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時乃の学園生活も一か月が過ぎた。車椅子の事故以来、石原、錦野とも仲良くなった。
そんなある日、転校生が来た。
「今朝は、みなさんに転校生を紹介します」
長原先生は、黒板にさらりと、高遠美鈴と書いた。
「高遠美鈴と言います。よろしくお願い申し上げます」
「丁寧な挨拶ありがとう。席は、向かって左から二列目。鈴木君の隣ね」
「わかりました」
身長百五十センチ位の小柄で、黒髪にショートカットの感じの良い子である。
続けて、長原先生は。
「もうすぐ体育祭です。去年のわたしのクラスは五位でした。いわゆる、ワーストワン。今年は三位以内に入りたいです。みなさんがんばりましょう」
石原は、時乃に。
「澄香は、運動得意だからがんばってね。私は、玉入れくらいしかできないから、それも下手くそで、笑えます」
「わたしなんて、たいしたことはない。何時もの計測機械の故障だよ」
「あらあらご謙遜を」
転校生、高遠は、ちらりと時乃を黒い瞳で見た。口には軽く微笑を浮かべていた。
授業が終わると、転校生高遠の周りに興味のある生徒が集まっていた。時乃は、さして興味ももたず、石原とおしゃべりをしていた。
「昨日、ゲームしてみたの、そしたらね。チュートリアルで、泳ぎ方が解らなくて、水死したの。だからそこでログアウト」
時乃は、右手の人差し指を上に向けて。
「泳ぐときは、最初は顔を出すといいんだ。そして慣れてきたら、潜ってみるといい」
「なるほど!今日やってみるね」
クラスの生徒も色々な話で盛り上がっている。東京の銃撃事件や宇宙人のこと。また、最近、謎の行方不明事件、男女問わず頻繁に起こっている。
また、ふざけた男子生徒は、
「最近、転校生多いだろ。そのうち、普通の人間には興味ない。宇宙人、異世界人、超能力者は、私の所にきなさい!とか言う奴出てきたりしてな」
「ははは」
「笑っちまうぜ、まるこ」
などと、賑やかことである。時乃は、なにげに耳を傾けて聞いていた。平和という言葉を少し頭に浮かべた。自分にも、もしかしたら、こんな平和な生活が、未来的にもできるのではないかと。
時乃、石原、錦野は、昼の休憩を中庭で過ごそうと、スロープを下りていた。
錦野が突然、小さく悲鳴をあげてスカートを押さえている。車椅子から手を放したので、惰性で動き出した。時乃は、素早く車椅子を止めた。
針金を持った男子生徒が逃げていくのが見えた。時乃は車椅子を平らな所に固定すると、上の階に走り出した。
時乃の速度は、上昇し、男子生徒に迫りつつあった。逃げているのは、二人組のようである。
男子生徒は、更に上の階に逃げる。屋上に出る扉を開け逃げ込み、背中で扉を押さえつけた。
時乃は、右足で扉を蹴り飛ばす。扉は勢いよく開き、男子生徒は前のめりに手をついた。
「何か用か。転校生」
時乃は、特別話すでもなく、右の男子生徒に蹴りを入れた。
「この野郎」
「野郎とは、言いえて妙な言葉だな」
時乃は、苦笑交じりに、言葉を放った。
屋上の隅にたむろしていた不良グループまで、集まってきた。
「おい!どうした!」
「中野さん。こいつ生意気なんです」
中野と呼ばれた男は、時乃に詰め寄り。
「お前確か、転校生だったな。生意気な奴には秩序を教えないとな」
「何が秩序だ、こいつらが先にスカートめくりをしてきたのだ」
「関係ない!女はおとなしく黙っていろ」
中野は、そう言うと時乃に唾を吐いた。
時乃はひらりとよける。中野は、顎鬚を触りながら、時乃に詰め寄る。すると右手で殴りかかった。
時乃は、涼しい顔でかわし、中野の腹に膝蹴りを入れ、屈んだ所に、左アッパーを入れた。中野の体は、後方に飛び地面に叩きつけられた。目は白目を向き、口から白い歯が二本と血の塊が同時に出てきた。
他の男子生徒は、時乃が美しい茶色の瞳で睨むと、後ずさりした。
そこに、錦野と教師達が来た。中野の姿を見て、皆、唖然とした。一人の男性教師が、中野の容態を見て、他の教師に救急車の手配をさせた。
時乃は、両手を押さえられ、生活指導室に連れて行かれた。錦野は、教師に必死に説明をしていた。
時乃は、椅子に座らされ、教師からくどくど説教を聞かされていた。理事長も入って来て、教師達と相談し、時乃に自宅謹慎を言い渡した。
さらに理事長は。
「後で連絡しますが、停学一週間は覚悟しておきなさい」
教師から鞄を渡され、家に帰ることとなった。
真鍮色の髪が、太陽の光を受け、美しく輝く。透き通る白い肌、制服とのコントラストが美しい。
時乃澄香は、心の中でつぶやいていた。何が平和だと。
