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本編
10月5日 (1
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最近シギさんの様子がおかしい。
元から分かりづらい人だから、俺の気のせいっつー可能性も有る。
有るけどっ、コソコソされてっと気になる。
俺、飽きられた。
どうすっかなぁ、調子乗り過ぎたのかな。
やっぱ車の鍵持ってっと、困るんじゃねぇの。
帰りにどっか行きてぇのかも知ンねぇし。
例えば、女の子の店とか。
なんっつーか、ハジメマシテがバーだったからな。
一人で飲みてぇ時くらい有るよな。
ーーーーー
きっかけは多分あの人からだった。
俺はあんま出世願望とか無くてフツーに働いてフツーの金を貰ってフツーに遊びたかった。高卒で入った会社は正社員だったけど。
次々辞めるやつが居て、俺も扱いに腹が立って辞めた。
所詮高校生はガキで、それを見下すカッコ悪い大人はどこにでも居た。
俺、そういうの我慢出来なくてさ。
ガキだからって舐められンのスゲェ嫌だった。
そんなだから2個目の就職先も半年過ぎた位で、辞めた。
世の中、アレで大人かよみたいな大人が山程居る。
アホらしくなった所でテキトーなパートとバーの面接を受けたらそっちの方が両方受かった。
パートはドラストの品出しとレジ。
13時までそこでパートして18時からバーに顔を出す。
そのバーが曲者ばっかだった。
化粧ばっちり美人から角刈りマッチョまで。
お兄さんって呼ぼうとしたらおねェさんと呼べって肩を痛い位ゴリゴリ揉まれた。
そんなバイトを俺は結構気に入ってた。
「こうちゃん、アンタどんなのが好みなの?」
「んーわっかんね、す」
「ガチむち?細め?それとも女装男子ーっ?」
「カッケェひとが良い。俺がうっかりしてっから。引っ張ってくれるような人。」
「ねぇねぇこうちゃん、アンタ陸上の時の写真とか無いの?腹筋凄いんでしょーっ?」
人の話なんて聞いちゃいねぇ。
けど話の聞き方はスッゲェ色々教えてくれた。
アンタ、今のは黙っとくとこよ!
こうちゃん、!ほら!行け!
無茶振りもその気の無い客にもバンバン話し掛けて、ウンウン相槌打って話を聞き出していく。
その内みんながマシンガントークし始めて、うるっせぇ店が出来上がる。
話の8割が下ネタだったけど、恋愛相談、人生相談は抜群に上手かったな。
「別れなさいそんな男。」
「いやだっ。好きなんだもんっ。」
「バカね。あんたはダイヤの原石なのよ。見た目はまだ…まぁ、ちょっと汚いかも知れないけど、あんたまだ研磨中よ!ほんとはダイヤなの。高級な石ころよ。でもあんたが今付き合ってる男はダメ。ソイツは磨りガラスよ!」
「なんっすか、磨りガラスって?」
「磨りガラス知らないのっ?ジェネレーションギャップっ、!?アタシって超イケてるBBAね。磨りガラスはね、綺麗に見えるの。模様が入ってたりぼかして向こうが見えない様になるの。そういう加工がしてあるの。」
「へぇー。」
「だから原石と違って綺麗に見えるの。安いけど沢山加工してるからよ。でも、アンタは原石。良い?見た目に騙されたらダメよ。磨くだけで最高級品なの、アンタ顔だけの男なんて五万といるんだからっ。」
「うぅーーっ、わかるぅううーっ。」
「やめてよママーこっちまで思い出しちゃうっ、」
「私も前の男...磨りガラスだった。」
終始女の子が泣いたり爆笑したりする。
そこに、あの人が来た。
「あらやだっ、ひさしぶりーっ!」
「おうっ、キミコ。友達連れてきた!」
「お友達?いらっしゃいー」
「いらっしゃいませ。」
もう大分酔ってそうな二人組は、ウイスキーを飲んだ。
店長のキミコねぇさんが言うには元は依頼人とその業者らしい。
「設計事務所よ。」
「へぇっ、カッケェすね。何を建ててもらったんですか?」
「そりゃおめぇ。愛の巣よ、俺とキミコの。」
「バッカぁー♡現ナマが良いわぁー」
「そう言うなって。」
連れて来られた方のお兄さんは離婚するらしい。
すっかり落ち込んでるのが他人の俺から見てもわかる。
浮気でもされたのか、他に好きな男が出来たのか、はたまた結婚生活に向いてなかったのか。
色んな理由が人それぞれ有る。
ここにはガキだからって馬鹿にする様な大人は居なかった。
それどころか好きでやってた陸上で、別にこれと言った成績が残せなかった俺の人生より、よっぽど波乱に満ちてそうな人達ばっかだった。
自由で居るってのは難しいんだな、てそれだけは分かった。
退屈しねぇバイトはなかなか辞め時が分かんなかった。
同級生が出世したり、店長になったり、俺より良い給料を貰ったりする中で俺だけがパートとバイトを繰り返してた。
趣味も散歩しかねぇ様な大人になってた。
暇で暇でブラブラ歩いてたら、あの人が居た。
そっか。
あの人の建築事務所この辺だったか。
二回目は一人で来てた。
三回目も黙って一人で飲んでスッと帰った。
決まって第三水曜日に来るひとだった。
偶々見掛けただけだ。
声を掛けようとは思わなかったけど。
つい眺めてた。
大人しそうに見えるし感情的でも暴力的でもなさそうなひとなのに。何が離婚の原因になったんだろうな。
結局、遠目で眺めてても何もわかんなかった。
「別れた。」
五回目にしてついに離婚するらしいから、"離婚した"になった。
「辛そうっすね。」
「あぁ」
無い指輪を探して右手が左の薬指を触ってる。
そういえば、この人何時も触ってたな。
「指、寂しいすっか?」
「癖みたいなもんだ。」
「急に無くなると違和感凄そうっす。」
「まぁな」
またウイスキーを1杯だけ頼んでちびちび飲む。
何を考えてんのかも、店のBGMを楽しんでんのかもわかんねーひとが急に俺を見て、ふっと笑った。
可愛いとこ有んじゃん。
「似てるな」
「何に。」
「嫁に」
「可愛いっすか?」
勝手にときめいて間抜けになる事を俺の辞書では恋って言う。
この人は傷心中。
バツイチになったばっかのおっさん。
おまけにこの店の中じゃ、俺が一番化粧っ気が無くて、若くて毒気も無い。
そりゃ、可愛くも見える。
照明暗いしな。
「ああ。」
「良かった。もっと見てってよ?」
わかってんよ。
これは、只ときめいただけだ。
愛になる事はねぇっ。
だってこの人ノンケじゃん。
ーーーーー
やっとこの家の鍵を開けるのに慣れたし、靴を脱いで真っ直ぐ風呂場に行ってちゃんとハンカチをポケットから出して、洗濯機に入れて、部屋まで歩いてベルトを抜いて着替えて脱いだ服を持ってまた洗濯機に寄って、風呂掃除してるシギさんの代わりに玄関からリビングまでの電気をつけて回る。
「あーーっ、疲れたぁ」
冷蔵庫をバコっと開けて、缶ビールをグラスに注ぐ。
俺、これ上手いんだよねぇ。
バイトで鍛えられた必殺技。
その名も、缶ビールを100倍上手くする注ぎ方。
あとタッパーをチンして俺が予約炊飯した米を丼によそって。
「あちち、あちっ、」
シギさんに鍋掴み買おうつったら、要らねぇって言われた。
要るくね?
