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第二章:大統領補佐官
獅子とカラス 3*
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トキのささやかに誘うこの仕草が好きだ。
トンッ、と背に額を付けて止まる。
次の言葉を待つこの時間を何と表すのだろうな。
私の番が、私の背で深く呼吸をしている。
この国でそれだけ安全な場所だという事だ。
トキが私の頬を張った後に言った事を考えた。
私が大統領でなくとも。
パン屋でも愛していると言ってくれた。
恐らくそこに、私とトキの認識の違いが存在している。
グリグリ、と額を押し付けてくれるこの生き物を私に留めておく には大統領でなければいけなかった。
パン屋には、国を退ける事も拐かしから守る事も出来なかっただろう。
「ふっ、」
「どうかした?」
「私が只の市民だったなら、」
振り向いて、手を握る。
トキは私がパン屋でも良いと言うが。
「私はお前を手放していただろうな。」
私は感謝している。
毎月通い詰めて私と母を説き伏せたデルを、私に権力を振るう機会を与えてくれた国民に。
でなければ、きっと。
こんなに強く美しい健気な生き物は、私には勿体無い程の番だった。
「俺は...。」
握った手が少しピクリと揺れる。
答えてくれるか。
「俺はただ...」
苦手なのは知っている。
聞かせてくれれば、私も返事が出来る。
「護衛なしで、あんたと出掛けたいだけなんだけどなぁー…」
「無理だな。」
「言わなかったろ。」
「そうだと言うべきだろうが。」
「違うのか?」
違うな。
私は狭量な男だとトキに出会って思い知らされているが、あの頃は
単に、そこまで気に掛けてやれる余裕が無かった。
手を握る事すら気を遣うような、蜂蜜色の指も今は慣れた様に指を絡めてくれる。
こうなるまで長かった。
「プロポーズで必死だった」
「は?」
アレは、プロポーズと言える代物ですらないだろう。
"私の任期が終わるまで頼まれてくれ"と、まるで仕事を依頼するかの様に言った挙句に、返事も聞かずに席を立った。
その後の事だった。
私の許可無しにトキを何処へも行けなくしていたと気が付いたのは。
そもそもトキは出歩きたい、と言わなかった。
確かに、初めは庭を歩く事もままならなかったが。
邸の門に人集りが出来ていた。
大統領の番を一目見ようと、あちこちの部署からあらゆる家族が野次馬となっていた。
その物分かりの良さが、私からすれば好都合だった。
一日中動ける様になったトキを連れて出掛けたある日、聞かれた。
護衛っていつまで付くんだ、?
最期まで、と答えた。
何がそれほど不満なのだろうとさえ思った。
護衛が居れば、トキは安全だ。
この邸の中に居ればそれは私の為にも望ましい。
大統領とその家族にだけ与えられる特権だ。
一度、その職就いた者は生涯或いはその後も"大統領"と呼ばれる。
私はトキの選択肢を狭めた…そうだな。
私はトキを外へ出さなかった。
護衛を付けているなら、何処へ行かせても良かったのかもしれない。
街中ではなく、せめてこの政府敷地内なら。
図書室でも、食堂でも、或いはベルの所へでも自由に行かせるべきだったのかも知れない。
そこで知り得るべき物が、幾つも有ったのだろうと思う。
只、私がそうさせたくなかった。
泥に塗れた様な世界を見て来た。
足を引っ張る者、賄賂に屈する者、興味本位に触れ回る者も居る。
信じているトキアキ。
私を裏切ったりしないと分かっている。
愛している。
トキもこんな私を愛してくれていると分かっている。
それでも、私の唯一の"右腕"だ。
「私は狭量な男だ。」
「そうだなっ。」
「何の権力も持たない私を愛してくれると、トキは言うが。」
「うん。」
「それだと私は私を許せそうに無い。きっと一生悔やんだ事だろう。」
トキの声も、瞳も、蜂蜜色の肌も知らずに。
番を手放すなど此処では神が許さない。
