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本編
#12 再会
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仮面舞踏会後、数日の休みを終えてグレイス学園に登校する。
ちなみにこの休みの間に計27ページに及ぶレポートとドレスのスケッチを完成させた。これまでの18ページのレポートを大幅に超える最長記録。だいぶ細かく書いた。もう少し調べてから足したいものもあるから、あと5ページは少なくとも進みそう。
教室までの長い廊下。まっすぐ背筋を伸ばして歩く姿は一見いつも通りだが、その心の中はとてもせわしなかった。原因は、あの日貰った紙。軽く二つ折りにされた白い紙。
『10日 西の金木犀館 特別教室Aで』
ずっとずっと今日を待っていた。ドレ友に出会えるんですもの。
起きてから頭の9割を占めているこの約束。授業になんて身が入るわけが無いわ。ずっと夢見心地のふわふわした状態が続いていて。まぁ流石にノートの隅を見た時、無意識に書いていた『あと少し、会いたいなぁ』なんていう心の声ダダ漏れの落書きには冷静になったけれど。
でもとうとう、この日が来たっ! 来たんだから! 今日ぐらいは喜んで、浮かれてていいよね。
昨日は中々眠れなかった。一刻と近づいてきている。どうしましょう。えっとこの後放課後に、特別教室に行けば、会える。ウィンに会える。確か⋯⋯そう特別教室Aであってるはず。 なにか忘れているような⋯⋯いや、昨日あれほど確認したから大丈夫よね。一応紙も持ってきているし。
本棟から別館へと続く廊下を歩きながら思想をめぐらす。しーんとした静かな廊下はなにか悪いことをしているような気を引き起こす。このむずむずするような胸の高鳴りはなんとも言い表せない。
特別教室Aは廊下の突き当たり。あまりこの金木犀館あたりには来ないものだから不安がつのる。大丈夫あってるはず、きっとね。
あっ見つけた! ここだわ。
辺りをそっと伺いながらドアをノックする。緊張のあまり少し強めにドアを叩いちゃったけど大丈夫、よね。制服の布の擦れる音、キュッと磨かれた廊下に響く靴の音。全てが自分の奏でる音だとは思えなくて、まるで私以外に誰がいるみたい。心拍数が上がってきた。ドキドキする。
「リリー様でしょうか」
急に聞こえてきたドア越しの声。面接かなんかに来たみたい。
「はい、そうです」
「・・・・・・すいません、少々お待ちください」
あれ、あれれ? なんか中で揉めてる声がする。私、なんかいけないことしちゃったかな。でもあのメモ書きにはここだって。ここって来たらダメな所でした? 脳内がはてなで埋まっていく。ぐるぐる、ジタバタと脳内で慌てているとドアが開いた。
「まぁ! 」
誰!??
「こちらへ「失礼しました」へっ? 」
さっ上品に、素早く。前だけ見て歩くのよ。対ローズスキルの逃げ足、役に立って。あ~もう。ま、間違えたんだわ。とっても恥ずかしい。そもそも相手になんてされてなかったのよ。もうはやくこの場から去らないと。何してるの私、危ない女になるところだったわ!
「ちょっお待ちください、、、お待ちください! あのお待ちくださいと申し上げております」
決して私に触れないけど、本棟に続く廊下の行方を阻む黒い影。グレイス学園の制服を来た知らない人は足止めしてきた。
全く、間違えちゃったのに。なんでよ。そっと知らないフリして右に1歩踏み出そうとすると後ろから声をかけられた。次こそ聞いたことのある声だった。
「リリーすみません、緊張してしまって」
「ウィン? あ、えっと・・・・・・」
「そのなかなか覚悟? が決められなくて。緊張してしまった、、、とても不甲斐ない。リリーさえよければあの教室の中でお話しないか」
「私も緊張してました。ぜひお話したい、です」
えっと、とりあえず私は間違ってなかったってことよね、良かった。ウィンはあの日と変わらず短い距離だけど私を丁寧にエスコートしてくれる。とても綺麗な動作だ。しかし、エスコートしてくださっている手は微かに震えていた。
大丈夫なのかな。女性恐怖症? チラリと横を向いても、にこっと微笑を浮かべるだけ。仮面のような作り笑顔だってよく分かる。伊達に侯爵家令嬢じゃないからね。
ギィーィと歴史あるドアが後ろで閉まった。真ん中を陣取るふかふかのソファーに似つかない居心地悪い沈黙。前に座る彼を見ても困ったような顔をしてじっと見てくる。
なんかはずかしい。失敗したわ、あの仮面を持ってこればよかった。さっきの間違いのせいで顔赤くなってる気がするし。
というか、よく考えたら初めて顔を見るわね。
あの日は仮面をつけていたもの。ゆらりと光るアメジストの瞳はあの日と変わらないけれど、本当に高貴な華やかさがある。とても美しくて服の想像がはかどるわ。この瞳にあうのは光沢のある生地に間違えない。髪色と合わせて考えると、うーん西の方で良い染料があったはず。丁寧に染められた生地を今すぐ顔のそばに当てたい。色んな色を合わせてみたい。何色が似合うだろう? ポンポンと頭の中に生まれてくるアイデア。いつもは考えない、違う視点だから面白い。
うんうん。いいわ、いいわね! 考えれば考えるほどアリな気がしてきたわ。そうだ! 次は男性ものの服もデザインしてみようかしら。ドレスだけじゃない服も学んでいくことで新たな発見があるに違いないわ。