熱ぃって。
「腹へったぁー。」
これは昨日の残りっつーか、俺がバクバク食うから、何個か取り上げて今日も食える様にしてくれた唐揚げ。
シギさんの唐揚げマジで美味いンだよな。
あとこれは、俺が昨日作った豆腐と豚肉とネギをすきやきのタレで煮た奴。
温まって皿に乗せたとこでシャツの袖とズボンの裾を曲げたシギさんが入ってきた。
「光輝。」
「んぇ?」
俺がこの家に引っ越す前まで、定期配達してたペットボトルのお茶は、今俺の為に冷蔵庫に入ってる。
飯食う時はやっぱ緑茶じゃねぇと食いずらいんだよな。
俺が言うのも何だけど、コーヒーとビールばっかじゃダメだと思うんだけどな。健康に悪そ。
「明日出掛けるぞ。」
「うっす。どこっすか?」
「行きゃ分かる。」
「ふーん?」
俺も…シギさんも仕事は持ち帰らない主義だし。
俺は家ではダラダラ動画見てたい。
映画でもゲーム実況でも良い。
シギさんだって見るとも無しに俺が点けたテレビをまたビールを飲んで付き合ってくれる。
やっぱアクション系が好きらしい。俺も。
最後のド派手な爆発シーンで“だよな”ってなってスッキリしてぇ。
なのに最近は、ずーーっとスマホを見てはなんかメモしてる。
そのメモしてる紙が方眼だから、初めは仕事かと思った。
何してんの、って聞いても“ちょっとな”つってはぐらかされる。
資材の一覧かと思えば違うし、仕事では見た事無いメモの取り方だった。
ちょっとって何だよ。
俺は競馬とか分かんないけど、なんかの順番とアルファベットが書いてある。
偶に、俺も見たことある様な…例えばIVはローマ数字の4じゃなくてアイボリーの略だし、LUはブルーの略だ。
あと、元素記号みたいなのもある。
AgとかTiとか。
銀は塗装で使うし、チタンは変な形の屋根に使う。
軽くて丈夫で腐らない。海水にも強い。
俺は、初めてTiがチタンの略だって知らなくてシモいのしか浮かばなかった。
業者資料を聞きながら、やっとこいつの読み方がチタンだって分かった時はTiの上に"チタン"ってメモしたくらいには物を知らない。
だってこんなん。
バーのネェさんに見せたら絶対ぇ手ぇ叩いて笑ってくれるか、ガチの職人が出てくるに決まってンだよ。
軽くて丈夫なのは良いかもねブラブラしなくて、とか言いそうだなっ。
そんで、問題は硬さだろ。
結局の所、男は長さでもテクでも無く硬さ。
まぁ、多少は長い方が良いよな…。
その点シギさんのはー…ちゃんと硬ぇし長ぇ。
あと、根本の方が太くなってんのもいい。
腹ン中に入ると、突くっつーより捏ねて揉まれてどんどん広げられてンのが分かる。
広がったナカを太いのがもっと奥まで来ると、顎がカタカタ鳴るくらいいんだよな。まじで、この人のチンコはエロい。
流石に硬さはチタンの方が強いよな。
あいつら金属だし、感覚ないもんな。
つーか明日どこ行くんだ。
こういう時時に限って、シギさんが持たせてくれたカギは玄関に置いてきた。
鞄に入れっぱなしにするのが嫌で、だからってどっかやるのも無くしそうで怖ぇから。
シギさんがトレー用意してくれた。
ここに置け、つってくれたのに…あれ、もう持たなくて良いって事じゃねぇよな。
だよな。
なんだよ、俺すげー…かっこ悪ぃ。
ーーーーー
「あ。」
畳んだ洗濯物を運ぼうとして、ぽてっと落ちた。
「落ちたよ良悟」
ありがとう、そう言って受け取ろうとして手が止まる。
「ん?どうしたの」
常日頃思ってる。
コイツ顔が良い。
落ちたのは俺のパンツだった。
へらっとした顔が俺の異変に気付いてじわっと変わる。
目が熱く揺れて俺をじっと見てる。
それで、何時もの甘いどろっとした声で言うんだ。
「りょーご♡」
「なに、」
「上から見下ろす俺はそんなに好き?」
目が泳ぐのがわかる。
偶々だ。偶然、立ちあがろうとした和己が膝を付いていて、その手元に洗濯物を運ぼうとしてる俺のパンツがポテっと落ちただけ。
ニコニコしながらその脳味噌では俺にどんな酷い事をしようか考えてるの、知ってるんだからな。
そうだな。
俺の出来る選択肢は二つ。
一つ、このまま素知らぬふりをしてパンツを受け取る。
二つ、大人しく白状する。
先ず一つ目は、俺ひとりが恥ずかしい目に遭う。
そのままパンツを受け取って寝室か陸也の部屋で叫び出すほどの羞恥心に悶える事になる。絶対そうだ。顔が良いだけなのに…っ、!
二つ目も多分俺だけが恥ずかしい、
よし、三つ目にしようーー。
洗濯物を片手に持ち替えて、和己が差し出すパンツの向こうの、手首をガッチリ掴んで腰を屈めてちゅ、と恥ずかしいくらい軽い小鳥さんのキスをした。
しかも、ほっぺに。
「ありがとう王子様ー…♡」
俺だって恥ずかしい、口の端が上がるのをどうやったって隠せないけど、ピッとパンツはひったくって取り戻したし、洗濯物を両腕でぎゅっと抱き締めてやる。
例えば。
ここにある陸也の服と和己の服が大事な大事な宝物みたいにして顔を埋めてすりすりして見せる。
実際、これは俺の宝物だから間違いない。
二人の物なら洗濯物だって好きだし。
洗濯物じゃなくても好きだ。
「ふへっ。」
洗濯物越しに目が合った。
やっぱり、恥ずかしぃ、こんなの照れずに居られない、
「か、っわィー…。」
「知ってる。♡」
ひらっと手を振ってリビングを出る。
今頃は顔を真っ赤にして心臓でも握りつぶしてる、と思う。
例えキラキラのイケメンが、花束とか指輪じゃなく、可愛がってる男のパンツを握って寄越したとしても和己はキラキラで顔が良い。
それに、俺を好きだ。
だから、こんな恥ずかしいことも出来る。
もうすぐそいつの誕生日なんだ。
これで三人とも28歳になる。
もうすぐ、おめでとうって言えるっ。♡
ーーーーー
「何っすかソレ。」
「お前に言われたかねぇな。」
なるべく派手な色の上着着て来いって言うから、俺一張羅出して来たのに。
「目がチカチカする」
「シギさんこそ、そんな派手なの持ってたンすね。」
俺は、グラフィックアートがべっとり描いてある奴。
んで、シギさんは真っ赤なブルゾン。
一応肩周りは黒だけど、この人赤とか着るんだな。
似合ってる。カッケェ。
「寒くねぇのかそれ」
「結構温いっすよ。それに俺寒いのは平気っス。」
「…いいか、」
「今日はどこ行くんスかっ?」
「徒歩じゃ行けねぇとこ、だな。」
「バス?」
俺は的外れな事を聞いたらしい。
シギさんがフッと笑って、何時もみたいに違ぇって言う。
自分の靴と序でに俺のボロボロのランニングシューズを持って、俺より先に玄関に立って言う。
「カギ持って来いよ。」
「う、す。」
靴、買いに行くのか。
俺とシギさんの靴を?