「折れてくれないかトキ。」
随分遅くなったが、"選択肢"を与えられる人物が今なら居る。
肝の小さい男は嫌われる、と散々脅してきた彼女が末息子を差し出して来た。
「グルーエントは、私より遥かに選択肢を持っている。」
「鞍替えするみたいに聞こえる。」
「いいや。」
「… グゥルとエルと俺でなら、街にも出られる?」
「そうだ。」
「護衛もグゥルだけで良い?」
「その代わり」
「その代わり…俺は死んでも大統領の妻で居る、」
ゴスっ、と胸に鈍い衝撃が走る。
頭突きされたな。
賢い頭の中には色々な物が詰めてあるのか、案外硬い。
「うそつき。」
「すまない。」
「死ぬまで大統領なんて、聞いてない…っ。」
「言いそびれたな。」
一生護衛が付くことも
一生大統領だと言う事を言いそびれても、私は私が大統領である事を謝る事が出来ない。
「苦労を掛ける。」
初めてだな。
はっきりと責められたのは。
もっと酷い言葉を浴びせられた事もある筈だ。
それなのに、トキに言われるだけで胸が痛む。
私の唯一の弱点だなトキ。
ーーーーー
そんな気はしてた。
だって、デルモントさんはまだ現役だ。
俺の相談役をしてくれる。
大統領なんて尚更、任期が有るだけで終わってまた立候補すればなれる。
そうでなくとも、エルは支持率がすごい。
出来るだけ長い任期を務めさせたいと、思ってくれる人がいる。
でもさ。
6、8年って話だったんだよな。
補佐官は大統領が任命するんだよ。
だから、エルの任期が終われば俺も終わりなんだなって漠然と思ってた。
ヴィンセント・クロウに勝った今回の選挙。
また2年間は不祥事を起こさない限りエルが大統領だ。
でもさ。
任期終わったら俺、二人っきりでデートがしたかったんだよ。
護衛抜きで。
初デートも護衛居たし。
結婚したら護衛どころかパレードだし。
それは仕方ないと思う。
だから補佐官になった時、護衛連れでも良いから街に行けるかなって打診した。
やっぱり駄目だった。
俺が大統領の妻だからだ。
国のお手本みたいな番が片方だけでブラつくのは、心配らしい。
政府敷地内でも護衛。
仕事中も護衛、見張も居る。
邸の外にも居る。
偶に邸の中にも居る。
つまり。
俺がひとりきりで、かつ自由に居られるのはアトリウムの中だけだった。
でも、今度はグゥルが居る。
街に行けるっ、!
ブラついて、好きに歩いて買い食い出来る。
工房にもひょいっ、と顔を出せる。
何時も何時も視察なんて名前を掲げて行かなくても良い。
優秀な護衛がいるんだ。
「大統領。」
流石に、そんなに良い物貰ったから折れるしか無いな。
「何だ、補佐官殿。」
「あんたは良い大統領だよエル。」
「妻のお陰だ。」
「ちゃんと…っ、分かってんのかっ。」
「十分に理解している。」
「しかも補佐官なんだからなっ。」
「誇りに思っているトキ。」
今まで大統領の妻と大統領補佐官を務めた奴なんて居ない。
ましてや異世界から来た人間に国政をさせる大統領も。
俺は、只出来る事をしただけだ。
ロードマップを完成させたい。
それだけで、ここまで来た。
まさか補佐官になるなんて、思いもしなかったのに。
今度は、死んでも大統領の妻なんてな。
二人きりのデートはもうずっと無理なのか。
「今度、ケーキ屋さん行って来て良い?」
「グルーエントと二人で出掛けるのか。」
「そうだよっ、」
「私も誘ってくれないか。」
「え、?」
それは、アレか。修羅場って奴じゃないのか。
妻が寝取られない様に見張るのか、それともグゥルとバチバチに睨み合うのか。
修羅場だなっ。
「街のケーキが食べたいだけだからなっ!ここのは、食べ尽くしたし、ゼフがオススメのケーキ屋さんに行くだけだよっ。」
「護衛兼愛人を連れて、だろう?」
「拗ねてるのか。」
「少しな。」
「今までも出掛けてただろっ。」
「恋人と二人きりは初めてだろう?」
少し羨ましい、なんてこの国最高権威の男が言う。
そうかよ。
全く、大統領が望んで得られない物は平凡な生活くらいか。
