【R18】 二人の主人と三人の家族

mimimi456/都古

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本編

4月17日

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鞄からネギが出てる奴は見たことあるけど、桜の枝が飛び出してる奴は初めて見たな。
履修的に多くの生徒が受ける講義室の日当たりの良い席から、一つ開けてそいつは座ってた。

ーー良いな。

ふらふらと吸い寄せられる様にそいつの後ろに座ると、蕾が見えた。

「綺麗だな...。」

「ん?」

「ぁ、ごめんっ、」

最近独り言が増えて、まだ制御し切れない。
二人暮らしの部屋は、二人して学生で二人してバイトもしてると一人でいる時間が沢山有る。
誰にも見張られず、誰にも邪魔されない一人の時間の使い方は初めてで。
ふと這い寄る恐怖に怯えつつ、浮き足立つ気持ちも半々で。

しない事、を務めてる。

だからなのか、不安を誤魔化す為でもあり。
思考を整理する為でもあり。
でも、同居人がペラペラうるさいせいも、絶対あると思う。

「いいや。誰かに突っ込んで貰いたかった。見たところ俺しか居ないだろ?」

「んっ、ふ、確かに。結構目立ってたけど、今だけだよ。多分もっと人増えるし。それ、綺麗じゃん。」

「貰ったんだ。」

「一コマだけ見てても良い?」

許可を得て、今度はひとつ隣の席にズレた。
正面の蕾はたっぷり日を浴びて、何時開くんだろ。

教授が来るまで少し話して、そいつの学部と名前を知った。
建築科 1年 千田陸也

「絶対、時間割ヤバいだろ、」

ーーーーー

「ただいまー。」


ガサッとビニールの音がする。
手に持った荷物二つ分と、殆ど何も入ってない鞄を持ってリビングへ。

「おかえり良悟。」

「ただいまぁ、」

鞄を置いて荷物は持ったまま、和己にふらふら寄って行って膝立ちでハグ待ちされたから、何も考えず膝をついて唇に吸い付いた。

きもちぃ。

... もっとする。

吸い付いた唇の感触がストレスを溶かして行く。
6回くらいキスして、腰を抱かれてハッとした。

「ぁ、待った、」

「いーや、だ♡」

「んぅっ。」

ぬるっ、と忍び込んできた舌が柔くて熱くて馴染んだ味がして、くらっとする。
このままキスして、気持ち良い事しても良いと思う。
だって気持ち良い。

「はぁ...♡」

とろとろの舌を絡め合って、イタズラに吸い合って、唇で食むのもすごく気持ち良い。

「りょーご」

「んぅ。」

「お花、生けなくて良いの?」

「ーーあっ、!?ちょっと、行ってくる...離せっ!」

全然解けない腕を、ぐりぐり振り解いて慌てて洗面台へ駆け込んだ。
荷物の一つは、スーパーの端の花屋で買った物。
もう一つは、途中の百均で買った小さい花瓶3つと、真っ白な小皿と防水のラベルシール。

パチパチ水切りして、枝を差していく。
まだ蕾の所の枝と少し開いてる所の枝を選んで入れたら、残りは別の花瓶に。

それでも余った花は皿に乗せておく。 
まぁ、こんなもんか。とりあえず仮で。俺、素人だし。

「和己ーっ」

「なぁにー?」

「見て欲しいお願いが有るー。」

花瓶にはどれもラベルが貼って有った。
Have a nice day.The scent of spring. Ville des fleurs.

