【完結】【R18】 二人の主人と三人の家族

mimimi456/都古

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本編'24

3月11日

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流石に28にもなれば。
自分の厄介な性質を少しは理解してくる。

相変わらず夜中にバチっと目を覚まし、襲われる罪悪感に胸が締め付けられる。
けど、今夜は違う。
謝る事に怒りを覚えた。

俺は何も悪くねぇっ、

先週から異変を起こした身体は、今日もおかしい。
けど、そんな事は想定通りだ。
陸也が居てくれて助かった。励まして薬を飲ませてくれた。
そしてこの異変は決して、和己のせいじゃない。

「俺は、」

一部に対してストッパーが緩い。
大人しげな顔をしているとよく舐められるけど、俺の選択肢の中にはいつでも、殴って言う事を聞かせると言う項目が有って。

怒鳴り続ける事は、躾であると確信を持って言える。
不機嫌を撒き散らすのは、相手に分からせる必要が有るからだと考え、誰のせいで俺が、不機嫌なのか教えてやるべきだと。

そう考える事が可能な脳みそを持っている。
つまり、この瞬間。
何時に無く自分殴り付けたい衝動に襲われて、拳をグッと握る。

俺は俺を罰せられる。
言う事を聞け、従順になれ。
俺は謝って謝って謝って挙句、情け無く泣け。

その為に、一発殴られるやべきなんだ。
でも。
でも、だ。

「ふ...っ、は、ぁ...っ、ふぅっ、はぁっ、落ち着け」

落ち着け、俺。
殴り付けたい衝動に従ったとして、俺のこの身体が俺だけの物では無いと言う"事実"が有る。

落ち着け。落ち着け。落ち着け、間違えるなっ、
俺の身体は、俺の髪は、俺が殴り付けたい頭は陸也がくしゃっと撫でる為に有って。
俺の鬱陶しい肩は抱き寄せられる為に有って。
俺の屈折したこの胸は、キスされる為に有る。

掻きむしるな。傷付けるな、爪ひとつ立てるな。
痛め付けるべきじゃない。

この身体を抱き締める男は、二人も居る...っ、!

「はぁっ、、、は、はぁっ、は、はぁぅ、ふっぅ、」

この爪は和己が切ってくれて、陸也が握ってくれて
この身体はひとつの傷も許されず愛される為に丹念にチェックされている。

傷付けるな。
俺には約束が有る...約束、そうだ。

ふと、一瞬。瞬きの合間に理性が勝つ。
その瞬間、スマホに手を伸ばし祈る。
タップして、タップして、終わり。

10...9...8...7...6...5...

「良悟っ、!?」

「んふっ、ふっ、ふふっ、」

「あれ、ご機嫌?」

「ううん、今、ご機嫌になった...♡」

隣の部屋から駆け付けた、さながら王子様だな。

「汗びっしょりだね。」

「ん。」

「タオル持ってくるよ。」

「俺も行きたい、和己。」

「俺も。一緒に来て欲しいなぁ良悟。」

ーーー

滅多に電話してこない、待てができる黒柴の。
突然のコール。
8コールで止まり、不在着信となるディスプレイ。

大慌てでダカダカキーを打ち、閉じて席を立つ。

何が起きた。

「良悟っ、!?」

慌てて駆け込んだ俺の目に飛び込んだのは、拳を握り締める左手と。
だらっと垂れた右手に握るスマホ。

目が合うと、途端に鳴りを潜めたそれを。
俺は何と言うのか知ってる。
忠実で臆病な可愛い顔した柴犬の、驚く程鋭い殺気。

「あれ、ご機嫌?」

「ううん、今、ご機嫌になった...♡」

一体何が起きたんだろうねぇ。
もう少し探ってみるべきかなぁ。

良悟は結構、物騒だならなぁ。

口悪いし、生意気だし、可愛いんだよねぇ。

ーーーーー

初めてソレを見たのは、高校1年の時だった。

金髪OK。学ランは何時も着てなくて良い。服装検査の時だけ。
但しタバコと薬物、ベルト以外の金属類を身に付けるのは禁止、の微妙に堅いのか緩いのか分からない高校で。

黒髪に茶色い目の、黒柴みたいな男の子が俺の隣の席に座った。

「なぁっ。俺、シロナガ。あんた何処の中学?」

「隣の市だから知らないと思う。」

ツンッとして、誰とも話したがらない。
俺にも誰にも興味なさげで物憂げな表情が俺を恋に突き動かした。
毎日眠そうな黒柴くん。
欠伸して、気怠そうにシャーペンを走らせる。

