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ライオンさんのボールペン2

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「先生、お待たせしてすみません。」

「構わないよ。そういう物だから。それで君は一体、何処の誰。」

「失礼しました。屋永先生。宮下秋、そこの薬剤師です。前はひまわりに居ました。」

「ああ、だから知らなかったんだな。大変だろ向こうは。」

「いえ。先生程では。」


そんな事を話しながら、昨日とは違って至極普通の居酒屋へと行き着いた。
とりあえず生、焼き鳥、枝豆、幾つか頼んで待つ。

「先生。」

「なに、宮下君。」

「本当に離婚してたんですね。」

危うくお冷を吹きこぼす所だった。


「そんな事を調べ回ってたのか。」

「優秀な小児科医だとも。」

「そうか。それは嬉しいよ。」

「あと、あんたのペニスは最高ー…♡」

「もう酔ってるのか。まだ飲んで無い筈だけど?」

「冷たいな。お冷をみてぇ。」


この子、スイッチが緩いのか。
公私を分けてるのか分ける気が有るのか分からないけど。
俺は分けたい。

「君が先生と呼ぶのを止めるなら、俺もそうするんだけど。」

「ほんと?」

「本当。」

「じゃあ、屋永さん。」

「うん。なにシュウ君。」

「…シュウ、じゃ無いけど。」

「君が許してくれないと、俺も何処まで踏み込んで良いか分からない。シュウ君は嫌?」

「いやじゃねぇけど、ずっとは嫌だ。」

「どうして?」

「俺はあんたと付き合いたい、屋永さん。」


彼がじっ、と俺を見る。
そこへ頼んだビールが届いて彼の視線が外れた。

「失礼だけど。その前に、もう一度相性を確かめてからでも良いかな。」

「なんだ、まじで気にしてんの。」

「そのせいで離婚したんだよ。気にするに決まってるでしょ。」

「心配しなくても、あんたのペニスは最高だって。♡」

「いや、無理だよ。」

「強情だな。」


とりあえず乾杯した。
仕事上のお付き合いとして、
お世話になります、とよろしくお願いしますの意味を込めて。

グッと飲んで、宮下君はグラスを8割空にした。

「確かめて見ろよ、せんせ。」

「なにをかな、宮下君。」

「俺があんたで善がりまくって、だらしなくなる所。なぁ、見てよ。」

「ん?」

個室の居酒屋で、彼が徐にジャケットを脱いだ。

「可愛いね、」

「ん。♡」

「何時からこうなの?」

「昼間にあんたに電話した時、と店出てからずっと。」

「乳首勃起してるね。」

「ん。♡」

「ねぇ、宮下君。」

「なに、」

「君、白衣?それともスクラブ?」

枝豆を摘みながら、彼のワイシャツ越しでも分かるピンっと勃った乳首を眺める。
やっぱり素直だな。

「何時もはスクラブ…だけど、目立つから白衣も着てた。」

「何が目立つの。」

「ーー…っ。」

「言えないのかな、宮下先生。」

「あ、いゃ。その...な、それやめろよ、」

「ふっ。そうだね。気持ち悪かった?」

ごっこ遊びだとしても、どうにもそう呼ばれるのは気持ち悪い。
良かった、彼も同じようだ。

「シュウ君。」

「ん。」

「それ、何か言ってみて。」

彼は騒がしい店内で、なんとか聞き取れる程小さい声で答えてくれた。
顔を真っ赤にして、でも。
胸はちゃんと見せつけたまま。

「可愛いね。本当に俺と付き合いたいの?」

「ん。物は試しだろ、」

「そうだね。バツイチでも良ければ。」

「気にし過ぎなんだよあんたは。」

「そう?」

「そうだって。俺が証明してやるよ。屋永さん。」

「それは、楽しみだね。」



そしてまた二人でホテルへ。
今朝まで触れていた身体にまた触れて、俺を美味いって言いながら貪ってくれる彼に、俺も腰を振りたくる。