「なぁに、良悟?」

「これ、なんとかなる?」

「可愛いね。花瓶の形も良いよ。これで完成?」

「ん。でももう一回出して、ラベル剥がして同じ様な感じに入れ直す。」

「良いね。30分くれる?」

「... ... 急がなくて良い。」

「良いよ。こんなに楽しい気分転換無いじゃん。」

さらっと腰を抱かれて肩がくっついた。
ドキッとしてる間に脇腹を親指がさりさり撫でて、仮の見本で差した花をじっと眺めてる。

そんなに神経に見なくても、とか。
他に優先させるべき仕事は無いのか、とか。
何ならラベル無しでも良いんだけど、と思ったけど。

本人が楽しそうなら、良っか。

「じゃあ昼ご飯作る。リクエストは?」

「それが、冷蔵庫何も無いんだよねー。最悪、今から買いに行こうと思うけどどうする良悟?」

「何とかする。晩御飯は買い出し行った方が良いかも。」

「オーケー。じゃ、30分後ね。」


30分。
それは、この花瓶のラベルがどのくらい剥がれ易いかによる。
こういうのは大体、途中でベリベリになって紙だけがくっ付く奴だ。
それを剥がして花を入れ直して、昼ご飯作って30分で足りるか。

ギリだな、

ーーーーー

危なかった。
和己がうどんもパスタも無くて、とりあえず米だけ炊いてくれてなかったら昼ご飯無しになる所だった。

知恵をなんとか捻り出した結果、チャーハンが出来た。
こういう時に限ってほんと何も無い。
米、ネギ、卵、塩胡椒とバター。

ウインナーの1本、コーン缶1個でも有れば良いのに。
変にレトルト一人分とかは有るの、何。俺だ。
おまけに卵も2個しか無くて、目玉焼きにするか一頻り悩んで中華スープを錬成した。

質より量だ。

和己に声を掛けて、ダイニングテーブルに運び終えた頃、部屋の扉が開いたらしく、プリンターが動く音がしてる。

「え、凄いね。二品出来てんじゃん。」

「頑張った。」

「チャーハンか、俺、思い付かなかったなー。目玉焼きと白ごはんで止まったー。」

「俺も悩んだ。」

「あと2分待って良悟。」

「うん?分かった。」


テレビを付けると、桜が見頃だと言ってる。
でも昨日は寒かったよな。
雨もパラパラ降ってたし。
場所によってはもう散った所、まだ半分は持ち直してる所、今から咲きそうな所があって。
もう少し、春を楽しめそうな感じだ。

買って来た花瓶は三つ。
その内の一つが、目の前にある。
キッチンカウンターで出来た料理を受け渡しする事は、殆ど無いけど。
こうやって物を飾るには良いスペースだ。

あとは、ラベルだけ。

「出来たよ良悟。」

「え、バスカーの帯じゃん、」

パッと見て楽しいと思うバスカーのボトルの真ん中の帯が、ラベルになってた。
色はピンクになってるけど、でっかくSの字が入ってる。
度数や量の数字が気温や日付になってたり、英語の部分が...なんか変わってる?

Halun of ubut ushi.
SAKURA oh ana mica fun show.

「くっ、ふっ、何だよ、これ...っ、花粉SHOWっ、!?」

和己がそのデザインを気に入って買ったウイスキーは、現物をまだ保管してる筈だ。空だけど。
俺と陸也がちゃんと味わって飲み干した。
和己は香りだけ。あと、子猫みたいにひと舐めして終わりだ。
下戸だから。

「何言ってんのりょーご、どっからどう見ても英語じゃん?」

「英語じゃないっ、ローマ字だろ...っ、くっ、ふ、でもっ、英語なの最後だけっ、合ってるっ、」

ラベルに騙されたらダメだ。ちゃんも見た方が良いっ。ニセモノだっ。

試しに1枚貼ってみた。
シンプルなガラスの花瓶がラベルを1枚貼るだけで、あっという間に雰囲気が変わる。

「ふっ、クソお洒落...っ、可愛い、」

駄目だ。つい見た目で騙されそうになるけど、ラベルをよく見てみろ。
桜、お花見、花粉SHOWだ。何ののSHOWだよ、もしかして花粉のかっ。

「色違いも作ったんだよ。紺色に桜色の文字とか、逆に黒にして桜の...」

何とかこうにか頑張ってチャーハンを食べ、スープを飲んだ辺りで、チラッとカウンターを見てお洒落な花瓶が目に入る。

吹き出しそうになるのを我慢したら、変な所にスープが入って行った。

「大丈夫?」

「だいっ、じょうぶ...っ、はぁ、ふっ、くっ、やっぱダメかも、花瓶見るだけで笑うっ、」

「ほらほら、冷めるよ良悟。それと、あとで陸也にメッセしてみよ?」

「んっ、ふ、っ、買い物?」

「そ。序でになんかさ、うどん食べたく無い?」

「食べたい。海老天、そばも良い。」


という事はつまり。
もし、陸也が早く帰れそうなら、俺は和己とバスに乗ってスーパーまで行く事になる。
それで、帰りは陸也の車で三人で帰る。
それは、少し前までは良いアイデアだと言えた。