そう思ってた数時間前の俺を、今は殴りたい。
もっとちゃんとこうっ、もっと…っ、よく見りゃあ分かったじゃねぇかっ、!!
2時間くらい車で走って、駐車場で降りた。
「靴、履き替えろ。」
俺にそう言いつつ、自分もトレッキングシューズに履き替えてた。
漸くなんかおかしいな、と思ったのはこの辺で。
そう言えば、トレッキングシューズ履いてンのも派手なブルゾン着てンのも初めて見たなって、思ったんだ。
どう見ても、これかから靴屋に行こうって雰囲気じゃねぇ。
「折角だからな。」
「登山でもすんの?」
俺、流石にこの靴で山登りはした事ねぇよ?
「散歩だ。」
「へ?」
「坂が多いからな、気を付けろよ。」
「ま、待てってば、早ぇって」
スタスタ駐車場を出ようとするシギさんを俺は慌てて追いかけた。
「こ、れ…っ、結構キツくない、?」
「だから言っただろっ、」
大の男が二人してフーフー言いながら長い坂道を登る。
途中に立ってる看板で、ここがガチめのハイキングコースだって知った。
「は…っ、デートが、運動会になってンじゃん…っ、」
「お前、バテるの早くないか、俺より若い癖に怠けてんのか、」
「そう言うっ、あんただって、息上がってンの…っ、つーか、俺中距離なんだってば、」
「走ってねぇだろ…っ、」
「走ってねぇけど、登ってンじゃん…っ、登山になってンじゃん」
聞けば、何時もは上まで車で行くらしいい。
何時もって事はここは通い慣れた場所って事だ。
そんで、俺の趣味に付き合って散歩っつー登山並みのハイキングに付き合ってくれてる。
俺、こんなアクティブなデート初めてだわっ、
息切れるし、汗掻いて足はキチぃのに楽しい。
「ああ、やってんな。」
途端、立ち止まったシギさんが上を見た。
俺もつられてコンクリの先を見てた目線を、空へ向ける。
そこには、派手な色の気球が上がってた。
「気球ー…じゃない、あれ」
「パラグライダー。」
それって、あんたの趣味じゃん。
もしかして、これってマジで本気のデートなんじゃねぇの、
数時間前の俺を殴りたいなんて言ってごめんな俺。
だってシギさんがこんな事してくれるって、思わねぇじゃんっ、?
やばくね、すごくね、マジで綺麗じゃん。
だって、見てみろよっ、!
「すげぇー…っ、マジで空とんでるっ!」
「ふっ、ははっ。」
「もしかして、俺も飛べんのっ?」
「インストラクター付きならな。飛ぶか。」
それは、すげぇ。
俺も飛べるなら、やってみてぇ。
「… …そのインストラクターって、シギさんじゃねぇよな?」
「流石に無理だな。」
「つー事は、あのオレンジの人みたいに俺は誰かの股間にくっ付いて空飛ぶンすかね。」
「言う程くっ付かねぇが。まぁ初めはそうなるな。」
「… …もしかしてシギさんもアレやったンすか。」
「やったな。」
「俺以外の男とくっ付いて、空飛んだンすか。」
「山から飛ぶ時は流石にな。」
「やまっ、!?上手くいったンすか、!?」
「ああ。面白かったな。」
それは何より。
楽しくなきゃ続かねぇよな。
確かに、空は飛んで見てぇけど。
「俺、高いとこムリなんすよね、」
だから知らねぇインストラクターとくっ付いてお空飛ぶのは、かなり恐怖心がある。
「けど、あんたとなら。飛んでみてぇ…。」
んなカッコ悪ぃ俺にシギさんは、またフッて笑う。
「そうか。」
その声が楽しそうだったから、こん位の小さい恥を晒した甲斐が有ったかも知れねぇ。
「ほら、行くぞ。」
二人で、ハイキングコースの終わりまで歩いた。
開けた丘の上には派手な色のパラグライダーが、マジで空いっぱいに飛んでた。
「すげぇー…でけぇ…」
遮るものが無い斜面と空を飛ぶって、想像も付かない位楽しそうに見える。
「ハジメさん、」
「あ?」
「ここ、また連れて来てくれねぇ…?俺、またこの景色が見たい。」
「ああ。分かった。」
朝イチから出掛けて、昼過ぎまでパラグライダーを見てハイキングコースをまた駐車場まで戻ってたら、昼がドライブスルーのハンバーガーになった。
つくづく、こういうデートは初めてだなと思った。
大体は、買い物デートとかテーマパークとか映画館とか水族館の後にちょっと良い飯食いに行くだろ。
ガッツリ運動して食うハンバーガー、美味ぇわ。
途中、道の駅で休憩してアイス食って、オススメの桃ジュース飲んだらバカ美味かったから買ってたら、その隣でシギさんがビールを買い込んでた。
見た事無い奴だ。
「此処にしか売って無ぇんだよ。」
「へぇ。」
それにしちゃ、随分な量買うな。
この人プリン体とか気にした事あんのか。
…その割に、腹出て無ぇな。
出て無いどころか、引き締まってるー…あー触りてぇ。
そんな事を考えてた筈が、気付いたらシギさんが握るハンドルの左腕を眺めながらコクン、と首が傾いて気絶するみたいに寝た
ーーーーー
歩かせて正解だったな。
時間的には丁度だが、どうやったてコイツが日和るのは目に見えてた。
飛ばしてやれねぇのは悪かったと思うが、俺のライセンスじゃお前のインストラクターは引き受けられねぇ。
本当は、辞めるつもりで見に来たんだ。
最後にコイツと見納めて、キツめのハイキングコースに付き合わせてそれで終いの筈だったんだ。
それなのにコイツは。
『ハジメさん、』
『ここ、また連れて来てくれねぇ…?俺、またこの景色が見たい。』
ンな事言われたら、辞められねぇじゃねぇか。
無意識か知らねぇが、名前まで呼びやがった。
正直、この危ねぇ趣味のせいで捻挫も骨折も突き指もした。
偶に洒落にならねぇ様な事故も起こる。
それでも辞められなかったのは、コイツの言う遠り空が飛びたかったからだ。
子供じみた夢だと思うが、ガキの頃はパイロットになりたかった。
それがふと、パラグライダーで飛ぶその足元に目が行った。
上から見渡す限りの家々が立ち並ぶ景色だった。
その一つ一つに車があったり、庭があったり、二階建て、平家。
色んな家が見えた。
その家一つ一つに人が暮らしていて、毎日出たり入ったりを繰り返してる。
そんな当たり前の事に気付いた時、良いな、と思った。
飽きの来ない毎日が良い。
なら、飽きの来ない家が良い。
毎日出ては帰ってくる場所だ。
安心できる空間が良い。
何処で何をするのか、暮らしがずっと先まで見通せる様な家が良い。
そんな家が作れたら、俺は楽しい人生が生きられるだろうとそんな事を思ってた。
青臭い夢だが、無いよりはマシだろ。