「秋くん」

「ぁ。なにっ。♡」

「信じるよ、君と付き合う。」

「まじっ?」

「だから、デートは何処が良い?」

「… …医者おすすめのバカ高いレストラン。」

「行きたいの?」

「美味いって聞くから。でもマナーとか格式とかは嫌いだ。」


どうやら、彼は味覚に拘りがあるらしい。

「それなら、もうひとつ良いレストランを知ってる。」

「何処?俺でも入れる?」

「入れるだろ。身形さえ綺麗にしてれば初めは入れるよ。」

「つまり、マナーが悪いと出禁になるのか。」

「俺の家はどう。美味い飯、作れるよ。」

「本当、!?」

「本当。」


聞いた事ない?
医者は器用な奴が多いって。
多趣味でも有る。

「ピアノ、料理、それくらいなら出来るよ。」

「医者もな。あと、セックス。」

「どうする?行く?着替えも出せると思うよ。サイズ変わらないよね。」

「良いのか。こんな得体の知れない男を家に上げて。」

「得体なら知れてる。君の薬局の社長と家の病院の理事長は仲良しだろ。」

「…おっかねぇ事言うなぁ。怖っ。」

「分かってて手を出したんじゃないの?誘ったのは秋くんだろ。」

また、手早く身支度を整えながら序でに服のサイズも確認する。
まぁ、いけそうだな。

「ひと晩だけのつもりだったし。」

この辺の医療関係者は、皆医者の顔を覚えてる。
末端の俺の事もそうだろ。
だけど、俺達はあまり君達のことを意識したりしない。

「俺もだよ。」

じゃないと、何時食われて裏切られるか分かったもんじゃないからね。人間を診るのに、人間は簡単に信じない。厄介極まりないよ。


「でも、あんたのセックスが気に入った。なぁ、あれって無意識?」

「どれのこと?」

「メンタルコントロール。」

「好きなんだ。ああするのが。される方は不愉快かも知れないけど、君とは相性が良い。可愛いし、素直だし。」

「俺も好き。気に入った。なぁ、飯って何作れるの屋永さん。」

「何でもだよ。レシピがあれば大体作れる。」


タクシーを掴まえて、俺の家へ。

「意外とフツー。」

「金持ちの医者なんて幻想だよ。ごめんね?」

「慰謝料ふんだくられたの?」

「彼女、浪費家だったから。」

「大丈夫だよせんせ。俺、国家資格持ってるからあんたに集ったりしない。」

「僕も持ってるよ国家資格。」

「俺と勝負するの?」

「吹っ掛けたのは君だろ。」

どちらともなく吹き出して、笑う。
なんだ、良い友達になれそうだ。

それに、セックスも。

「勿論、薬学だけに絞ってあげるよ。」

「あんたの疑義紹介すんの、俺だぞ。」

「そんな事させないよ。」


そういえば、普通の家だけど一つだけ良い所が有るかも知れない。

「家のベッド広いんだ。ソファで寝なくて済むよ秋くん。」

「それ、奥さんと寝たベッドか?」

「違うよ。俺が奮発して買ったんだよ。虚しいよ広いベッドに一人って。」

「カワイソーだなあんた。」

「そうだよ。慰めてくれる?」

「良いぜ。恋人には尽くすタイプなんだ。」


秋くんが俺の背中をぽんっと撫で、摩ってくれる。


「序でに子守唄でも歌ってくれるかな。」

「なんで。そんなに人恋しいのか。」

「ううん。君、本当に良い声だよね。ずっと喋っててほしい。」

「はいはい。な、着替え貸して。あんたも何時迄シャツ着てんだよ。」

「千歳。」

「なに?」

「あんた、じゃないよ。千歳。呼んでみて秋くん。」


慰めてくれる優しい君に甘えたくなった。
何せ此処は俺の家だしね。

「あんたの方が甘えん坊じゃねぇの。」

「それでも良い。」

「ったく。ギャップ激しいなこの人。」

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