「俺はどっちでも良いよ。今回は良悟ひとりじゃ無いしね。」

でも、俺はタクシーで行くって言ったんだ。
そう決めた。

けど、バスの方が安い。動く景色が見られるし。デカくてカッコいいし、ブレーキを掛ける時のエアーの音が好きだ。

陸也に会う為にバスに乗るのも、好きだ。
ワクワクする。

けど怖い。

「考えてみる」

「普通にこの後、二人で買い出し行くって言う手も有るからね。」

「ん。分かった。」

大丈夫だ。どれを選んでも良い。
自分で運転するか、二人でタクシーか、それともバスか。
どれにしろ、和己が一緒だ。
俺より100倍顔の良い男は、それだけで武器になる。

ここで逃げても別に誰からも怒られたりしない。
俺は、俺が安心出来るものを選んで良いし、挑戦したって良い。
どれを選んでも"逃げ"じゃない。

ーーーーー

皿を洗いつつ、洗濯物を畳む良悟がどうするのかを眺める。

俺は本当にどっちでも良いよ。
良悟がバスに乗れなくてタクシー代が掛かっても、構わないし。
もしバスに乗れたら、良かったねって言ってあげるつもりだけど。

クソ重い理想を言えば。
家の庭で勘弁してくれないかなぁーと思う。
もっと花でも木でも植えて、庭を散歩したり窓辺に座って足をパタパタ揺らして、季節の空気を吸って日向ぼっこでお昼寝して欲しい。

家から出なければ、俺の黒柴君は誰にも泣かされなくて済む。
でも、これは俺のエゴだし。

そんなのは良悟じゃない。

俺達の愛してる八木良悟はさ。
そろそろ、お出掛けしたいんじゃないかなぁ、と思うんだよね。
散歩好きだし。
土日に三人で家から外へ出掛けるのとは、違う。

ひとりの時間が好きなんだよ。
そして、必要なんだと思う。

自分で決めて、自分でやってみること。
走るバスの中から流れる景色を眺めて楽しむこと。
バス停で停まるたびに、周囲の建物を観察すること。

俺は良悟が自分の車じゃ無くて、態々バスですたすた出掛けてた日々を知ってるし。
俺が仕事で部屋に引き篭もってるのを、連れ出してくれた事が沢山有るのも覚えてる。
デートみたいで楽しいだろっ、て俺が選んだコーディネートで隣を歩いてくれたり、俺が好きそうな雰囲気の喫茶店を見付けて来たりする。

それはさ、俺のエゴで閉じ込めてたら見れない景色じゃん。
うっかり"お外は危ないよ"って囁きそうになる度に耐えたのは、それが俺達の良悟らしいと思ったからだ。

いくら好きなもので埋め尽くしても、家の中で遊べるようにしても、俺の黒柴君は外を散歩したいに決まってる。

例え、ほんの少しの嫌な事が有ったとしても。

だってそれが良悟だし。

ーーーーー

私用のスマホが鳴った。
それも妙な時間に。

一瞬過ぎる嫌な予想は、杞憂だった。
GPSの通知でも無く、良悟からのメッセージだった。
それに続く和己からの通知も。

「すまん、今日先に帰って良いか。」

「大丈夫っすよ。ね、新人ちゃん。」

「はいっ。何時もすみませんっ、」

新人は俺と後輩が面倒を見る事になった。
実質、見るのは俺だが。
ツーマンセルにひとり増えたお陰か、勢いと元気の余りある後輩が、最近落ち着いて来た様な気がする。

入ったばかりの新人に可哀想な話だが、定時で帰してやれたのは最初の2週間だけだった。

その後は、1時間残業。1時間半残業。
教えながらと言うのは、それだけで倍の時間が掛かる。
後輩と2時間残業だけはさせないぞ、と結託してはいるが。

どうだろうな。

今の内はさせてやれる事が少ないからな。
これにクライアントが着くと、話し合いが伸びて一向に帰れなくなる。
偶に色ボケたカップルを見ると、さっさと決めてくれと思わなくも無い。