時乃の学園生活も一か月が過ぎた。車椅子の事故以来、石原、錦野とも仲良くなった。
そんなある日、転校生が来た。
「今朝は、みなさんに転校生を紹介します」
長原先生は、黒板にさらりと、高遠美鈴と書いた。
「高遠美鈴と言います。よろしくお願い申し上げます」
「丁寧な挨拶ありがとう。席は、向かって左から二列目。鈴木君の隣ね」
「わかりました」
身長百五十センチ位の小柄で、黒髪にショートカットの感じの良い子である。
続けて、長原先生は。
「もうすぐ体育祭です。去年のわたしのクラスは五位でした。いわゆる、ワーストワン。今年は三位以内に入りたいです。みなさんがんばりましょう」
石原は、時乃に。
「澄香は、運動得意だからがんばってね。私は、玉入れくらいしかできないから、それも下手くそで、笑えます」
「わたしなんて、たいしたことはない。何時もの計測機械の故障だよ」
「あらあらご謙遜を」
転校生、高遠は、ちらりと時乃を黒い瞳で見た。口には軽く微笑を浮かべていた。
授業が終わると、転校生高遠の周りに興味のある生徒が集まっていた。時乃は、さして興味ももたず、石原とおしゃべりをしていた。
「昨日、ゲームしてみたの、そしたらね。チュートリアルで、泳ぎ方が解らなくて、水死したの。だからそこでログアウト」
時乃は、右手の人差し指を上に向けて。
「泳ぐときは、最初は顔を出すといいんだ。そして慣れてきたら、潜ってみるといい」
「なるほど!今日やってみるね」
クラスの生徒も色々な話で盛り上がっている。東京の銃撃事件や宇宙人のこと。また、最近、謎の行方不明事件、男女問わず頻繁に起こっている。
また、ふざけた男子生徒は、
「最近、転校生多いだろ。そのうち、普通の人間には興味ない。宇宙人、異世界人、超能力者は、私の所にきなさい!とか言う奴出てきたりしてな」
「ははは」
「笑っちまうぜ、まるこ」
などと、賑やかことである。時乃は、なにげに耳を傾けて聞いていた。平和という言葉を少し頭に浮かべた。自分にも、もしかしたら、こんな平和な生活が、未来的にもできるのではないかと。
時乃、石原、錦野は、昼の休憩を中庭で過ごそうと、スロープを下りていた。
錦野が突然、小さく悲鳴をあげてスカートを押さえている。車椅子から手を放したので、惰性で動き出した。時乃は、素早く車椅子を止めた。
針金を持った男子生徒が逃げていくのが見えた。時乃は車椅子を平らな所に固定すると、上の階に走り出した。
時乃の速度は、上昇し、男子生徒に迫りつつあった。逃げているのは、二人組のようである。
男子生徒は、更に上の階に逃げる。屋上に出る扉を開け逃げ込み、背中で扉を押さえつけた。
時乃は、右足で扉を蹴り飛ばす。扉は勢いよく開き、男子生徒は前のめりに手をついた。
「何か用か。転校生」
時乃は、特別話すでもなく、右の男子生徒に蹴りを入れた。
「この野郎」
「野郎とは、言いえて妙な言葉だな」
時乃は、苦笑交じりに、言葉を放った。
屋上の隅にたむろしていた不良グループまで、集まってきた。
「おい!どうした!」
「中野さん。こいつ生意気なんです」
中野と呼ばれた男は、時乃に詰め寄り。
「お前確か、転校生だったな。生意気な奴には秩序を教えないとな」
「何が秩序だ、こいつらが先にスカートめくりをしてきたのだ」
「関係ない!女はおとなしく黙っていろ」
中野は、そう言うと時乃に唾を吐いた。
時乃はひらりとよける。中野は、顎鬚を触りながら、時乃に詰め寄る。すると右手で殴りかかった。
時乃は、涼しい顔でかわし、中野の腹に膝蹴りを入れ、屈んだ所に、左アッパーを入れた。中野の体は、後方に飛び地面に叩きつけられた。目は白目を向き、口から白い歯が二本と血の塊が同時に出てきた。
他の男子生徒は、時乃が美しい茶色の瞳で睨むと、後ずさりした。
そこに、錦野と教師達が来た。中野の姿を見て、皆、唖然とした。一人の男性教師が、中野の容態を見て、他の教師に救急車の手配をさせた。
時乃は、両手を押さえられ、生活指導室に連れて行かれた。錦野は、教師に必死に説明をしていた。
時乃は、椅子に座らされ、教師からくどくど説教を聞かされていた。理事長も入って来て、教師達と相談し、時乃に自宅謹慎を言い渡した。
さらに理事長は。
「後で連絡しますが、停学一週間は覚悟しておきなさい」
教師から鞄を渡され、家に帰ることとなった。
真鍮色の髪が、太陽の光を受け、美しく輝く。透き通る白い肌、制服とのコントラストが美しい。
時乃澄香は、心の中でつぶやいていた。何が平和だと。
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