実際は、馬鹿で融通の効かない仕事人間になっただけだったが。
それでも仕事には誇りを持ってる。
それくらいしか無いとも言えるが、今はコイツが居る。
そうだな。
飛ぶのは辞めても、あそこにまた通うのは良いかも知れねぇ。
コイツの散歩にもなる。
自分でも意外だった。
一人で黙々と歩く散歩やらハイキングやらマラソンやらの何が楽しいんだと、俺ひとりなら思って所だった。
それなのに、息を切らしながら隣を歩くコイツは、可愛かった。
よく喋る口で、一向に黙る気配が無ぇ。
朝イチから叩き起こしたせいもあるだろうが、半分はそのうるせぇ口のせいだ。
「ったく、グースカ寝やがって。」
これも、計算の内だと言ったらお前は俺を嫌いになるか。
ーーーーー
お、れは…今、場違いなトコに来てる。
うっかり眠りこけた俺は、シギさんに起こされるまでここが何処かも知らねぇまま、言う通りにスニーカーに履き替えて眠い目を擦りながらシギさんの背中に着いて、どっかの店に入った。
「これと、こっち…あとこのシリーズの奴をお願いします。」
「な。なぁ、シギさん・・・」
「あ?」
「ここ、どこー・・・」
「宝飾店。」
「ちっ、げーよ、!なんで、俺ら以外誰も居ないンだよ…っ、」
「そういう時間帯だからだ。」
「え、ほんと。」
「ああ。余所見してる暇無ぇぞ。」
「なんで」
「お前にやりたい物が出来たからだ。」
お、れだって流石にあのカーテンの向こうから何が出て来るのかは、想像が付く。
最悪ピアス。最高指輪。
そんでどうみたってピアスって雰囲気じゃねぇ。
「あ、のさ…俺、こういうとこ初めてなんだけど、」
「俺もだな。」
「なんでンな慣れてンだよっ、」
「散々ネットで見たからな。」
「ネット…っ、なんで?」
「良いから黙ってろ。見るだけだ、決めるのはまだ先で良い。」
そうは言っても、こんなキラキラ金色だの銀色だの眩しい店でどうやって寛いで落ち着けって言うんだよ。
出してもらったコーヒーにすら手を付けられない程、緊張してるっつーのに。
「な、なぁ。」
「なんだ。」
「俺、なに選べば良いの…、」
そう言い終わるかどうかのタイミングで、ニコニコのお姉さんが黒のトレーにズラッと指輪を並べて運んできた。
「これだ。候補がこれだ。この中から選ぶか、気に食わないなら好きなのでも良いぞ。」
俺は、カッスカスの声で答えるしかなかった。
「ぅー…っ、す」
ーーーーー
結局、あれだけずらっと並んだ指輪からたった一つを選ぶのは流石に無理があった。
写真だけ撮らせて貰って、あとは家で考えてきますってシギさんが切り上げて連れて帰ってくれた。
その時に、参考までにってパンフレットをくれた。
これまで此処で指輪作った人の写真が載ってるらしい。
それは、本気で有難い。
家に着いてもまだ緊張して、漸く落ち着いたのは外が真っ暗になった夜で、風呂上がってからだった。
因みに、どんだけガチガチだったかっつーと、人生で三度あるかどうかの間違いを犯した位、緊張してた。
髪を2回洗った。
1回目はちゃんとシャンプーを使った筈だ。
んで、ボーッとしてたから2回目、またシャンプーしたのかと思いきや泡を流した時に髪がギッシギシになった所で気付いた。
「これ、シャンプーじゃねぇ…」
二回目の洗髪はボディーソープだった。
どんだけ動揺してんのかがよく分かる。
もうそっからは只、無心で体を洗ってやっとの思いで風呂から上がった。
「なぁ…シギさんー…見て。」
「なんだ」
「俺の頭、ボディソープでギッシギシんなった」
「なんでだっ、」
「ハジメさんが指輪なんか見せるからだろ…っ、マジで緊張したんだからな」
「もう良いだろ。4時間も前だぞ。」
「まだ4時間しか経ってねぇよ…」
ドカッと、テーブルの角に座る。
もうテレビを見る気分じゃねぇ、けどハジメさんの側には座りたい。
「やっぱシルバー多い?」
「ああ。」
丁度、貰ったパンフレットをパラっと捲ってるとこだった。
疲れはしたけど、選びたく無い訳じゃ無い。
ページを捲って行くハジメさんの指を見ながら、誰かがカスタムしたであろう指輪を見ていく。
「あっ、!?ちょっ、ちょ、コレ千田のじゃん!?」
「だろうな。」
「はぁ?」
「千田の嫁さんが教えてくれた店だからな。」
「いつ、」
「先月呑んだ時、千田を迎えに来ただろ。」
「あぁー…多分。」
千田だって確証があったのは、その指輪の柄が特徴的だったのも有るけど、内側に刻印されてるデッカイ文字だった。
「顔写真は載せて無いんだな…」
よくよく調べてみれば、そういう事に限り無く配慮した店だったらしい。
あの時間に俺たち以外に人が居なかったのは、あの店が予約制だったからだ。
それと、このパンフレット。
希望すれば写真も名前も出せる。
希望しなければ指輪だけ、イニシャルだけ、っつーのも有った。
これは、俺でも嬉しいわ。
幸せそうな同性カップルが並んで写ってる。
これを見られるのも、同性カップルだけらしい。
こういうの、良いな。
すげぇ励みになる。
パラパラ捲るシギさんの指をまた眺めながら、少しだけ申し訳なさを感じたりした。
この人を引き摺り込んじゃったな、
あー…でも、どうせノンケとは上手く行かなかったんだし。
俺が貰ってしまえば、それでチャンチャンって良い話になんねぇ。
良いよな。俺がこの人幸せにしても。
だって、”結婚“に向いてなかったンだろ。
じゃあ、俺と恋人みたいな人生送って来ンねぇかな。
今日みたいにさ、デート連れてってくれたの本気で嬉しかったしー…あ。
待って
って言おうとして、カラカラになった喉で声が出なかったのに、シギさんのページを捲る指が止まった。
俺は持ってきてたお茶をグビっとのんで言う。
「俺、この人知ってるっ。」
「… … なんで知ってる、」
「八代さんとこのスタッフさんっすよ。えーっと、確か、ヨノカさんっ。マジで美人っすよね。特にこの右頬の黒子が笑うと可愛いっす。」
俺は、気付かなかった。
シギさんの表情が何時になく険しくて、痛そうな顔をしてたのに。
気付いたのは、あの人が風呂から上がって来てからだった。
ーーーーー
元から分かりづらい人だから、俺の気のせいっつー可能性も有る。
有るけどっ、コソコソされてっと気になる。
俺、飽きられた。
どうすっかなぁ、調子乗り過ぎたのかな。
やっぱ車の鍵持ってっと、困るんじゃねぇの。
帰りにどっか行きてぇのかも知ンねぇし。
例えば、女の子の店とか。