「エルも俺と二人で出掛けたかった?」
「ああ。だが、してやれない事ばかりだ。」
「もう良いって。」
「だが、自分を曲げられない。」
「良いよ。あんたは良い大統領で居て。俺も、殴ってごめん。」
初めて人を平手打ちした。
痛かったけど、頭に血が昇ってつい。
でも、あんなこと言うエルが悪いと俺は思う。
「昔聞いた話だが。」
「ん?」
「妻に一発頬を張られる位が良い夫婦の秘訣らしい。」
「誰に聞いたんだそれ?」
「ナタリアだ。」
「ふっ、ははっ、!それ俺も聞いたことある!」
俺はベルモントさんに聞いた。
いよいよ我慢ならない時は、一発食らわせてやるのですよ。
おちゃめなファイティングポーズで、そう忠告してくれた。
あれは何時だったかなぁ。
確か、麦茶飲んだ時じゃ無かったかな。
「ベルモントさんが怒らせるって、何したんだろうな。」
「トキ。」
「なに?」
「ベルじゃない。デルだ。」
「そ、れ…俺が聞いても大丈夫な話?」
流石に、恩師のそんな若気の至りみたいな話を他人から聞くのはちょっと気が引ける。
でも、すっごく気になるな。
「もし、グルーエントの頬を殴ったら教えてくれ。」
「ふっ、ははっ、嫌な奴っ!」
「それで構わない。敵の弱点は知り尽くしておかないとな。」
エルが機嫌良さそうに笑う。
明後日、俺を狙った男の結婚式に呼ばれるって言うのに。
俺も呑気に今度出掛けるかも、なんて話をしてる。
まぁ、半分はデートなんだけど。
その前にひとつ、白状しとくべき事が有るんだよなー。
ホントは背中にくっついてたかったのに。
仕方ないから頭突きした胸に額をくっついて、妻の権利を行使した。
「寝室行こ。」
ーーー
「トキ。ここに何が有るか知っているか。」
「なんだろ。」
「私のじゃないな。」
「ふふっ。」
エルとは違って吸い付きたいのをどうにか我慢した男が、ちゃんと許可を取って吟味して付けた跡だよ。
「許したのか?」
「一個だけね。」
「場所も選ばせたのか。」
「せっかくだし。最初くらいは。」
開いたパジャマの襟を指で引っ掛けて眺めてる。
グゥルが付けたキスマークを穴が開く程じっくり見てる。
「どうやってコレを上書きしようか、と考えている。」
「痛いのは嫌だな…、んっ。」
北へ向かう前にと、ピカピカに手入れされた身体の上をエルの手が這う。
「少し反応しているな。」
指の背が下着越しの下肢を撫でた。
「ん…ぅ、」
さりさり擦るだけで、もどかしい感触がして腰が揺れる。
「それ、好き…、んっ、」
たった指先ひとつでもグゥルとエルの違いが分かる。
「ん、好きなんだ…こうされるの、」
それに、この身体がどれだけエルに慣れて、次の愛撫を期待してるのかも。
次はどんな風に触ってくれるーー期待してまた腰が揺れる。
「んぁ、ぁー…エルこっちも、触って」
片手で前を撫でながら反対の手が胸の先をカリカリして、口に含まれた。
分厚い舌が器用に胸の先に纏わりついて転がして、押し潰したりするのに左だけ触ってくれない。
「そっちはグルーエントのだろう。」
「ぁ、ぅ...い、じわる...っ、」
「良い目だな。」
我慢出来なくて、左側に自分で手を伸ばした。
指先で少し往復するだけで簡単に硬くなっていく。
「これは態とだろうトキ?」
分かってるくせに。
目だけで返事をすれば、エルが長く吸い付くキスをくれた。
何度も唇を合わせて、離してはまた長く合わせてくれる。
あの時と同じ。
貰ったマタタビの瓶の蓋をこっそり開けて待っていた夜。
悪巧みをした俺を罰して熱い事をしてくれた。
「んぅ...っ、ごめんっ、」
分かってる。自分が性悪だって。
あの夜、何度も跡を残しそうになる度にハッとするグゥルを見て思った。
へぇ、そこ気にするとこなのか。
そう思ったら見てみたくなった。
エルはどうするんだろうなって。
「呼んでも良いぞ。アレは直ぐに飛んでくるだろ?」
多分、そうだと思うけど。
もし呼んだら、エルが触ってくれない左側だけを、グゥルに触らせる事になるのか、?
