【R18】 二人の主人と三人の家族

mimimi456/都古

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本編

3月14日 (1

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「何コレ。」

「首輪だよ良悟。」

「違う、そうじゃなくて、この。」

「デッカイ鈴ね。可愛いでしょ、音もかなり小さくしたんだけどどう?」

仕事から帰るや否やリビングに呼ばれ、座ったローテーブルに置いてあったのは紐で編んだ鈴カステラくらい大きい鈴付きの首輪、だった。

それに、見覚えのある物が混じってて"何か"意図を感じる。

「これね紐は百均なんだけど、この間に入ってるのは、この前良悟が頑張って切らせてくれたリボンレースなんだよ。」

「んぅ。」

「それで、紐ってさぁ編むとロープになるんだよ良悟。」

「ロープ。つまり、これは。」

「そう。これは"俺が編んだロープで出来た首輪"なんだけど、どう?」

紺と白の紐の間にちらちらと見えているのが薄く色の付いたレース。
このレースにマジックテープを縫い付けて何を縛められたか、忘れた訳じゃない。3週間くらい前だ。

けど、こんな所にもレースを入れたがるのか。
やっぱりコイツ、変なこだわりが有るし、"紐を編んだ首輪"と言う認識をさせたくないらしい。

あくまで、"ロープで出来た首輪"。

「他で買っても良かったんだけどね。可愛いの沢山有るし。」

だけど、と言われスルリと首を撫でられた。

「んぅっ、」

「俺の事で、最近不安にさせちゃったからからね。触ってみて。」

「ん。」

「良い出来だと思うよ。しっかり編んだからねぇ。」

確かに。
硬いし、緩んでる所もない。
自分で編んでこんなに出来る物なのか。
やっぱり器用な奴。
鈴もデカい割に、耳が痛くない音がするけど、この留め具は何だ。
見た事ない。

「鈴はねぇ、中に少し布を詰めてるんだよ。若干籠ったような音になってるけど、気になる?」

「まだ分からない。これは?どうやって留めるやつ」

聞くと教えてくれた。
けど、この金具...俺上手く使えなかった。
ツマミがちっちゃいし、なんか...留める範囲狭いし、ちまちましてる。

「ふぅん、引き輪苦手?」

「ヒキワ。」

「試してみよっか。」

和己が後ろに回って、リンリンなる鈴の音はやっぱりちょっと柔らかい。
うるさくなくて気に入った。

「あ、ちょっと、これ」

「なぁに?」

「取れない...っ、」

「だから。なぁに?」

思わず息が止まる。
純粋に"ああ、美味しい"と思った。
甘い声に乗る、ずっしりとした重みも、それを味わせるようにじっくり俺を観察する視線も。

甘くて濃くてすごく美味しいっ。
綿飴と板チョコを齧ったみたいに、喉がコクリとなった。

「俺が編んだロープで、俺が細工した鈴と、俺にしか外せない留め具で出来た首輪が、外せないと何か困り事が有る良悟。」

「な...ぃっ、♡」

俺に許された答えはひとつだった。
じうっ、と痺れた指と、震えた膝が無意識に待機姿勢を取らせた。

「おすわり出来たの可愛いね、上手♡ 今日はこのまま過ごそっか。」

俺さえ呆れる程の独占欲。
それも拘りが強い。
レース一枚、言葉一つにも意味を持たせる男だ。

でも、そうは言っても、これはホワイトデーのお返しで。
俺には選ぶ権利が有る筈だし。何より。

「その言い方じゃ俺はノらない。」

「ふぅん?」

「やり直して和己。」

「おすわりしてるクセに。生意気っ。」

俺は元々くちが悪い。
生意気だし、挑発するのも好き。
好きな男を興奮させる為なら、尚楽しい。

「良悟。」

この身体には価値がある。
俺に価値を付けた男に、後から腹と胸をキツく抱き締められると...とてつもなく良い気分になる。

「見たいんだ良悟。お前が俺のものだって所、見せて欲しいなぁ。」

そっちこそ上手で可愛い。
熱い吐息、強い拘束、甘えた声で脅して来る。

「良いよ。」

ゆるっ、と首を振ってみせると鈴がリンッと鳴った。

「気に入ったこれ?」

「うん。見て、俺が動くと音がするっ。」

「見てるよ良悟。」

これ楽しい。
ゴロンっ、リリンっ、リンッ。
楽しいな。

「ありがとう和己。」

「どういたしまして。」

ーーーーー

「出遅れたな。」

何をしても俺としては分が悪い。
クライアントが居ない間は定時で帰れるんだがな。
それでも、一日に近い時間を側で過ごしてやれない。

名札、ではないか。ドッグタグを贈りたかったんだが。
その前に可愛い物を贈られてしまった。

「陸也のも楽しみにしてるっ。」

「そうか?」

「当たり前だ。」

「じゃあ、別のにするか。」

用意周到で居ることが俺を安心させる。
みっともない臆病な性質だと思っていたが。
喜ばせる相手が居ると、この性質も悪くない。

「両方でも良いっ。」

「ふっ、欲張りめ。」

別に欲しい物なんて無い、と言う割に。
どっちが欲しいか聞けば、両方が良いと言う。
好きな物は全部欲しい。
その性質が好ましく、愛おしく、狂おしい。

俺とも相性が良い。
当然、この首輪を贈った男とも。

「実は三つ有るんだが、二つで良いのか?」

「み... ひとつで良いっ、無駄遣いはダメだと思う。」

「無駄かどうかはお前が決める。」

それにしても。
紐に鈴を付けた姿は、可愛いな。
狛犬の首輪か?

首を傾げて何か悩んでる。

「Bにする。」

「Bか。」

咄嗟に思い浮かべた贈り物を右からABCにする。
その中で良悟がBと言った物を、ホワイトデーにするか。

「あとでな。」

「ん。」

ひらっ、と手を振って玄関から離れていく。
早く着替えて来いよ、と声を掛けながら。

「それにしても、Bか。参ったな。」

ーーーーー
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