有り難い事にこの新人、人と話すのが苦じゃないらしい。

話の切り上げ方も上手い。

残業も自分に時間を割いてもらってすみません、と言いつつ。
給料が良いのでこの会社選びました、と定食屋で暴露していた。

まぁ、それには俺も賛成だ。
残業代も出るしな。
俺が新人の頃はこんなに出来た人間じゃなかった。

あまり覚えてないな。
仕事のミスややって来た事は色々浮かぶが、自分の事となると。

ーーそうだな。

良悟に会いたい、と毎日思っていた。
家に帰れば会えるのに。
残業代が出るから、早く帰るという選択肢を捨てて、仕事を勧めた。

残念ながら、今程要領が良くなかったからそれでなんとか終わらせていた様な所も有った。
幸い、それで文句を言われる様な事は無かった。
人が少なくて俺が辞めたらいよいよ回らない、と言われていた時期で。

むしろ、アイツは見込みがあるぞ、と囁かれていたらしい。

今時珍しい熱心な働き者に見えたようだ。

残業の何が熱心なのかは、今でも理解出来ないが。
まぁ、すべきじゃないのは確かだ。
人に勧めたくは無いが、あの頃の俺には良いアピール方法だった事は間違いない。

しっかり、金も稼げたしな。

「八千代さんとデートっすか?」

「そうだなっ。」

あと少し。
もう少しすればキリが良い所まで行けるだろう。

「ここまで確認して切り上げよう。あとは明日しても、明後日しても同じだ。」

「はいっ。」

「分かる様にメモだけしとけよ。明日、俺のと合わせてみよう。」

「了解です。」

「じゃ、すまん。先に帰る。」

ボイスレコーダーでも導入したらどうだ、と思う。
そうすれば、一々メモにして記録して、言った言ってないにならずに済むだろうに。

いや、これは愚痴だな。
録音すれば、明日まとめられると言うのは本当なんだがな。
流石に難しいだろうな。
クライアントが嫌がりそうだ。


車に乗り、警備員に手を挙げてスーパーへ向かう。
今の所、追加のメッセージは来ていない。
無事だと言う事だろう。

GPSもバス停へ向かっていた。

「良悟へメッセージを送る。内容、今から行く、送信。」

気を付けて、と言うのを忘れたな。
和己が居るから大丈夫だろう。

アイツ、敬遠が上手いからな。

ーーーーー

何時もより遅い時間に乗ったバスは、高校生がいっぱいだった。
俺とも陸也とも違う高校の制服だ。
家を建てる条件だった。

俺達三人とも、知り合いが居ない土地で。

親の職場、親戚、同級生、色々考えて選んだ場所だ。
だから和己のお兄さんが和己に辿り着けたのは、本当に奇跡だと思った。

場所は違っても、変わらない物も有る。
好きな物、好きなやつ、好きな思い出とか。

「陸也っ」

「どうした。うどん食い過ぎたか。」

「違う、」

「なんだ。」

「桜の枝、飾ったんだ。」

ハンドルを握るコイツはいつまで経っても格好良いし、後部座席で船を漕いでる鼻水ぐしゅぐしゅのやつも可愛い。

薬が効いて眠いらしい。
花粉症のくせに、って言ったら、花粉症でも、お店のうどん食べたいじゃんって言い返して来た。

それはそうだ。

「懐かしいな。花屋って呼ばれたやつか。」

「そう。」

「だからネギ買ったのか?」

「半分はそうかも。暑くなる前にもう一回、キムチ鍋食べようと思って。」

「エアコン効かせて食べても上手いぞ。」

「あれは身体に悪い気がするからダメだ。」

「確かになっ。」

建築科の事は知らないけど、次に講義が一緒になった時、陸也が話してくれた。
あの日、気障ったらしく桜の枝を鞄から出して歩くガタイの良い男は、どっかの花屋の息子だと思われたらしい。