とんでも無い事に巻き込んじゃうな。
「トキ…」
キスが止まない。
髪が肌に当たって擽ったい。
でも今見たいのは翠の瞳でも青い髪でもない。
クイレで一番の物騒な仕事が出来る男にも、出来ない事は有る。
せっかく好きでいてくれてるのに。
俺だけだって決めてくれてるのに、これだけは多分。
他の誰にも譲れない。
「もっと」
枕の端をキュッと握って、純情ぶった身体で言う。
もう何回もエルを受け入れて、別の男まで飼い始めたのに。
これを許したいのはエルだけなんだ。
「もっと...っ、俺を暴いて良いよエルムディン」
ぁ。ピシリッと尻尾が揺れた。耳が出て格好がみるみる変わり、俺の身体の上には俺なんか簡単に踏み潰せそうな程雄々しいライオンが現れた。
ーーちょっと煽りすぎた、かな
ゴスっと押し当てられた鼻が、濡れていて冷たい。
おっかないなぁ、本当にライオンなんだもん。
「怖いか。」
意外にも、獣化でのセックスは百発百中って訳じゃ無かった。
授かり物だから、こればっかりは何とも。
でも、最近よく考える。
せっかくここまで来たんだ。
何も知らない世界は、今…俺が生きる世界になった。
魔法が有って、獣人が居て、番と呼ばれる人達が居る。
文字の読み書きも出来る様になって、それどころか信じられない事に国政の一角に立っている。
もう、ここは俺の知らない世界じゃない。
「怖くないよ。カッコイイなエル。」
身体が1年、また1年経つごとに激しくなってる。
発情期の様なものらしい。
適齢期の夜は長くて激しい。
俺も。
前にエルが話してくれた様に、エルがそうしたいだけ子供が欲しい。
クラッとする程溶けた脳で思い浮かべるのは、エルの種が俺の胎に辿り着くこと。
そんな恥ずかしい事言えないけど。
目を見れば分かる。
俺が何を思ってるのか、エルは気付いてくれる。
ただ、ライオンの子ってのが流石によく分からないんだよな。
実際、目の前のライオンとやる事やって出来るのはやっぱりライオンの子供なんだろうって事は間違いない。
ふさふさのタテガミ、太い足。デカい身体。
鳥は卵で生まれるらしい。卵から孵って雛が出てくる。
そうじゃない場合は人か獣か半々らしい。
それだけがちょっと怖い。
自分の腹から四つ足の子が生まれるのか。
いやでも、サイズどのくらいなんだろう。
小さい方が良いだろっ、
犬も猫も人の子よりは圧倒的に小さい筈だ。
「コロコロと思考が変わるな。」
「えっ、あぷっ、」
ベロっと頬を舐められた。
でもまぁ。
やっぱり考えちゃう訳で。
「あの、さ…四つ足の子の大きさって実際どのくらい?」
ベルモントさんを信じてるけど、やっぱ帝王切開なんて事になるのは怖いよな。俺はこの身体の何処に子宮が有るのか、いまいち分かってないし。月経も無い。
身体が作り変わってるってのも、そもそもよく分かってない。
地球と此処じゃ人間の造りも違う。
ファンタジーだよな。
「ちゃんと掌サイズなんだよー…え、る?」
「孕んでみれば分かる。」
鼻先と前足でゴロと転がされ、うつ伏せの身体にヒトじゃない舌の感触がした。
「あうっ、あ…あぁー…っ、」
ライオンの舌がザリザリとした感触が後ろを這う。
「うふ、ぅ...っ、ぇる」
ライオンの舌は薄くて入りやすい。
ナカでうねうね動いて…るっ、
「うぅっ、えるっ、」
キスがしたい。
そう強請る前に足首に尻尾が絡み付いてきた。
するする足を後ろ側を撫でいく。
仕方ない、ライオンとキスするのはちょっと難しい。
「トキ、手伝ってくれ。」
「ん...っ。♡」
ライオンの顔の前に腰を上げて舐められながら、肉球と鋭い爪じゃ出来ない事を代わりにやる。
エルがしてくれるように。
触れた所は音が経つほど濡れていて、一本くらいなら簡単に指を飲み込んだ。
ぐちゅっ、といやらしい音がする。
ぐるっと、かき混ぜる様にすると柔くて広がってるのがわかる。
もう一本。
少し窮屈だと思っても、ナカは広くて。
気持ち良い所をグリグリする。
「うー…ぅっ、」
こぷこぷっ、音が変わる。
足まで垂れた蜜をエルが舐めて、前にも舌が伸びて来た。
「ぁ、そっちは…ンッ♡」
「動くと歯が当たる。」
「んっ、ふは...ぁ、あう」
恥ずかしい。
いっぱい舐めてもらえる様に、どんどん腰が上がっていく。
あぁでも、舐められると勃っちゃうな、
「エル…っ、みて」
ゴロッと仰向けになった身体は、エルにはどう見えてるんだろう。
胸の所に、エルのじゃないキスマークを付けて、エルが舐めてくれた性器をはしたなく勃たせて、指だって…足りない
「あぁ、見てる。」
「イクの、みてて…っ、」
でも、散々教え込まれたこの身体はエルが見ててくれると発情するようになって。
指を三本も飲み込んでいく。
場所と角度が有るんだ。
少し前の方を角度を付けた指で手前に引く。
「あー…っ、アッ♡」
とぷっ、と漏れた。
「舐めてやろう。」
「うひっ、んんんっ♡」
舐めてくれたら、溢した分が無くなった。
「もう一度だ、トキ。」
こぷこぷ指を動かしながら、エルの瞳を見てる。
ギラギラした瞳に見られるだけで、またとぷっと溢れた。
それを待っていたエルがベロっと舐め取るが、お気に召さなかったらしい。
「足らないな。我慢せずに全部出すと良いトキ」
「あっ、ぅっ、ぁあっ♡」
怖いと思うのに、大きな口を開けたライオンが水を飲むみたいに薄い舌で俺のペニスの先をザリザリ舐め始めた。
「はぁあー…あ、あぁっ、くぅっ、」