なんっつーか、ハジメマシテがバーだったからな。
一人で飲みてぇ時くらい有るよな。
ーーーーー
きっかけは多分あの人からだった。
俺はあんま出世願望とか無くてフツーに働いてフツーの金を貰ってフツーに遊びたかった。高卒で入った会社は正社員だったけど。
次々辞めるやつが居て、俺も扱いに腹が立って辞めた。
所詮高校生はガキで、それを見下すカッコ悪い大人はどこにでも居た。
俺、そういうの我慢出来なくてさ。
ガキだからって舐められンのスゲェ嫌だった。
そんなだから2個目の就職先も半年過ぎた位で、辞めた。
世の中、アレで大人かよみたいな大人が山程居る。
アホらしくなった所でテキトーなパートとバーの面接を受けたらそっちの方が両方受かった。
パートはドラストの品出しとレジ。
13時までそこでパートして18時からバーに顔を出す。
そのバーが曲者ばっかだった。
化粧ばっちり美人から角刈りマッチョまで。
お兄さんって呼ぼうとしたらおねェさんと呼べって肩を痛い位ゴリゴリ揉まれた。
そんなバイトを俺は結構気に入ってた。
「こうちゃん、アンタどんなのが好みなの?」
「んーわっかんね、す」
「ガチむち?細め?それとも女装男子ーっ?」
「カッケェひとが良い。俺がうっかりしてっから。引っ張ってくれるような人。」
「ねぇねぇこうちゃん、アンタ陸上の時の写真とか無いの?腹筋凄いんでしょーっ?」
人の話なんて聞いちゃいねぇ。
けど話の聞き方はスッゲェ色々教えてくれた。
アンタ、今のは黙っとくとこよ!
こうちゃん、!ほら!行け!
無茶振りもその気の無い客にもバンバン話し掛けて、ウンウン相槌打って話を聞き出していく。
その内みんながマシンガントークし始めて、うるっせぇ店が出来上がる。
話の8割が下ネタだったけど、恋愛相談、人生相談は抜群に上手かったな。
「別れなさいそんな男。」
「いやだっ。好きなんだもんっ。」
「バカね。あんたはダイヤの原石なのよ。見た目はまだ…まぁ、ちょっと汚いかも知れないけど、あんたまだ研磨中よ!ほんとはダイヤなの。高級な石ころよ。でもあんたが今付き合ってる男はダメ。ソイツは磨りガラスよ!」
「なんっすか、磨りガラスって?」
「磨りガラス知らないのっ?ジェネレーションギャップっ、!?アタシって超イケてるBBAね。磨りガラスはね、綺麗に見えるの。模様が入ってたりぼかして向こうが見えない様になるの。そういう加工がしてあるの。」
「へぇー。」
「だから原石と違って綺麗に見えるの。安いけど沢山加工してるからよ。でも、アンタは原石。良い?見た目に騙されたらダメよ。磨くだけで最高級品なの、アンタ顔だけの男なんて五万といるんだからっ。」
「うぅーーっ、わかるぅううーっ。」
「やめてよママーこっちまで思い出しちゃうっ、」
「私も前の男...磨りガラスだった。」
終始女の子が泣いたり爆笑したりする。
そこに、あの人が来た。
「あらやだっ、ひさしぶりーっ!」
「おうっ、キミコ。友達連れてきた!」
「お友達?いらっしゃいー」
「いらっしゃいませ。」
もう大分酔ってそうな二人組は、ウイスキーを飲んだ。
店長のキミコねぇさんが言うには元は依頼人とその業者らしい。
「設計事務所よ。」
「へぇっ、カッケェすね。何を建ててもらったんですか?」
「そりゃおめぇ。愛の巣よ、俺とキミコの。」
「バッカぁー♡現ナマが良いわぁー」
「そう言うなって。」
連れて来られた方のお兄さんは離婚するらしい。
すっかり落ち込んでるのが他人の俺から見てもわかる。
浮気でもされたのか、他に好きな男が出来たのか、はたまた結婚生活に向いてなかったのか。
色んな理由が人それぞれ有る。
ここにはガキだからって馬鹿にする様な大人は居なかった。
それどころか好きでやってた陸上で、別にこれと言った成績が残せなかった俺の人生より、よっぽど波乱に満ちてそうな人達ばっかだった。
自由で居るってのは難しいんだな、てそれだけは分かった。
退屈しねぇバイトはなかなか辞め時が分かんなかった。
同級生が出世したり、店長になったり、俺より良い給料を貰ったりする中で俺だけがパートとバイトを繰り返してた。
趣味も散歩しかねぇ様な大人になってた。
暇で暇でブラブラ歩いてたら、あの人が居た。
そっか。
あの人の建築事務所この辺だったか。
二回目は一人で来てた。
三回目も黙って一人で飲んでスッと帰った。
決まって第三水曜日に来るひとだった。
偶々見掛けただけだ。
声を掛けようとは思わなかったけど。
つい眺めてた。
大人しそうに見えるし感情的でも暴力的でもなさそうなひとなのに。何が離婚の原因になったんだろうな。
結局、遠目で眺めてても何もわかんなかった。
「別れた。」
五回目にしてついに離婚するらしいから、"離婚した"になった。
「辛そうっすね。」
「あぁ」
無い指輪を探して右手が左の薬指を触ってる。
そういえば、この人何時も触ってたな。
「指、寂しいすっか?」
「癖みたいなもんだ。」
「急に無くなると違和感凄そうっす。」
「まぁな」
またウイスキーを1杯だけ頼んでちびちび飲む。
何を考えてんのかも、店のBGMを楽しんでんのかもわかんねーひとが急に俺を見て、ふっと笑った。
可愛いとこ有んじゃん。
「似てるな」
「何に。」
「嫁に」
「可愛いっすか?」
勝手にときめいて間抜けになる事を俺の辞書では恋って言う。
この人は傷心中。
バツイチになったばっかのおっさん。
おまけにこの店の中じゃ、俺が一番化粧っ気が無くて、若くて毒気も無い。
そりゃ、可愛くも見える。
照明暗いしな。
「ああ。」
「良かった。もっと見てってよ?」
わかってんよ。
これは、只ときめいただけだ。
愛になる事はねぇっ。
だってこの人ノンケじゃん。
ーーーーー
やっとこの家の鍵を開けるのに慣れたし、靴を脱いで真っ直ぐ風呂場に行ってちゃんとハンカチをポケットから出して、洗濯機に入れて、部屋まで歩いてベルトを抜いて着替えて脱いだ服を持ってまた洗濯機に寄って、風呂掃除してるシギさんの代わりに玄関からリビングまでの電気をつけて回る。
「あーーっ、疲れたぁ」
冷蔵庫をバコっと開けて、缶ビールをグラスに注ぐ。
俺、これ上手いんだよねぇ。
バイトで鍛えられた必殺技。
その名も、缶ビールを100倍上手くする注ぎ方。
あとタッパーをチンして俺が予約炊飯した米を丼によそって。
「あちち、あちっ、」
シギさんに鍋掴み買おうつったら、要らねぇって言われた。
要るくね?
