ドレス愛が止まりませんっ!〜ドレス大好き令嬢のデザイナー生活〜

浦藤はるか

文字の大きさ
上 下
15 / 22
本編

#14 仲介人?

しおりを挟む
「そうなんですよ~! あっお嬢様は歴史が得意ですよね」

「え、えぇ。まぁ好きではあるわね」

「そうなんすか!ウィン様も同じです、ね! 」

「あぁ、まあそうだな」

「いやぁ、ちょっと聞いてくださいよ。ウィン様この前なんてねテストで・・・・・・」


あの騒動(先輩事件)から一杯紅茶が無くなる程度の時間がたった。今は得意教科の話で盛り上がっている。特にっていうかサリーとカインさんの2人が。私とウィンは口を出すだけ。えぇそれはもうなんやかんやあったのだ。

私がウィンと話そうとしてもやっぱりまともな会話が続かない。先輩事件のこともあって真っ赤な顔してアワアワするだけ。何から話せばいいものか、慣れてなさすぎてひとつも思いつかない。見かねたサリーが話の輪に入ってくると、カインさんも入ってきた。そうしていつの間にか話の主導権はこの二人に握られていた。とてもスムーズな司会進行具合で、程よく話を振ってくれるから楽しくいられる。だいぶこの場にも慣れてきたことだし、お話しするってとっても楽しいわ!


「そうそう、お嬢様渡したいものがあるんですよね。今のうちに渡しておきましょうよ。どこにあるんです? 」


まぁこのタイミング!? 急にサリーが爆弾を打ち込んできた。ようやくリラックスしてきたとこなのにまた逆戻り。まだまだ心の準備が追いついてないです、サリーさん。

昨夜サリーに 「ほんとにこれ渡して大丈夫ですか? 引かれません? これ。今なら間に合います、やめておいたらどうですか」 ってめちゃくちゃ反対されたときは絶ッ対大丈夫だって......喜んでくれるって自信があったのに。今更恥ずかしくなってきた。はぁ。でも渡すしか・・・・・・。相手方はじっとこちらを見ていて無かったことには出来そうにない。軽く息を吸って、カバンから意を決して取り出す。紙袋に入った渡したいものは計27枚のドレスレポート仮面舞踏会版だ。


「これ、なんですけど。別に大したものじゃないと言いますか・・・・・・。独自にまとめたドレスレポートです。よければ読んでいただけたらなぁと」

「これは今、少し読ませてもらっても? 」

「ぜひ! 読んでもらえたら嬉しいです」


軽く頷いた彼は読み始めた。
無事にわ、渡せたわ。どうかな? これまでサリー以外に見せたことないから評価が気になる。今私の心の中では緊張感とわくわくとした感情が入り乱れている。サリーの話も右から左へと流れていくし。どうしてしまったのかしら。こんな気持ち、入学テストぶりだわ。ぎゅっと手に力が入ってしまう。目の前に座る彼を静かに見守ってしまう。心地よいパラパラと紙をめくる音。どうかな、どうかな。ちゃんとまとめたものだから内容は自信あるけど・・・・・・。少しとは言ったものの、ウィン読むの速いなぁ。


☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆


あっ、そろそろ帰らなきゃダメかも。
気付けば外から入る光はオレンジ色で。室内もほわほわとした雰囲気になっている。窓からは赤く染まりゆく空が見えている。綺麗ね。こんなグラデーションのドレスいいかもしれない。茜色を中心にこの空をドレスにうつすの。その上には、長い滑らかな生地にふんわりとしたレースをのせて。微妙なグラデーションを表現しちゃって。丁寧に編み込まれた白いショールなんかを羽織ったりしちゃって! デ、デザイン帳はどこ? 今すぐ書き留めないと。脳内のイメージが逃げてしまう。空は思っているよりも早く西へと動いていくのだから。あぁこのプリントの裏でいいわ。はやくはやく急がなきゃ。サラサラと会話そっちのけで書き始めるとアイデアが止まらない。この勢いのまま『天の空シリーズ』とか考えてみようかしら。朝日とかもいいのでは!? 明日は早起きしてみようっと。


