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しおりを挟むすたっ、と立ち上がって良悟が陸也の部屋のクローゼットを開ける。
ほんとわんこ。
スンスン、スンスン、ジャケットにグリグリ顔を寄せてバサバサ落としていく。
「だめ、これも、これもだめ。きらい。洗剤くさい、これも。うぅっ、むかつくっ、」
あーあーぁー。
これ、面白いのが自分で洗濯したくせにその洗剤の匂いが気に食わないの。
アイツの匂いがしないんだってさ。
匂いがする奴だけハンガーから取るっ、て先々月あんなに決意してたのに。無理だったね良悟。
「これと、これと、これにする。」
「オーケー。他には?」
「和己。」
「ん?」
「他は、和己が居れば良い。行こう、巣作る。」
ズビズビ鼻を啜りながら、俺の袖を引っ張って行く。
ははっ、なぁにそれ…かぁわいいの。
手が塞がってる良悟の代わりに、寝室のドアを開けてあげる。
毛布を剥いで、そこに良悟が選び抜いたジャケットを三着敷いていく。
この拘りが俺には分かんないんだけど、何時になく入念で細かい。
袖を畳んでみたり、皺がないように広げてみたり。
犬の寝床って基本、丸じゃないのって思うんだけど。
良悟は…うーん。
「今日のポイントは、良悟?」
「さんかく。」
「この前は四角だったね。」
「今日は三角。ぜったい、三角が良い」
「そうなの?」
「ん。見てて」
「良いよ。」
「キスもしたい…っ」
「はいはい。♡」
そしてまたキスに夢中になっては、俺に巣作りを促されてせっせと三角にし始める。
前は、大変だった。
キスして我慢出来なくなった良悟を慰めてたらアイツが帰って来て、ハッとした良悟が巣が出来てない事に気付く。
目が溶けそうな程泣いて、巣作り出来ない自分を責めてた。
巣作りはΩの最大の愛情表現だって聞いた事がある。
愛してる、ってちゃんと全力で言えなかった事を後悔して後悔して、自分を出来損ないのΩだって泣く。
そんな訳ないじゃん、て慰めても抱き締めても足りなくて。
結局、陸也がフェロモンで発情を煽って前後不覚にした。
ああ、こういう手も有りか…なんて何処か他人事みたいに思った。俺には使えない手だなって。
それだけは、残念だよね。
でも、もし俺がαだったら。
良悟を家から一歩も出さなかっただろうな。
家に閉じ込めて発情期の度に妊娠させただろうな。
アイツだって俺が居なきゃそうしてた。
可愛い自分の番を外で危険な目に遭わせる必要は無い。
閉じ込めて安心して子供を抱いて、健やかに過ごして欲しい。
でも、それは俺達のエゴだって分かってる。
「できたっ。」
「俺の出番?」
「んっ。♡はやくっ。」
涙は引っ込んで、楽しそうにベッドをテシテシ叩く。
良悟が拘って作った巣を壊さない様に、ベッドに上がる。
陸也のジャケットを遠慮なく下敷きにして、擦り寄って来た良悟を抱き締めて太腿を掴んで俺の腰に乗せる。
横向きで見つめ合う良悟は、俺の首に嬉しそうに鼻を寄せてくる。
「いい匂いするー…っ♡」
「どんな匂い?」
聞くと嬉しそうににこにこして、キスをくれた。
「俺の家族の匂いー…♡」
「もっと、具体的に良悟。」
「…いじわる?」
「違うよ、俺が聞きたいだけ。教えて。」
バレたか。
流石。
ごめんね、俺がちょっとだけ捻くれてるだけだよ。
嫉妬ってやつかな。
「そんな事しなくても、」
「ぁ。ぅわ、」
「俺が大事にしてるのは、和己と陸也だけだ…」
「りょー、ご…」
ズボンに手を突っ込まれて、反応してるモノを何時も以上に柔く扱かれる。
擽ったい様な、焦ったい様な、撫でられてあやされてる様な、そんな…風に触られると、堪らなくなる、
「ちんこ、あやすの好き。」
「あ、やさないで?」
「なんで。これ可愛い、」
「可愛くないよ、」
「可愛い、俺の事が欲しくて反応するなら、おっきぃカリも可愛い…♡」
「ぅ、あ…」
さっきまで泣いてたくせに、上手っ、
優しい良悟に絆されて、身勝手な台詞が口から出る。
「俺のよりアイツのが欲しいんじゃなかったの、良悟」
こんな事、言うつもりも無かったのにーーどうしようもなく、むしゃくしゃする。
でも、良悟はきっとそんな俺を許してくれる。
「違う。二人一緒に欲しい。だから、これは和己を慰めてあげてるだけだ。」
「慰めてるの、ちんこを?」
「ん。」
「俺は?」
そんな所より、俺の中身を慰めて欲しいな。
ダメかな。でも、ほんと上手、気持ち良いんだよねっ。
ああ、やばぃっ、いい、
「それ以外の全部。」
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