熱ぃって。
「腹へったぁー。」
これは昨日の残りっつーか、俺がバクバク食うから、何個か取り上げて今日も食える様にしてくれた唐揚げ。
シギさんの唐揚げマジで美味いンだよな。
あとこれは、俺が昨日作った豆腐と豚肉とネギをすきやきのタレで煮た奴。
温まって皿に乗せたとこでシャツの袖とズボンの裾を曲げたシギさんが入ってきた。
「光輝。」
「んぇ?」
俺がこの家に引っ越す前まで、定期配達してたペットボトルのお茶は、今俺の為に冷蔵庫に入ってる。
飯食う時はやっぱ緑茶じゃねぇと食いずらいんだよな。
俺が言うのも何だけど、コーヒーとビールばっかじゃダメだと思うんだけどな。健康に悪そ。
「明日出掛けるぞ。」
「うっす。どこっすか?」
「行きゃ分かる。」
「ふーん?」
俺も…シギさんも仕事は持ち帰らない主義だし。
俺は家ではダラダラ動画見てたい。
映画でもゲーム実況でも良い。
シギさんだって見るとも無しに俺が点けたテレビをまたビールを飲んで付き合ってくれる。
やっぱアクション系が好きらしい。俺も。
最後のド派手な爆発シーンで“だよな”ってなってスッキリしてぇ。
なのに最近は、ずーーっとスマホを見てはなんかメモしてる。
そのメモしてる紙が方眼だから、初めは仕事かと思った。
何してんの、って聞いても“ちょっとな”つってはぐらかされる。
資材の一覧かと思えば違うし、仕事では見た事無いメモの取り方だった。
ちょっとって何だよ。
俺は競馬とか分かんないけど、なんかの順番とアルファベットが書いてある。
偶に、俺も見たことある様な…例えばIVはローマ数字の4じゃなくてアイボリーの略だし、LUはブルーの略だ。
あと、元素記号みたいなのもある。
AgとかTiとか。
銀は塗装で使うし、チタンは変な形の屋根に使う。
軽くて丈夫で腐らない。海水にも強い。
俺は、初めてTiがチタンの略だって知らなくてシモいのしか浮かばなかった。
業者資料を聞きながら、やっとこいつの読み方がチタンだって分かった時はTiの上に"チタン"ってメモしたくらいには物を知らない。
だってこんなん。
バーのネェさんに見せたら絶対ぇ手ぇ叩いて笑ってくれるか、ガチの職人が出てくるに決まってンだよ。
軽くて丈夫なのは良いかもねブラブラしなくて、とか言いそうだなっ。
そんで、問題は硬さだろ。
結局の所、男は長さでもテクでも無く硬さ。
まぁ、多少は長い方が良いよな…。
その点シギさんのはー…ちゃんと硬ぇし長ぇ。
あと、根本の方が太くなってんのもいい。
腹ン中に入ると、突くっつーより捏ねて揉まれてどんどん広げられてンのが分かる。
広がったナカを太いのがもっと奥まで来ると、顎がカタカタ鳴るくらいいんだよな。まじで、この人のチンコはエロい。
流石に硬さはチタンの方が強いよな。
あいつら金属だし、感覚ないもんな。
つーか明日どこ行くんだ。
こういう時時に限って、シギさんが持たせてくれたカギは玄関に置いてきた。
鞄に入れっぱなしにするのが嫌で、だからってどっかやるのも無くしそうで怖ぇから。
シギさんがトレー用意してくれた。
ここに置け、つってくれたのに…あれ、もう持たなくて良いって事じゃねぇよな。
だよな。
なんだよ、俺すげー…かっこ悪ぃ。
ーーーーー
「あ。」
畳んだ洗濯物を運ぼうとして、ぽてっと落ちた。
「落ちたよ良悟」
ありがとう、そう言って受け取ろうとして手が止まる。
「ん?どうしたの」
常日頃思ってる。
コイツ顔が良い。
落ちたのは俺のパンツだった。
へらっとした顔が俺の異変に気付いてじわっと変わる。
目が熱く揺れて俺をじっと見てる。
それで、何時もの甘いどろっとした声で言うんだ。
「りょーご♡」
「なに、」
「上から見下ろす俺はそんなに好き?」
目が泳ぐのがわかる。
偶々だ。偶然、立ちあがろうとした和己が膝を付いていて、その手元に洗濯物を運ぼうとしてる俺のパンツがポテっと落ちただけ。
ニコニコしながらその脳味噌では俺にどんな酷い事をしようか考えてるの、知ってるんだからな。
そうだな。
俺の出来る選択肢は二つ。
一つ、このまま素知らぬふりをしてパンツを受け取る。
二つ、大人しく白状する。
先ず一つ目は、俺ひとりが恥ずかしい目に遭う。
そのままパンツを受け取って寝室か陸也の部屋で叫び出すほどの羞恥心に悶える事になる。絶対そうだ。顔が良いだけなのに…っ、!
二つ目も多分俺だけが恥ずかしい、
よし、三つ目にしようーー。
洗濯物を片手に持ち替えて、和己が差し出すパンツの向こうの、手首をガッチリ掴んで腰を屈めてちゅ、と恥ずかしいくらい軽い小鳥さんのキスをした。
しかも、ほっぺに。
「ありがとう王子様ー…♡」
俺だって恥ずかしい、口の端が上がるのをどうやったって隠せないけど、ピッとパンツはひったくって取り戻したし、洗濯物を両腕でぎゅっと抱き締めてやる。
例えば。
ここにある陸也の服と和己の服が大事な大事な宝物みたいにして顔を埋めてすりすりして見せる。
実際、これは俺の宝物だから間違いない。
二人の物なら洗濯物だって好きだし。
洗濯物じゃなくても好きだ。
「ふへっ。」
洗濯物越しに目が合った。
やっぱり、恥ずかしぃ、こんなの照れずに居られない、
「か、っわィー…。」
「知ってる。♡」
ひらっと手を振ってリビングを出る。
今頃は顔を真っ赤にして心臓でも握りつぶしてる、と思う。
例えキラキラのイケメンが、花束とか指輪じゃなく、可愛がってる男のパンツを握って寄越したとしても和己はキラキラで顔が良い。
それに、俺を好きだ。
だから、こんな恥ずかしいことも出来る。
もうすぐそいつの誕生日なんだ。
これで三人とも28歳になる。
もうすぐ、おめでとうって言えるっ。♡
ーーーーー
「何っすかソレ。」
「お前に言われたかねぇな。」
なるべく派手な色の上着着て来いって言うから、俺一張羅出して来たのに。
「目がチカチカする」
「シギさんこそ、そんな派手なの持ってたンすね。」
俺は、グラフィックアートがべっとり描いてある奴。
んで、シギさんは真っ赤なブルゾン。
一応肩周りは黒だけど、この人赤とか着るんだな。
似合ってる。カッケェ。
「寒くねぇのかそれ」
「結構温いっすよ。それに俺寒いのは平気っス。」
「…いいか、」
「今日はどこ行くんスかっ?」
「徒歩じゃ行けねぇとこ、だな。」
「バス?」
俺は的外れな事を聞いたらしい。
シギさんがフッと笑って、何時もみたいに違ぇって言う。
自分の靴と序でに俺のボロボロのランニングシューズを持って、俺より先に玄関に立って言う。
「カギ持って来いよ。」
「う、す。」
靴、買いに行くのか。
俺とシギさんの靴を?
