。その様子を、風の精霊使い、エルは見ていた。姉の危険を知り、サムエルとラキエルに支持を出す。二人は、火の精霊の力で、ファイアーアローを特殊部隊に放った。特殊部隊員は、火だるまになり、その命は尽きた。
他の特殊部隊員は、近接攻撃をするため、ワイヤーで屋根伝いを走っていた。その様子をシルフィーヌも見ていた。しかし、特殊部隊は、火だるまになった。路地から、サムエルとラキエルが出てきた。
「お姉ちゃん」
「二人ともありがとう、早く乗って」
二人は、ゴーレムの首にしがみついた。シルフィーヌよりも小さく、十二歳から十四歳と言ったとこだろう。
「お姉ちゃん。この獣人さんと男の子は?」
「二人は、日本人だよ」
「オメンライダーなんだ」
シルフィーヌたちは、町の北側にある、ジャパンの隠れ家に向かった。辺りは、軍隊に包囲され、進むのに、非常に苦労した。
「一掃するしかない。みんな下りて」
そう言うと、シルフィーヌは、ストーンゴーレムを大地に帰し、
「大地の精霊よ、我!召喚する。オリハルコンゴーレム」
赤黒い、身長二十メートルはある、ムキムキのゴーレムが現れた。シルフィーヌが指示を出すと、軍隊を蹴散らした。
サムエルとラキエルもファイアーアローを雨のように降らした。軍人たちも銃で応戦するが、マジックシールドのために、弾は届かない。すると、前から戦車の大群が現れ、ゴーレムに砲撃を始めた。その体は、削られ、徐々に力を失った。
石原瑠奈は、隼人をバリィで守っていたが、このままでは、押されると思い。
「ライトニングナイト1レギオン」
と言った。四千のライトニングナイトは、戦車を相手に手に持つ、雷の剣で戦い。全ての軍隊を沈黙させた。
隠れ家から、ジェストと天王寺、そして、シルフィーヌの弟、ハナヌヤが出てきた。みんなの無事を見て、シルフィーヌは大喜びした。
「シルフィーヌ、今日の報酬は五千リラだ!振り込んでおくからな」
ジェストは、そういうと、シルフィーヌと握手した。天王寺は、石原瑠奈を睨んでいたが、ため息を一つして、石原の肩に手を置いた。
「石原よくやった」
その後、ジェストに隼人を託し、マゴクの町から、残存軍隊を排除した。そして、二日後。
「今日は、祝宴だ。飲んで食べろ!」
ジェストは、自腹で、全ての飲食費用を出した。
石原瑠奈とシルフィーヌは、小さな酒場にいた。シルフィーヌは『あわあわ』とか言うのを飲んでいる。とても美味しそうなので、石原も飲みたかった。でもなぜか、シルフィーヌは、飲ませようとしない。
「その、あわあわ飲ませてよ」
「だめ!」
「何故?」
「それは、瑠奈が特別だから、飲んだらだめなの、どこかで学んでいないの?」
「学んでいないです」
シルフィーヌは、顔を赤らめて、
「あなたは、特別なの、酒に酔ってはいけない。理由は、時乃澄香ではない方、ライジングという御使いに聞くのね」
「ライジング?」
石原は、心当たりがなく誰か分からなかった。そして、脇腹に手を入れ、黄金色に輝くハンマーを取り出した。それを見た、シルフィーヌは、慌てて、
「早くそれをしまいなさい」
「え!わかった」
以前は黄金色に輝いていなかったが、もの凄い輝きをしたハンマーを石原は、脇腹にしまう。
「それ、誰かにもらったの?」
「はい、高遠さん」
「ふ~その方は、御使いです。間違いなく、ライジング」
「それから、それ何と思う?」
「ハンマー」
「違います。でも、あたしも、今は、それ以上言えないかな」
「えー教えてよ」
「はっきりと知らないんだよね」
そう言うとシルフィーヌは、寝てしまった。
そこに、ジェストが来て、
「石原、今回の活躍とても良かった。これは、少ないが貰ってくれ」
ジェストは、一千リラを渡した。初めての大金に、慌てたが、快く貰った。
ジェストも『あわあわ』を一杯飲むと、テーブルで寝てしまった。石原は、やっと分かった。これは、強いお酒なのだと。
石原は、初めてもらった報酬で、酒場の二階の部屋を借り、ベッドにシルフィーヌを寝かせた。ジェストをどうしようかと思って、下に降りると、姿は、なかった。不思議な人である。
次の日の朝、石原は、早くから目が覚め、町をうろついていた。綺麗な宝石店があり、ガラス越しに食い入るように見ていた。すると店の店主が、中で見ることを勧め、身近に見ることができた。この店は、普通の宝石店ではなくて、マナの宿ったものを売ってことが、分かった。エメラルドグリーンの菱型のイヤリングにひかれ、昨日の報酬で買うことにする。
酒場にもどると、シルフィーヌは、精霊に清めてもらっていた。
「ただいま。シルフィーヌ」
「いあーごめんね。寝ちゃったみたい」
「いいよ気にしないで、ところで、プレゼントがあるんだけど」
「何、何」
石原瑠奈は、イヤリングの入った箱を渡した。
「え!こんな上質なもの貰っていいの」
「お礼です」
「ありがとう、さっそく使うね」
そう言うと、シルフィーヌは鏡の前に行き、耳にイヤリングを止めた。
「これ、マナ凄い!」
そう言うと、石原瑠奈に抱き付いた。
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自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
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マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
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この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
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