「お嬢様! 戻ってきてください。ウィン様があの長ったらしいレポートを読み終わったそうですよ」

「え、あ、え。わっすみません。どうでしたか? 」


夢中になりすぎた。まぁよくある事だ。手元のプリントは優しく折りたたむ。あ~感想聞くの緊張する。聞くのが少し怖くなってきた。


「とても良かったよ。最近の流行りの考察なんか特に。いくつか気になることがあった。もう一度じっくり読みなおしたいから、これ持って帰ってもいいか? 」

「ありがとうございます! それはお好きにどうぞ。あげたものですので」

「じゃ遠慮なくいただくよ。ありがとう、リリー。今度俺も染料の資料とか用意してもいいだろうか」

「!!! 私、染料の資料見てみたいです。この前お話をした時から気になっていて、最近勉強し始めているんです。よろしければぜひ! 」

「あぁ持ってこよう、約束する。じゃあ来週またここで」

「はい、また」


挨拶を交わしながら部屋を出た。後ろでしっかり扉が閉まったのを確認してから話し出す。


「ね、ねぇサリー! ウィンと」

「お嬢様言いたいことは分かりますから、その先は家に帰ってからで。馬車では宿題を終わらせないと」

「そうね、ほんとだわ」


ローズマリーに怪しまれないよう宿題をやっていたことにするのだった。忘れてた。でもこの今日出た宿題ぐらいならすぐに出来そう。

ガタンゴトンと揺れる馬車の中で宿題をしながら考える。今日ウィンと会えてよかった。また会う約束までしちゃったし。次こそ私からお話し出来るように頑張ろう。正真正銘のドレ友になれるかしら。もう来週が待ち遠しい。輝く未来しか考えられなくて心が満たされていく。



その夜。

「サリー、今日はお泊まり会しましょう。話し足りなさすぎてこのままだと寝られないわ」

「お嬢様。急に言われても・・・・・・。べつに一人で寝られるでしょ? 話すのは明日でもいいじゃない」

「ダメ!ダメなのよ、今日じゃないと。ねぇお願いったら」

「寝ましょう。おやすみなさい」

「えーっ待ってよ。だってだって」

「お嬢様。御屋敷に帰ってきてからもう何時間も話しましたよね。私飽きるほど聞きましたよ。お嬢様、わかってますよね」

「はい」

「では、おやすみなさい」


引き止める間も無くササッと出ていっちゃった。話し足りないのになぁ。次は何を持っていこうか、私がもっと話し上手になるためにどうするべきか、サリーから見た私の今日の点数は、とか議題は沢山あるのよ。なのに、なのに! 冷たいよ。サリーーー! 

今夜は本当に眠れそうにない。月光に照らされながらぼんやりと今日一日を振り返るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】円満婚約解消

里音
恋愛
「気になる人ができた。このまま婚約を続けるのは君にも彼女にも失礼だ。だから婚約を解消したい。 まず、君に話をしてから両家の親達に話そうと思う」 「はい。きちんとお話ししてくださってありがとうございます。 両家へは貴方からお話しくださいませ。私は決定に従います」 第二王子のロベルトとその婚約者ソフィーリアの婚約解消と解消後の話。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 主人公の女性目線はほぼなく周囲の話だけです。番外編も本当に必要だったのか今でも悩んでます。 コメントなど返事は出来ないかもしれませんが、全て読ませていただきます。

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、142話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(11/21更新)

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

最愛の亡き母に父そっくりな子息と婚約させられ、実は嫌われていたのかも知れないと思うだけで気が変になりそうです

珠宮さくら
恋愛
留学生に選ばれることを目標にして頑張っていたヨランダ・アポリネール。それを知っているはずで、応援してくれていたはずなのにヨランダのために父にそっくりな子息と婚約させた母。 そんな母が亡くなり、義母と義姉のよって、使用人の仕事まですることになり、婚約者まで奪われることになって、母が何をしたいのかをヨランダが突き詰めたら、嫌われていた気がし始めてしまうのだが……。

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

婚約破棄された武闘派令嬢の伯爵家次男への復讐

常野夏子
恋愛
王国武術の名門アリエール家の長女であるアリエルは、将来を誓い合っていたマジデ伯爵家の次男アリエンに婚約を破棄される。 理由は彼女は名ばかりで本当は弱いというものだった。

処理中です...