そう思ってた数時間前の俺を、今は殴りたい。
もっとちゃんとこうっ、もっと…っ、よく見りゃあ分かったじゃねぇかっ、!!
2時間くらい車で走って、駐車場で降りた。
「靴、履き替えろ。」
俺にそう言いつつ、自分もトレッキングシューズに履き替えてた。
漸くなんかおかしいな、と思ったのはこの辺で。
そう言えば、トレッキングシューズ履いてンのも派手なブルゾン着てンのも初めて見たなって、思ったんだ。
どう見ても、これかから靴屋に行こうって雰囲気じゃねぇ。
「折角だからな。」
「登山でもすんの?」
俺、流石にこの靴で山登りはした事ねぇよ?
「散歩だ。」
「へ?」
「坂が多いからな、気を付けろよ。」
「ま、待てってば、早ぇって」
スタスタ駐車場を出ようとするシギさんを俺は慌てて追いかけた。
「こ、れ…っ、結構キツくない、?」
「だから言っただろっ、」
大の男が二人してフーフー言いながら長い坂道を登る。
途中に立ってる看板で、ここがガチめのハイキングコースだって知った。
「は…っ、デートが、運動会になってンじゃん…っ、」
「お前、バテるの早くないか、俺より若い癖に怠けてんのか、」
「そう言うっ、あんただって、息上がってンの…っ、つーか、俺中距離なんだってば、」
「走ってねぇだろ…っ、」
「走ってねぇけど、登ってンじゃん…っ、登山になってンじゃん」
聞けば、何時もは上まで車で行くらしいい。
何時もって事はここは通い慣れた場所って事だ。
そんで、俺の趣味に付き合って散歩っつー登山並みのハイキングに付き合ってくれてる。
俺、こんなアクティブなデート初めてだわっ、
息切れるし、汗掻いて足はキチぃのに楽しい。
「ああ、やってんな。」
途端、立ち止まったシギさんが上を見た。
俺もつられてコンクリの先を見てた目線を、空へ向ける。
そこには、派手な色の気球が上がってた。
「気球ー…じゃない、あれ」
「パラグライダー。」
それって、あんたの趣味じゃん。
もしかして、これってマジで本気のデートなんじゃねぇの、
数時間前の俺を殴りたいなんて言ってごめんな俺。
だってシギさんがこんな事してくれるって、思わねぇじゃんっ、?
やばくね、すごくね、マジで綺麗じゃん。
だって、見てみろよっ、!
「すげぇー…っ、マジで空とんでるっ!」
「ふっ、ははっ。」
「もしかして、俺も飛べんのっ?」
「インストラクター付きならな。飛ぶか。」
それは、すげぇ。
俺も飛べるなら、やってみてぇ。
「… …そのインストラクターって、シギさんじゃねぇよな?」
「流石に無理だな。」
「つー事は、あのオレンジの人みたいに俺は誰かの股間にくっ付いて空飛ぶンすかね。」
「言う程くっ付かねぇが。まぁ初めはそうなるな。」
「… …もしかしてシギさんもアレやったンすか。」
「やったな。」
「俺以外の男とくっ付いて、空飛んだンすか。」
「山から飛ぶ時は流石にな。」
「やまっ、!?上手くいったンすか、!?」
「ああ。面白かったな。」
それは何より。
楽しくなきゃ続かねぇよな。
確かに、空は飛んで見てぇけど。
「俺、高いとこムリなんすよね、」
だから知らねぇインストラクターとくっ付いてお空飛ぶのは、かなり恐怖心がある。
「けど、あんたとなら。飛んでみてぇ…。」
んなカッコ悪ぃ俺にシギさんは、またフッて笑う。
「そうか。」
その声が楽しそうだったから、こん位の小さい恥を晒した甲斐が有ったかも知れねぇ。
「ほら、行くぞ。」
二人で、ハイキングコースの終わりまで歩いた。
開けた丘の上には派手な色のパラグライダーが、マジで空いっぱいに飛んでた。
「すげぇー…でけぇ…」
遮るものが無い斜面と空を飛ぶって、想像も付かない位楽しそうに見える。
「ハジメさん、」
「あ?」
「ここ、また連れて来てくれねぇ…?俺、またこの景色が見たい。」
「ああ。分かった。」
朝イチから出掛けて、昼過ぎまでパラグライダーを見てハイキングコースをまた駐車場まで戻ってたら、昼がドライブスルーのハンバーガーになった。
つくづく、こういうデートは初めてだなと思った。
大体は、買い物デートとかテーマパークとか映画館とか水族館の後にちょっと良い飯食いに行くだろ。
ガッツリ運動して食うハンバーガー、美味ぇわ。
途中、道の駅で休憩してアイス食って、オススメの桃ジュース飲んだらバカ美味かったから買ってたら、その隣でシギさんがビールを買い込んでた。
見た事無い奴だ。
「此処にしか売って無ぇんだよ。」
「へぇ。」
それにしちゃ、随分な量買うな。
この人プリン体とか気にした事あんのか。
…その割に、腹出て無ぇな。
出て無いどころか、引き締まってるー…あー触りてぇ。
そんな事を考えてた筈が、気付いたらシギさんが握るハンドルの左腕を眺めながらコクン、と首が傾いて気絶するみたいに寝た
ーーーーー
歩かせて正解だったな。
時間的には丁度だが、どうやったてコイツが日和るのは目に見えてた。
飛ばしてやれねぇのは悪かったと思うが、俺のライセンスじゃお前のインストラクターは引き受けられねぇ。
本当は、辞めるつもりで見に来たんだ。
最後にコイツと見納めて、キツめのハイキングコースに付き合わせてそれで終いの筈だったんだ。
それなのにコイツは。
『ハジメさん、』
『ここ、また連れて来てくれねぇ…?俺、またこの景色が見たい。』
ンな事言われたら、辞められねぇじゃねぇか。
無意識か知らねぇが、名前まで呼びやがった。
正直、この危ねぇ趣味のせいで捻挫も骨折も突き指もした。
偶に洒落にならねぇ様な事故も起こる。
それでも辞められなかったのは、コイツの言う遠り空が飛びたかったからだ。
子供じみた夢だと思うが、ガキの頃はパイロットになりたかった。
それがふと、パラグライダーで飛ぶその足元に目が行った。
上から見渡す限りの家々が立ち並ぶ景色だった。
その一つ一つに車があったり、庭があったり、二階建て、平家。
色んな家が見えた。
その家一つ一つに人が暮らしていて、毎日出たり入ったりを繰り返してる。
そんな当たり前の事に気付いた時、良いな、と思った。
飽きの来ない毎日が良い。
なら、飽きの来ない家が良い。
毎日出ては帰ってくる場所だ。
安心できる空間が良い。
何処で何をするのか、暮らしがずっと先まで見通せる様な家が良い。
そんな家が作れたら、俺は楽しい人生が生きられるだろうとそんな事を思ってた。