気持ちいい。
俺の身体をライオンが、欲しがってる。
イキたいっ、もっと早く…っ、気持ち良くなりたぃっ、
音がぐちゅぐちゅ言うのも構わず指を動かした。
エルが舐めてくれた舌を思い出して、反対の手で前をしゅっ、しゅっ、て擦って見せる。
「えるっ、える…っ、」
「あぁ、見ているトキっ、」
涎を垂らして取って食いそうな顔で俺を見てる。
その顔に凄く興奮するっ、
「ぃ、くっ、いくいく…え、るつ、!」
ビュルッ、と漏らした物は…ライオンの顔を汚した。
「ぁ、ごめ」
謝ろうとして、言葉が詰まった。
まるで獲物の血まで味わう様に、長い舌がベロリと俺の性液を舐めとったからだ。
「トキの味がする。」
俺はライオンの言う通りに、うつ伏せになった。
犯しやすい様に膝を付いて上半身を伏せて、尻を上げる。
「grrr...」
「ん、ふっ、」
身体が当たるだけで声が漏れた。
ぺたっと人の形をしていないペニスが当たれば、強請る様な声が。
ズルっ、と押し込まれた。
「ふ、ぅー…うっ、ふくぅううっ、」
自分の指で擦った所を通り抜け、エルにしか届かない所へ当たる。
鈍痛、がするのにっ、きもちいぃ...っ、
スリスリ、腰を揺らされ身体が慣れるのを待ってる。
同時に奥が開くのも促していく。
「うくっ、うぅ…っ、きもちぃっ、」
痛くなくなるのが、段々早くなってきてる。
ライオンに抱かれる回数だけ、この身体は変わる。
「ふっ、ふ、ふぅっ、は…える、」
声を出すだけで、絞まるっ、
「きて、はやく…っ、変になりそうっ、だッ、ヒィ、あーーッ!?」
いきなり、身体中が痺れて気が付いたら…前がびしょびしょになって、るーー、?
あれ、何が起きたんだ、
「あぐッ、う、!アッ、ヒッ、あ、ぁああーっ、や、っ、うぐっ、」
イッた。
指より先を穿られてイッた、あとまたピストンされてる…っ、やばぃ、これやばいっ、だめっ、なやつだ
ゴツゴツしてる、
腹の中でペニスが、ゴツゴツ当たってる、
「ひ、ぐっ、あ、あ、アアッ、こわれるっ、こら、えるっ、」
だめだった
聞こえてないっ、おれもだめになる…こんなのっ、だめだっ、
人が人でなくなる。
そんな錯覚を起こしながら落ちていくセックスを、途中で交尾みたいだ、と気付いて…あぁ、そうか。
これは、交尾だった。
俺が俺じゃ無くなっても、エルは俺を抱いてくれる
理性は要らない。
閉じられそうに無い口から涎を垂らして強請った。
「もっと、奥…っ、孕むところ、犯して…エルっ、♡」
ライオンは返事をしなかった。
代わりに首の後ろをガッチリ咥えられて、長いライオンのペニスで一番奥まで性液を飲み込んだ。
ちかちかする視界で、震える腰で、ドクドク脈打つ胎で。
この身体はもっとエルを欲しがった。
「もう一回、出して…える、♡」
ライオンの交尾は短くて、多いー…♡
あと48回。
エルの精子を俺の胎に貰う。
「嗚呼。いいっ。きもちぃぃっ、」
動けない身体でひたすら、たぷたぷになるのを想像してびちゃびちゃに尻が濡れるのを感じる。
脳味噌が溶けそう。
トンッ、と背に額を付けて止まる。
次の言葉を待つこの時間を何と表すのだろうな。
私の番が、私の背で深く呼吸をしている。
この国でそれだけ安全な場所だという事だ。
トキが私の頬を張った後に言った事を考えた。
私が大統領でなくとも。
パン屋でも愛していると言ってくれた。
恐らくそこに、私とトキの認識の違いが存在している。
グリグリ、と額を押し付けてくれるこの生き物を私に留めておく には大統領でなければいけなかった。
パン屋には、国を退ける事も拐かしから守る事も出来なかっただろう。
「ふっ、」
「どうかした?」
「私が只の市民だったなら、」
振り向いて、手を握る。
トキは私がパン屋でも良いと言うが。
「私はお前を手放していただろうな。」
私は感謝している。
毎月通い詰めて私と母を説き伏せたデルを、私に権力を振るう機会を与えてくれた国民に。
でなければ、きっと。
こんなに強く美しい健気な生き物は、私には勿体無い程の番だった。
「俺は...。」
握った手が少しピクリと揺れる。
答えてくれるか。
「俺はただ...」
苦手なのは知っている。
聞かせてくれれば、私も返事が出来る。
「護衛なしで、あんたと出掛けたいだけなんだけどなぁー…」
「無理だな。」
「言わなかったろ。」
「そうだと言うべきだろうが。」
「違うのか?」
違うな。
私は狭量な男だとトキに出会って思い知らされているが、あの頃は
単に、そこまで気に掛けてやれる余裕が無かった。
手を握る事すら気を遣うような、蜂蜜色の指も今は慣れた様に指を絡めてくれる。
こうなるまで長かった。
「プロポーズで必死だった」
「は?」
アレは、プロポーズと言える代物ですらないだろう。
"私の任期が終わるまで頼まれてくれ"と、まるで仕事を依頼するかの様に言った挙句に、返事も聞かずに席を立った。
その後の事だった。
私の許可無しにトキを何処へも行けなくしていたと気が付いたのは。
そもそもトキは出歩きたい、と言わなかった。
確かに、初めは庭を歩く事もままならなかったが。
邸の門に人集りが出来ていた。
大統領の番を一目見ようと、あちこちの部署からあらゆる家族が野次馬となっていた。
その物分かりの良さが、私からすれば好都合だった。
一日中動ける様になったトキを連れて出掛けたある日、聞かれた。
護衛っていつまで付くんだ、?