ちなみにこの休みの間に計27ページに及ぶレポートとドレスのスケッチを完成させた。これまでの18ページのレポートを大幅に超える最長記録。だいぶ細かく書いた。もう少し調べてから足したいものもあるから、あと5ページは少なくとも進みそう。
教室までの長い廊下。まっすぐ背筋を伸ばして歩く姿は一見いつも通りだが、その心の中はとてもせわしなかった。原因は、あの日貰った紙。軽く二つ折りにされた白い紙。
『10日 西の金木犀館 特別教室Aで』
ずっとずっと今日を待っていた。ドレ友に出会えるんですもの。
起きてから頭の9割を占めているこの約束。授業になんて身が入るわけが無いわ。ずっと夢見心地のふわふわした状態が続いていて。まぁ流石にノートの隅を見た時、無意識に書いていた『あと少し、会いたいなぁ』なんていう心の声ダダ漏れの落書きには冷静になったけれど。
でもとうとう、この日が来たっ! 来たんだから! 今日ぐらいは喜んで、浮かれてていいよね。
昨日は中々眠れなかった。一刻と近づいてきている。どうしましょう。えっとこの後放課後に、特別教室に行けば、会える。ウィンに会える。確か⋯⋯そう特別教室Aであってるはず。 なにか忘れているような⋯⋯いや、昨日あれほど確認したから大丈夫よね。一応紙も持ってきているし。
本棟から別館へと続く廊下を歩きながら思想をめぐらす。しーんとした静かな廊下はなにか悪いことをしているような気を引き起こす。このむずむずするような胸の高鳴りはなんとも言い表せない。
特別教室Aは廊下の突き当たり。あまりこの金木犀館あたりには来ないものだから不安がつのる。大丈夫あってるはず、きっとね。
あっ見つけた! ここだわ。
辺りをそっと伺いながらドアをノックする。緊張のあまり少し強めにドアを叩いちゃったけど大丈夫、よね。制服の布の擦れる音、キュッと磨かれた廊下に響く靴の音。全てが自分の奏でる音だとは思えなくて、まるで私以外に誰がいるみたい。心拍数が上がってきた。ドキドキする。
「リリー様でしょうか」
急に聞こえてきたドア越しの声。面接かなんかに来たみたい。
「はい、そうです」
「・・・・・・すいません、少々お待ちください」
あれ、あれれ? なんか中で揉めてる声がする。私、なんかいけないことしちゃったかな。でもあのメモ書きにはここだって。ここって来たらダメな所でした? 脳内がはてなで埋まっていく。ぐるぐる、ジタバタと脳内で慌てているとドアが開いた。
「まぁ! 」
誰!??
「こちらへ「失礼しました」へっ? 」
さっ上品に、素早く。前だけ見て歩くのよ。対ローズスキルの逃げ足、役に立って。あ~もう。ま、間違えたんだわ。とっても恥ずかしい。そもそも相手になんてされてなかったのよ。もうはやくこの場から去らないと。何してるの私、危ない女になるところだったわ!
「ちょっお待ちください、、、お待ちください! あのお待ちくださいと申し上げております」
決して私に触れないけど、本棟に続く廊下の行方を阻む黒い影。グレイス学園の制服を来た知らない人は足止めしてきた。
全く、間違えちゃったのに。なんでよ。そっと知らないフリして右に1歩踏み出そうとすると後ろから声をかけられた。次こそ聞いたことのある声だった。
「リリーすみません、緊張してしまって」
「ウィン? あ、えっと・・・・・・」
「そのなかなか覚悟? が決められなくて。緊張してしまった、、、とても不甲斐ない。リリーさえよければあの教室の中でお話しないか」
「私も緊張してました。ぜひお話したい、です」
えっと、とりあえず私は間違ってなかったってことよね、良かった。ウィンはあの日と変わらず短い距離だけど私を丁寧にエスコートしてくれる。とても綺麗な動作だ。しかし、エスコートしてくださっている手は微かに震えていた。
大丈夫なのかな。女性恐怖症? チラリと横を向いても、にこっと微笑を浮かべるだけ。仮面のような作り笑顔だってよく分かる。伊達に侯爵家令嬢じゃないからね。
ギィーィと歴史あるドアが後ろで閉まった。真ん中を陣取るふかふかのソファーに似つかない居心地悪い沈黙。前に座る彼を見ても困ったような顔をしてじっと見てくる。
なんかはずかしい。失敗したわ、あの仮面を持ってこればよかった。さっきの間違いのせいで顔赤くなってる気がするし。
というか、よく考えたら初めて顔を見るわね。
あの日は仮面をつけていたもの。ゆらりと光るアメジストの瞳はあの日と変わらないけれど、本当に高貴な華やかさがある。とても美しくて服の想像がはかどるわ。この瞳にあうのは光沢のある生地に間違えない。髪色と合わせて考えると、うーん西の方で良い染料があったはず。丁寧に染められた生地を今すぐ顔のそばに当てたい。色んな色を合わせてみたい。何色が似合うだろう? ポンポンと頭の中に生まれてくるアイデア。いつもは考えない、違う視点だから面白い。
うんうん。いいわ、いいわね! 考えれば考えるほどアリな気がしてきたわ。そうだ! 次は男性ものの服もデザインしてみようかしら。ドレスだけじゃない服も学んでいくことで新たな発見があるに違いないわ。
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