青臭い夢だが、無いよりはマシだろ。
実際は、馬鹿で融通の効かない仕事人間になっただけだったが。
それでも仕事には誇りを持ってる。
それくらいしか無いとも言えるが、今はコイツが居る。
そうだな。
飛ぶのは辞めても、あそこにまた通うのは良いかも知れねぇ。
コイツの散歩にもなる。
自分でも意外だった。
一人で黙々と歩く散歩やらハイキングやらマラソンやらの何が楽しいんだと、俺ひとりなら思って所だった。
それなのに、息を切らしながら隣を歩くコイツは、可愛かった。
よく喋る口で、一向に黙る気配が無ぇ。
朝イチから叩き起こしたせいもあるだろうが、半分はそのうるせぇ口のせいだ。
「ったく、グースカ寝やがって。」
これも、計算の内だと言ったらお前は俺を嫌いになるか。
ーーーーー
お、れは…今、場違いなトコに来てる。
うっかり眠りこけた俺は、シギさんに起こされるまでここが何処かも知らねぇまま、言う通りにスニーカーに履き替えて眠い目を擦りながらシギさんの背中に着いて、どっかの店に入った。
「これと、こっち…あとこのシリーズの奴をお願いします。」
「な。なぁ、シギさん・・・」
「あ?」
「ここ、どこー・・・」
「宝飾店。」
「ちっ、げーよ、!なんで、俺ら以外誰も居ないンだよ…っ、」
「そういう時間帯だからだ。」
「え、ほんと。」
「ああ。余所見してる暇無ぇぞ。」
「なんで」
「お前にやりたい物が出来たからだ。」
お、れだって流石にあのカーテンの向こうから何が出て来るのかは、想像が付く。
最悪ピアス。最高指輪。
そんでどうみたってピアスって雰囲気じゃねぇ。
「あ、のさ…俺、こういうとこ初めてなんだけど、」
「俺もだな。」
「なんでンな慣れてンだよっ、」
「散々ネットで見たからな。」
「ネット…っ、なんで?」
「良いから黙ってろ。見るだけだ、決めるのはまだ先で良い。」
そうは言っても、こんなキラキラ金色だの銀色だの眩しい店でどうやって寛いで落ち着けって言うんだよ。
出してもらったコーヒーにすら手を付けられない程、緊張してるっつーのに。
「な、なぁ。」
「なんだ。」
「俺、なに選べば良いの…、」
そう言い終わるかどうかのタイミングで、ニコニコのお姉さんが黒のトレーにズラッと指輪を並べて運んできた。
「これだ。候補がこれだ。この中から選ぶか、気に食わないなら好きなのでも良いぞ。」
俺は、カッスカスの声で答えるしかなかった。
「ぅー…っ、す」
ーーーーー
結局、あれだけずらっと並んだ指輪からたった一つを選ぶのは流石に無理があった。
写真だけ撮らせて貰って、あとは家で考えてきますってシギさんが切り上げて連れて帰ってくれた。
その時に、参考までにってパンフレットをくれた。
これまで此処で指輪作った人の写真が載ってるらしい。
それは、本気で有難い。
家に着いてもまだ緊張して、漸く落ち着いたのは外が真っ暗になった夜で、風呂上がってからだった。
因みに、どんだけガチガチだったかっつーと、人生で三度あるかどうかの間違いを犯した位、緊張してた。
髪を2回洗った。
1回目はちゃんとシャンプーを使った筈だ。
んで、ボーッとしてたから2回目、またシャンプーしたのかと思いきや泡を流した時に髪がギッシギシになった所で気付いた。
「これ、シャンプーじゃねぇ…」
二回目の洗髪はボディーソープだった。
どんだけ動揺してんのかがよく分かる。
もうそっからは只、無心で体を洗ってやっとの思いで風呂から上がった。
「なぁ…シギさんー…見て。」
「なんだ」
「俺の頭、ボディソープでギッシギシんなった」
「なんでだっ、」
「ハジメさんが指輪なんか見せるからだろ…っ、マジで緊張したんだからな」
「もう良いだろ。4時間も前だぞ。」
「まだ4時間しか経ってねぇよ…」
ドカッと、テーブルの角に座る。
もうテレビを見る気分じゃねぇ、けどハジメさんの側には座りたい。
「やっぱシルバー多い?」
「ああ。」
丁度、貰ったパンフレットをパラっと捲ってるとこだった。
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「だろうな。」
「はぁ?」
「千田の嫁さんが教えてくれた店だからな。」
「いつ、」
「先月呑んだ時、千田を迎えに来ただろ。」
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千田だって確証があったのは、その指輪の柄が特徴的だったのも有るけど、内側に刻印されてるデッカイ文字だった。
「顔写真は載せて無いんだな…」
よくよく調べてみれば、そういう事に限り無く配慮した店だったらしい。
あの時間に俺たち以外に人が居なかったのは、あの店が予約制だったからだ。
それと、このパンフレット。
希望すれば写真も名前も出せる。
希望しなければ指輪だけ、イニシャルだけ、っつーのも有った。
これは、俺でも嬉しいわ。
幸せそうな同性カップルが並んで写ってる。
これを見られるのも、同性カップルだけらしい。
こういうの、良いな。
すげぇ励みになる。
パラパラ捲るシギさんの指をまた眺めながら、少しだけ申し訳なさを感じたりした。
この人を引き摺り込んじゃったな、
あー…でも、どうせノンケとは上手く行かなかったんだし。
俺が貰ってしまえば、それでチャンチャンって良い話になんねぇ。
良いよな。俺がこの人幸せにしても。
だって、”結婚“に向いてなかったンだろ。
じゃあ、俺と恋人みたいな人生送って来ンねぇかな。
今日みたいにさ、デート連れてってくれたの本気で嬉しかったしー…あ。
待って
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俺は持ってきてたお茶をグビっとのんで言う。
「俺、この人知ってるっ。」
「… … なんで知ってる、」
「八代さんとこのスタッフさんっすよ。えーっと、確か、ヨノカさんっ。マジで美人っすよね。特にこの右頬の黒子が笑うと可愛いっす。」
俺は、気付かなかった。
シギさんの表情が何時になく険しくて、痛そうな顔をしてたのに。
気付いたのは、あの人が風呂から上がって来てからだった。
ーーーーー
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