最期まで、と答えた。
何がそれほど不満なのだろうとさえ思った。
護衛が居れば、トキは安全だ。
この邸の中に居ればそれは私の為にも望ましい。
大統領とその家族にだけ与えられる特権だ。
一度、その職就いた者は生涯或いはその後も"大統領"と呼ばれる。
私はトキの選択肢を狭めた…そうだな。
私はトキを外へ出さなかった。
護衛を付けているなら、何処へ行かせても良かったのかもしれない。
街中ではなく、せめてこの政府敷地内なら。
図書室でも、食堂でも、或いはベルの所へでも自由に行かせるべきだったのかも知れない。
そこで知り得るべき物が、幾つも有ったのだろうと思う。
只、私がそうさせたくなかった。
泥に塗れた様な世界を見て来た。
足を引っ張る者、賄賂に屈する者、興味本位に触れ回る者も居る。
信じているトキアキ。
私を裏切ったりしないと分かっている。
愛している。
トキもこんな私を愛してくれていると分かっている。
それでも、私の唯一の"右腕"だ。
「私は狭量な男だ。」
「そうだなっ。」
「何の権力も持たない私を愛してくれると、トキは言うが。」
「うん。」
「それだと私は私を許せそうに無い。きっと一生悔やんだ事だろう。」
トキの声も、瞳も、蜂蜜色の肌も知らずに。
番を手放すなど此処では神が許さない。
「折れてくれないかトキ。」
随分遅くなったが、"選択肢"を与えられる人物が今なら居る。
肝の小さい男は嫌われる、と散々脅してきた彼女が末息子を差し出して来た。
「グルーエントは、私より遥かに選択肢を持っている。」
「鞍替えするみたいに聞こえる。」
「いいや。」
「… グゥルとエルと俺でなら、街にも出られる?」
「そうだ。」
「護衛もグゥルだけで良い?」
「その代わり」
「その代わり…俺は死んでも大統領の妻で居る、」
ゴスっ、と胸に鈍い衝撃が走る。
頭突きされたな。
賢い頭の中には色々な物が詰めてあるのか、案外硬い。
「うそつき。」
「すまない。」
「死ぬまで大統領なんて、聞いてない…っ。」
「言いそびれたな。」
一生護衛が付くことも
一生大統領だと言う事を言いそびれても、私は私が大統領である事を謝る事が出来ない。
「苦労を掛ける。」
初めてだな。
はっきりと責められたのは。
もっと酷い言葉を浴びせられた事もある筈だ。
それなのに、トキに言われるだけで胸が痛む。
私の唯一の弱点だなトキ。
ーーーーー
そんな気はしてた。
だって、デルモントさんはまだ現役だ。
俺の相談役をしてくれる。
大統領なんて尚更、任期が有るだけで終わってまた立候補すればなれる。
そうでなくとも、エルは支持率がすごい。
出来るだけ長い任期を務めさせたいと、思ってくれる人がいる。
でもさ。
6、8年って話だったんだよな。
補佐官は大統領が任命するんだよ。
だから、エルの任期が終われば俺も終わりなんだなって漠然と思ってた。
ヴィンセント・クロウに勝った今回の選挙。
また2年間は不祥事を起こさない限りエルが大統領だ。
でもさ。
任期終わったら俺、二人っきりでデートがしたかったんだよ。
護衛抜きで。
初デートも護衛居たし。
結婚したら護衛どころかパレードだし。
それは仕方ないと思う。
だから補佐官になった時、護衛連れでも良いから街に行けるかなって打診した。
やっぱり駄目だった。
俺が大統領の妻だからだ。
国のお手本みたいな番が片方だけでブラつくのは、心配らしい。
政府敷地内でも護衛。
仕事中も護衛、見張も居る。
邸の外にも居る。
偶に邸の中にも居る。
つまり。
俺がひとりきりで、かつ自由に居られるのはアトリウムの中だけだった。
でも、今度はグゥルが居る。
街に行けるっ、!
