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本編

#2 朝食

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3/14 リリアナの愛称をリナ→アナに変更しました。

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ドレスに着替え終わった私は、朝食を食べるため食堂に向かう。廊下は窓が空いていて、肌に触れる空気が少し冷たい。食堂に入るとまだ誰も居なかった。

お母様達はいつもそうだ。時間を全然守らない。自由奔放な迷惑な人達だわ。ため息を着くと、いつもの席に座る。暇だし本でも、と思い常備されている本を手に取った。

そして10分後。にぎやかな話し声がどんどん近づいてくる。お母様、そんなに元気なら早く来てよ。もう一話読み終わっちゃったわよ。顔には出さないけど心の中ではどうしても不満が出てしまう。仕方ないよね。お腹がすいたもの。


「おはよう、アナ」

「おはよーございます、お姉様っ」

「おはようございます。お母様、ローズマリー」


遅れたことを遅れたと思ってもいない様子で爽やかに挨拶してくる始末。これが私の日常ね、と思ってまた密やかにため息1つをついた。


「ふふっ。ローズは、今日も元気ね。アナは最近どう? 」

「えぇ、それなりに。元気にやってますわ」


そうそう、母親はいくら妹を溺愛していると言ってもそれなりには私と接してくださる。物語に出てくるような、見下してくるタイプの悪い母親では無い。意地悪でもない。
ただ、ちょっとね、そう思い込みだったりが強いひとなのだ。

どちらかと言うと妹の方が......。

そんな事を考えているうちにご飯が運ばれてきた。今日もとっても美味しそう。待っている間が少し寒かったからスープの温かさが身に染みる。後で料理長にお礼を伝えに行こうかな。使用人達とは仲が良い。昨日もささやかだが、お菓子パーティーを使用人を呼んで行った。皆で輪になって甘いものを食べる。この上ない幸せ。

そうして朝ごはんを食べ出して少したった時だった。


「そうだ! ねぇねぇお母様っ。来月、学園で仮面舞踏会があるの。新しいドレスが欲しいなぁ~!」

「あら、そうなの。じゃあ新しいものを頼みましょうね」


あぁそういえば仮面舞踏会があるんだった。なかなか無いドレスを見放題の日! 忘れていたわ、来月が楽しみ。

私達が通うグレース学園では年に2回パーティーが催される。仮面舞踏会と学年末パーティー。学園は貴族令嬢と子息がほぼ皆通っていて、婚約者を探したり、交流を深める大切な場でもあるからだ。

仮面舞踏会ではその名の通り仮面をつけて踊る。仮面で顔が分からないから身分関係なしに話すことが出来て、この場で出会う人たちも多い。エスコート制度もなくて比較的自由なパーティーである。

学年末パーティーは学年の終わりにあるから皆が1番力を入れてくるの。豪華でキラキラしているのよ。正式な格式高いパーティーになるからエスコートは勿論、色んなマナーを守らないといけない。大きな発表だったりの場でもある。婚約発表とかね。ドレスも豪華な人が多くて見応えたっぷりなの。


「ローズはどこのドレスがいいかしら?」

「私、ルーナシャインのドレスがいいなぁ。最近密かに流行っているらしいし。私が着てあげてもいいかなーって。私なら絶対似合うと思うの」

「そうなのね、えぇ本当はそうしてあげたいのだけど・・・・・・聞くところによると、なかなか予約が取れないらしいじゃない? ローズ」


えっと、『ルーナシャイン』か。聞いたことないわね、後で調べてみようっと。思わぬ収穫だ。ローズマリーは流行にとても敏感ね、一応今季のトレンドは調べてるけど最近は忙しくって。ブランドまではなかなか追いかけられてなかったわ。これが私が唯一ローズマリーに感謝することね。
って、このレーズンパン美味しい~!おれい確定ね!料理長に言ってまた次も出してもらいましょう。


「侯爵家の力でどうにかならないのぉ? ねぇお母様ったら、お願いっ!」

「愛するローズのお願いだしね、頼みに行かせるけど。ローズそうね学年末パーティーのドレスの予約なら行けるかもしれないわ」

「あっじゃあ、お母様それでいいわ。学年末パーティー用に頼んでおいて! あとその代わりに仮面舞踏会用は、いつものところで飛びっきり豪華にして欲しいなっ! 」

「えぇもちろんローズにピッタリの可愛いドレスにしましょうね。アナの分は......」

「お姉様はいいよね?いらないよね」

「えぇそれでいいわ」


私のドレス費用はローズマリーのものだ。いつの間にか出来上がっていた暗黙のルール。
そろそろ新しいドレスを着たかったけれど......。仕方がない。仮面舞踏会はどのドレスで行こうかな。


「うふふっありがとうお姉様! あっ、それじゃあ可哀想だからお姉様の為に私のたぁくさんあるドレスの中から似合うのを譲ってあげるわ」

「まぁローズはとっても優しい子ね」


優しいって? 本当に優しい子はこんな風に自分だけドレス作ったりしないわよ。上から目線じゃないし。
それより、いつもは言い出さないのに、急にローズマリーがこんなことを言い出すだなんて怪しすぎるわ。何か企んでいそう。あの子は私のことをなぜか目の敵にしていて、いつも嫌がらせをしてくるのだ。けれど私は、


「ありがとうローズマリー」


分かっていてもこう答えることしか出来ない。うっすらとにこやかな笑みを作る。
下手なことを言うと余計に酷くなると知っているの。
私は後で自分の無力さを嘆く事しか出来ないわ。


「じゃあお姉様はあとで私の部屋までドレスを取りに来てちょうだいね」


悪い笑みを浮かべた妹に嫌な予感がしかない。ため息をひっそりとついた私は朝食を食べ進めた。憂鬱だ。せっかくの休日なのに。
さっきまでとっても美味しかったはずの朝ご飯の味を全く感じなくなった。
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