上 下
20 / 35

誘い 7

しおりを挟む
       7

 体育祭!花火の音と共に開始された。空は、快晴。日差しが強く、かなり暑く感じられる。
 一年二組の長原先生は、優勝すれば、A定食とジュースを奢る約束をした。
 時乃は、真鋳色の髪をツインテールに縛り、準備運動をしていた。別に、A定食やジュースが欲しいわけではない。思い浮かんだのは、クラスの皆が喜ぶ姿である。
『プログラム一番、男子百メートル走です』
 石原は、時乃に。
「次ですね。がんばってください」
 と笑顔で応援した。
『プログラム二番、女子百メートル走です』
 時乃は、順番を待っていた。そして。
「位置について、用意」
 火薬鉄砲の音が響く。時乃は、その音にあわせて好スタートをきり、一位でゴールした。
 時乃的には、力を出し尽くしたわけではないが、クラスの皆が、喜いるのを見て取れる。そこに何かとても、良い思いを感じた。
 午前の種目も終わり、昼の休憩時間になった。
 時乃、石原、錦野の三人は、中庭のパラソル付のテーブルに腰を掛け、弁当を広げた。
 時乃は、メルティに弁当を作ってもらったので、豪華であった。
「澄香のお弁当すごーい。自分で作ったの?」
 時乃は、弁当を食べながら。
「いや。わたしは、作れない」
「料理苦手?」
「いや。作る機会がないだけと思いたい」
 石原は、嬉しそうに時乃を見て。
「料理勉強するといいよ。とくにハンバーグ」
「そうなのか?」
「そうですよ」石原は、兄のことを思って勧めたのである。

 体育祭の競技も残すところ、男女混合リレーのみであった。一年二組は、総合二位であった。クラスのボルテージも上ってきていた。
 時乃の後に転校してきた高遠がいた。彼女は自分の席を立ち、移動しながら視線を時乃に合わせていた。クラスでも大人しく目立たない子である。そして、人ごみの中に消えていった。
『続きまして、最終種目、男女混合リレーです』
 そして、火薬銃の音と共に、競技は、始まった。
 時乃は、アンカーなので、黄色の襷を掛ける。現在一年二組は、4位を走っている。そして、バトンは、四番目の男子生徒に、次は、時乃の番である。
 時乃は、右手を後ろにし、助走しながら、バトンを受け取る。一気に加速する。真鋳色の髪が、後方に流れ、太陽の光で、美しく輝く。三番目を抜き、二番目に追いつき、更に加速しようとした瞬間!時乃は、高エネルギー反応を感じた。でもそれは、遅かった。自分にレーザーが、向かっていた。瞬間思考する(空間転移はできない。よければ隣の生徒は、即死であろう)時乃は、隣の生徒に当たらないように、自分にタイミングを合わせた。いかに時乃澄香といえども、無防備で、レーザーの直撃を受けたら致命傷は、まぬがれないであろう。
 瞬間『バリィ』時乃とレーザーの間に、シールドが形成される。
 レーザーは、熱エネルギーを吸収され、シールドに包み込まれる形で、時乃に命中する。
 時乃は、横を走っている男子生徒を巻き込みながら、二十メートル程飛ばされ、横向きに倒れる。男子生徒は、意識がないが、怪我は酷くないようである。
 学園内は。静まりかえっていた。ダイヤルを回し周波数が丁度よくなったラジオのように、急に大きなざわめきが起こった。
 教師達が一斉に出てきた。担架を持った保険委員も走ってきた。
 時乃は、手をついて体を起こした。砂ほこりが舞う運動場を一通り見たが、何も感じられなかった。敵は、何処なのか、何者なのか。

 警察が、列をなして、学園に入ってきた。地元在住のマスコミも来ていた。
 警察は、素早く黄色のテープを張り。生徒を移動させた。
 時乃と男子生徒は、救急車で運ばれた。もっとも、時乃は乗ることを拒んだのだが、石原や錦野が、心配していたので、気を使って乗ったのである。病院へ着くと、男子生徒は、ストレッチャーで運ばれていった。時乃は、病院の中へ誘導された。診察を受けた後、警察から質問を受けていた。時乃の体操服は、丸く焦げ付き、中心付近は、穴が開いていた。
 警察が行ったり来たり、慌ただしく動いている。
 その中に真鋳色の髪をポニーテールにしている少女が、自分の方へ来るのが見えた。薄茶色の瞳を時乃に向けながら、冷静に近づいてくる。
「澄香!学校から連絡があって驚いたぞ」
「フラット気をつけろ、誰に撃たれたかわからない」
「わかった。ここは、上手く切り抜けてくれ、後で対策を練ろう」
「ふっ」
 フラットは、真鋳色の髪を揺らしながら、人ごみの中に入っていった。
 時乃は、周りが敵に囲まれている感じがして、苛立ちを覚えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】異世界アイドル事務所〜アナタの才能、発掘します!〜

成瀬リヅ
ファンタジー
「願わくば、来世で彼女をトップアイドルに……」  そう思いながら死んだアイドルプロデューサーの俺・小野神太は、気付けば担当アイドルと共に多種族の住む異世界へ転生していた!  どうやら転生を担当した者によれば、異世界で”トップアイドルになれるだけの価値”を示すことができれば生き返らせてくれるらしい。  加えて”アイドル能力鑑定チート”なるものも手に入れていた俺は、出会う女性がアイドルに向いているかどうかもスグに分かる!なら異世界で優秀なアイドルでも集めて、大手異世界アイドル事務所でも作って成り上がるか! ———————— ・第1章(7万字弱程度)まで更新します。それ以降は未定です。 ・3/24〜HOT男性向けランキング30位以内ランクイン、ありがとうございます!

異世界に転移したけどマジに言葉が通じずに詰んだので、山に籠ってたら知らんうちに山の神にされてた。

ラディ
ファンタジー
 日本国内から国際線の旅客機に乗り込みたった数時間の空の旅で、言語はまるで変わってしまう。  たった数百や数千キロメートルの距離ですら、文法どころか文化も全く違ったりする。  ならば、こことは異なる世界ならどれだけ違うのか。  文法や文化、生態系すらも異なるその世界で意志を伝える為に言語を用いることは。  容易ではない。 ■感想コメントなどはお気軽にどうぞ! ■お気に入り登録もお願いします! ■この他にもショート作品や長編作品を別で執筆中です。よろしければ登録コンテンツから是非に。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

My First Magic

五十鈴 葉
ファンタジー
 かつての魔王は、人間と共に平和な世界を作りたいと願った。そのために、自分の分身とも言える"龍"を神として仕立て上げ、人間の輪の中へとねじ込んだ。  そして、人魔共生平和条約を結んだ魔物達は、人間と生活を共にすることが出来たのだ。    それから115年の時が経ち、舞台は現代とさして変わらない日本へ────    その時、音楽好きの魔人「アーラ」は中学3年生という年になっていた。嘘つき・マイペース・悪戯好きという三拍子揃えたアーラは、変わらない日常をすごしながら、ふと思い出した不思議な記憶の正体を探し続けていた。    そんな中偶然出会ったのが、とある1匹の龍。    その龍が望むのは、かつての魔王が目指した本当の意味での人間と手を取り合って生きる世界。そして、歪に曲がってしまった現状をどうにかしようと仲間を集めていた。    これは、理想を追い続ける者達が願いを叶える物語である。    ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にて同時掲載させていただく予定です。  誤字脱字報告、評価等よろしくお願いいたします。

処理中です...