ブラついて、好きに歩いて買い食い出来る。
工房にもひょいっ、と顔を出せる。
何時も何時も視察なんて名前を掲げて行かなくても良い。
優秀な護衛がいるんだ。
「大統領。」
流石に、そんなに良い物貰ったから折れるしか無いな。
「何だ、補佐官殿。」
「あんたは良い大統領だよエル。」
「妻のお陰だ。」
「ちゃんと…っ、分かってんのかっ。」
「十分に理解している。」
「しかも補佐官なんだからなっ。」
「誇りに思っているトキ。」
今まで大統領の妻と大統領補佐官を務めた奴なんて居ない。
ましてや異世界から来た人間に国政をさせる大統領も。
俺は、只出来る事をしただけだ。
ロードマップを完成させたい。
それだけで、ここまで来た。
まさか補佐官になるなんて、思いもしなかったのに。
今度は、死んでも大統領の妻なんてな。
二人きりのデートはもうずっと無理なのか。
「今度、ケーキ屋さん行って来て良い?」
「グルーエントと二人で出掛けるのか。」
「そうだよっ、」
「私も誘ってくれないか。」
「え、?」
それは、アレか。修羅場って奴じゃないのか。
妻が寝取られない様に見張るのか、それともグゥルとバチバチに睨み合うのか。
修羅場だなっ。
「街のケーキが食べたいだけだからなっ!ここのは、食べ尽くしたし、ゼフがオススメのケーキ屋さんに行くだけだよっ。」
「護衛兼愛人を連れて、だろう?」
「拗ねてるのか。」
「少しな。」
「今までも出掛けてただろっ。」
「恋人と二人きりは初めてだろう?」
少し羨ましい、なんてこの国最高権威の男が言う。
そうかよ。
全く、大統領が望んで得られない物は平凡な生活くらいか。
「エルも俺と二人で出掛けたかった?」
「ああ。だが、してやれない事ばかりだ。」
「もう良いって。」
「だが、自分を曲げられない。」
「良いよ。あんたは良い大統領で居て。俺も、殴ってごめん。」
初めて人を平手打ちした。
痛かったけど、頭に血が昇ってつい。
でも、あんなこと言うエルが悪いと俺は思う。
「昔聞いた話だが。」
「ん?」
「妻に一発頬を張られる位が良い夫婦の秘訣らしい。」
「誰に聞いたんだそれ?」
「ナタリアだ。」
「ふっ、ははっ、!それ俺も聞いたことある!」
俺はベルモントさんに聞いた。
いよいよ我慢ならない時は、一発食らわせてやるのですよ。
おちゃめなファイティングポーズで、そう忠告してくれた。
あれは何時だったかなぁ。
確か、麦茶飲んだ時じゃ無かったかな。
「ベルモントさんが怒らせるって、何したんだろうな。」
「トキ。」
「なに?」
「ベルじゃない。デルだ。」
「そ、れ…俺が聞いても大丈夫な話?」
流石に、恩師のそんな若気の至りみたいな話を他人から聞くのはちょっと気が引ける。
でも、すっごく気になるな。
「もし、グルーエントの頬を殴ったら教えてくれ。」
「ふっ、ははっ、嫌な奴っ!」
「それで構わない。敵の弱点は知り尽くしておかないとな。」
エルが機嫌良さそうに笑う。
明後日、俺を狙った男の結婚式に呼ばれるって言うのに。
俺も呑気に今度出掛けるかも、なんて話をしてる。
まぁ、半分はデートなんだけど。
その前にひとつ、白状しとくべき事が有るんだよなー。
ホントは背中にくっついてたかったのに。
仕方ないから頭突きした胸に額をくっついて、妻の権利を行使した。
「寝室行こ。」
ーーー
「トキ。ここに何が有るか知っているか。」
「なんだろ。」
「私のじゃないな。」
「ふふっ。」
エルとは違って吸い付きたいのをどうにか我慢した男が、ちゃんと許可を取って吟味して付けた跡だよ。
「許したのか?」
「一個だけね。」
「場所も選ばせたのか。」
「せっかくだし。最初くらいは。」
開いたパジャマの襟を指で引っ掛けて眺めてる。
グゥルが付けたキスマークを穴が開く程じっくり見てる。
「どうやってコレを上書きしようか、と考えている。」
「痛いのは嫌だな…、んっ。」
北へ向かう前にと、ピカピカに手入れされた身体の上をエルの手が這う。
「少し反応しているな。」
指の背が下着越しの下肢を撫でた。
「ん…ぅ、」
さりさり擦るだけで、もどかしい感触がして腰が揺れる。
「それ、好き…、んっ、」
たった指先ひとつでもグゥルとエルの違いが分かる。
「ん、好きなんだ…こうされるの、」
それに、この身体がどれだけエルに慣れて、次の愛撫を期待してるのかも。
