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第一章 黒の少年

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 昭和98年5月××日

空はカンバスに 絵具えのぐをぶちまけたかの様に、果てしなく突き抜けるような青が広がっていた。
旅立つ者には祝福を、留まるものには安らぎを。

 ジリジリと容赦ない日差しが皮膚を焼き付け、流れる雲の一つ一つは自由を謳歌し、終わりの無い旅路を風と運命に任せるがごとく、ゆっくりと彼方へ流れていく。

 しかし視線を落とせば地上は辺り一面地獄絵図、ありとあらゆる建造物が破壊され、土埃が舞い、肉と髪の毛の焼け焦げる臭いが眼前の世界を覆い尽くしている。

 長い年月の内戦状態に更に宗教テロが加わり、国土の十三%が荒野という原油産出国ザラバジャナは疲弊しきっていた。
 多数の少数部族で共和制をとる国家であったが、諸外国との交友の中で部族間での価値観の違い、そして主力産業である原油輸出による利益の各部族への分配利益に一部の部族が不平等と異議を申し立て、それがエスカレートして武力抗争となり、悲惨な内戦状態となった。

 当然ながら真っ先に被害を受けるのは、なんの抵抗手段も持たない一般市民だ。次々と被害が拡大していった。瞬く間に市民への、特に女子供への虐殺が繰り広げられていった。

 事態を重く見た国際社会は、これ以上無力な市民に被害が及ばないよう、多国籍間による一般市民への避難誘導と防護、そして人道支援を目的とした連合軍を派遣した。
 
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