それであだ名が、花屋のリクになったらしい。
楽しそうな学科だった。
購買で、やたらとボンドやら発泡スチロールを買い込む変な人達だと思ってたら、あれは建物の模型用に必要らしかった。

もう諦めて真っ白な発泡スチロールの小さな屑だらけで歩く人も居たな。

「キスしたいな、良悟。」

「運転しろよ花屋さん。」

「後ろは写真屋だぞ。」

「その写真屋さんが面白いラベル作ったのも、見た方が良い。」

「面白い?」

「んふっ、そう、まじで面白い、ズルいやつだった。」

「楽しみだな。」


バスにはちゃんと乗れた。
怖かったけど、学生ばっかで変な人は居なかった。
タクシーにするって言ったけど。

また乗ってみたいかも知れない。

「和己ーー起きてー」

「無理そうか?」

「俺、鍵開けて荷物運ぶよ。」

和己が言ってくれなかったら、そんな事思いもしなかった。

あ。
空気清浄機も回した方が良いな。

「起きたー?」

「半分だな、」

「俺も手伝う。」

「いや、ドアを閉めてくれ。」

「ふっ、それカワイソーだろ。」

「本人の希望だからっ。」


それなら仕方ない。
和己は常々口煩く宣言してる事がある。

絶対に俺をお姫様抱っこするな、だ。

代わりに、俵担ぎだ。
肩に乗せて頭が地面に近くなる。
頭に血が登って可哀想なのに、それでもお姫様抱っこよりマシらしい。

「おかえり陸也。」

「ああ。お疲れ様良悟。頑張ったな。」

影が降りて来たから、つい止まってキスを受けた。

「んぅ。」

「ただいま良悟。」

唇が合わさったまま、ただいまを言われるのは好きだ。
甘くて熱くて、安心する。
けど、ひと一人俵担ぎする男とキスしたのは、流石にコレが初めてかも知れない。

「早く下ろしてやれよっ、ふっ、くっははっ、」

「今降ろす、すまん、和己。大丈夫か?」

大丈夫も何も、そいつは爆睡してた。
風呂は無理そう。

「陸也ぁ。」

「なんだ?」

「一緒、風呂入る?」

「良いのか?」

「沸かしてないから、シャワーだけど。むしろ都合良いかなって。」

何の、とは言えないけど。
頑張ったご褒美を少しくらい貰ったって良いだろ。

「可愛い顔だな。先に行っててくれるか。和己を寝かせてから行く。」

「パジャマ持って来る。」

「あぁ、ありがとう。」

完璧に寝落ちした和己は、今度こそお姫様抱っこされた。
本人に意識が無いなら、問題ない。
というか、今更だ。
和己が知らないだけで、もう結構な数お姫様抱っこされてる。

「今日、良い日だったな」

ほんとは会社で嫌な事が有ったんだ。
憂さ晴らしで560円の桜の枝を買っただけなんだけど。

こういうのも、偶には良いかも知れない。
まだ蕾だから、咲いて枯れるまでは楽しめる。

あと2日行けば、休みだ。

と、その前にもう少しだけ。
今日を楽しみたい。

「良悟。」

風呂場に入って来た陸也は、すかさず俺を抱き上げて洗面台に乗せる。
焦れて、少し強くなるキスを味わいながら服を剥いでいく。
ボタンをひとつ外す度にどんどん熱が上がる。

「はぁ...っ♡」

「もっと、口開けてくれ」

膝を開いて、足先で陸也の腰をなぞる。

「桜、綺麗だな」

「ん。」

「お前と花見がしたかったんだ、」

「出来た?」

「あぁ。良い眺めだ。」


広めの洗面台は、こういう事の為に作ったんじゃ無いけど。
忙しい陸也と花見が出来たなら、やっぱり今日は良い日だ。

「もっと、陸也」

「ああ。」
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