へぇ、ちゃんとノート取るんだ。

この高校の入試は、下手すると賢い小学生でも解けそうな問題ばかりだった。中学生が受ける高校入学試験、にしては優し過ぎる。

真面目そうなのに、何でこんな学校。
それにしても。
今日も黒柴みたいな髪で目もクリクリ。

「なっ。」

「何。」

「俺とゲーセン行かね?」

「嫌。」

「冷たいなぁ、じゃあバッティングセンターは?」

「... ... 行く。」

「よっしゃ!」

授業中でもガヤガヤうるさい教室で、俺は勝手に初デートを取り付けた。
勿論、向こうはそんな事思ってもいない。
今はそれで良いんだよ、今はね。

「え、上手いじゃんっ!」

ボール追い掛けるの上手かよ。
こんなとこまでシバじゃん。

「野球好きなの?」

「別に。少年野球やってただけ。」

「カッコいいじゃん。俺にもコツ教えてっ。」

「何で。打てるから誘ったんじゃないの。」

今日の黒柴くんいっぱい喋るなぁ、ってぼーっとしてたら。
ズバン、と音がして身体の横をボールが抜けてった。

「怖っ、!?え、ヤバくね、全然怖いんですけど、っ!?」

「ほんとに打てないんだ...。」

その、雨嵐大竜巻の台風だからって散歩行かないなんて意味分からんのだが。
みたいな顔するのやめて。

君と同じ人間でもバット握って振るだけで、精一杯の人間も居るんですよごめんね。

「だから教えてってば、マジでヤらないと命の危険を感じるっ、」

デットボールとか有るじゃん。
俺、マッチョじゃ無いから絶対骨折とかするって。

「構えて。」

「ぇ。」

「早く。」

「お、おっす。」

「そのまま、思ったより上を振り抜けば当たる。」

「ぅぇええっ!?そんだけ!?」

ーーズバンッ。

ボールはまたしても打てなかった。
漸くボテボテの一本を打った所で、今のは運が良ければ1塁まで行けたらしい。

「それってヒットっ!?」

「まぁそう。相手も下手くそでトンネル上手ならシロナガでも1塁に行ける。」

「トンネルって何?」

「... ... 。」

「なぁ、絶対変な意味だろっ?」

「ふっ、」

俺はその日初めて、黒柴が無邪気に口角を上げて吹き出すのをみた。
すげー可愛い。

その夜。
あぁ、これ夢だわ。
そう分かるくらいあり得ない事が、起きていた。

ーーあれ、何してんの?

ーー構えて。

ーーえ、なんで。

ーーそのまま、俺が良いって言うまで、ハグしてろよ。

「... ... うァハっ、!?」

見事な程単純な夢オチだった。
ガバッと飛び起きたのは自分の部屋で、慌てて掴んだスマホを見るにものの見事に寝坊した。遅刻だ。
アラームを掛け忘れたんだ。

「なんだよ構えろって。願望入り過ぎだろ...っ。」

夢は記憶の整理をするらしいなら、妙な物まで混ぜないでくれ。
あの時の構えはバットだったろ。
それがなんで、両手広げてあいつを抱きしめてるんだよっ、

「俺って不純。」

いやむしろ、純粋なのでは。
だってハグだぞ。
男子高校が見るにしては甘酸っぱ過ぎる夢だろ。

はぁ。

「おはよぉー。」

掛けた挨拶の半分が、もう昼だぞーと返ってきた。
黒柴君にも、気不味いけど挨拶しないとな、そう思っていたのに。

「何それ。」

「何。」

「どうしたの?」

返ってきたのはとことん冷たい声だった。

俺が呑気に寝坊した日。
俺の黒柴は、ごっそり感情を削ぎ落とした顔をしていた。

「別に。」

なんでぇ。
昨日めっちゃ機嫌良かったじゃん。

「なんか有った?」

「無い。」

「もしかして帰り遅くなっちゃったの、親に怒られた?」


あの時のゾロリ、と動いた黒目。
だらりと垂れた腕、何を言うでも無い閉じた口。

「ーー…っ、!?」

俺はこの時初めて、人間の殺気というものを浴びた。


ーーーーー

「その瞳、久しぶりに見たなぁ良悟。」

「ごめ、ん」

「良いよ。でも噛まないでね。」

「そんなの、した事ない。」

確かに、噛み付いた事は無いけど。
冷たい声を出した事は有るし、みっともなく怒鳴った事もある。
今はそんな事しない。
子供だったんだ。怒鳴ってごめん。

「さっき、」

「うん?」

「王子様みたいだった、俺お姫様になっても良いかも知れなかった。」

「うえっ?」

「ピンチに駆け付けられて、俺は俺を大事にする約束、守れた。」

リビングのソファで、和己の膝に横向きで座って肩に擦り寄る。
和己が好きな甘い声で、下からじっと見る。

「ありがとう王子様。んふっ、ふ、顔やばっ。」

「だぁ、めだってば、うああーードキドキするーーーっ、」

「何時までドキドキするんだよ、28だぞ。」

訳が分からん。
10年経ってもこの顔が好きなのか。

「へぇ。そんな事言うの?」

「え、なに。」

「良悟は俺にドキドキしないの?そんな事無いよね。何時も、ほら。」

「あ、いゃだっ。」

俺はコレに弱い。
腰を抱かれて、グッと寄った綺麗な顔がキスする寸前でピタリ止まる。
この距離はだめだっ、

「好き?」

「ぁ... ...っ、う」

また腰を抱かれた。
次こそ胸が合わさってるっ、のに...っ、キスはまだ触れない、

「あた、る」

「何が?」

「くちが、当たる...」

「それはキスがしたいって事、りょーご?」

そんな事無い、のに首を振るのも出来ないし。
無闇に返事も出来ないっ、
うっかり唇が当たったらどうする

「りょーご♡」

「んむっ」

「キスしたから、教えて良悟。」

「なにを、」

「良悟も俺にドキドキするのか、しないのか。」

もう一度、教えてって言う。
お願いって請われてキスをされて。

抱かれた腰を、親指がさらりと撫でた。

「教えてくれないの?」

俺は、ちゃんと答えた。
お返しに、するりと腕を伸ばして頭を抱いて。
綺麗な顔の男の唇をとろっと舐めて、ちゃんと答えた。

「俺もどきどきする...♡」

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