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「んぁ、ぁー…エルこっちも、触って」
片手で前を撫でながら反対の手が胸の先をカリカリして、口に含まれた。
分厚い舌が器用に胸の先に纏わりついて転がして、押し潰したりするのに左だけ触ってくれない。
「そっちはグルーエントのだろう。」
「ぁ、ぅ...い、じわる...っ、」
「良い目だな。」
我慢出来なくて、左側に自分で手を伸ばした。
指先で少し往復するだけで簡単に硬くなっていく。
「これは態とだろうトキ?」
分かってるくせに。
目だけで返事をすれば、エルが長く吸い付くキスをくれた。
何度も唇を合わせて、離してはまた長く合わせてくれる。
あの時と同じ。
貰ったマタタビの瓶の蓋をこっそり開けて待っていた夜。
悪巧みをした俺を罰して熱い事をしてくれた。
「んぅ...っ、ごめんっ、」
分かってる。自分が性悪だって。
あの夜、何度も跡を残しそうになる度にハッとするグゥルを見て思った。
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そう思ったら見てみたくなった。
エルはどうするんだろうなって。
「呼んでも良いぞ。アレは直ぐに飛んでくるだろ?」
多分、そうだと思うけど。
もし呼んだら、エルが触ってくれない左側だけを、グゥルに触らせる事になるのか、?
とんでも無い事に巻き込んじゃうな。
「トキ…」
キスが止まない。
髪が肌に当たって擽ったい。
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クイレで一番の物騒な仕事が出来る男にも、出来ない事は有る。
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ぁ。ピシリッと尻尾が揺れた。耳が出て格好がみるみる変わり、俺の身体の上には俺なんか簡単に踏み潰せそうな程雄々しいライオンが現れた。
ーーちょっと煽りすぎた、かな
ゴスっと押し当てられた鼻が、濡れていて冷たい。
おっかないなぁ、本当にライオンなんだもん。
「怖いか。」
意外にも、獣化でのセックスは百発百中って訳じゃ無かった。
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ライオンの舌がザリザリとした感触が後ろを這う。
「うふ、ぅ...っ、ぇる」
ライオンの舌は薄くて入りやすい。
ナカでうねうね動いて…るっ、
「うぅっ、えるっ、」
キスがしたい。
そう強請る前に足首に尻尾が絡み付いてきた。
するする足を後ろ側を撫でいく。
仕方ない、ライオンとキスするのはちょっと難しい。
「トキ、手伝ってくれ。」
「ん...っ。♡」
ライオンの顔の前に腰を上げて舐められながら、肉球と鋭い爪じゃ出来ない事を代わりにやる。
エルがしてくれるように。
触れた所は音が経つほど濡れていて、一本くらいなら簡単に指を飲み込んだ。
ぐちゅっ、といやらしい音がする。
ぐるっと、かき混ぜる様にすると柔くて広がってるのがわかる。
もう一本。
少し窮屈だと思っても、ナカは広くて。
気持ち良い所をグリグリする。
「うー…ぅっ、」
こぷこぷっ、音が変わる。
足まで垂れた蜜をエルが舐めて、前にも舌が伸びて来た。
「ぁ、そっちは…ンッ♡」
「動くと歯が当たる。」
「んっ、ふは...ぁ、あう」
恥ずかしい。
いっぱい舐めてもらえる様に、どんどん腰が上がっていく。
あぁでも、舐められると勃っちゃうな、
「エル…っ、みて」
ゴロッと仰向けになった身体は、エルにはどう見えてるんだろう。
胸の所に、エルのじゃないキスマークを付けて、エルが舐めてくれた性器をはしたなく勃たせて、指だって…足りない
「あぁ、見てる。」
「イクの、みてて…っ、」
でも、散々教え込まれたこの身体はエルが見ててくれると発情するようになって。
指を三本も飲み込んでいく。
場所と角度が有るんだ。
少し前の方を角度を付けた指で手前に引く。
「あー…っ、アッ♡」
とぷっ、と漏れた。
「舐めてやろう。」
「うひっ、んんんっ♡」
舐めてくれたら、溢した分が無くなった。
「もう一度だ、トキ。」
こぷこぷ指を動かしながら、エルの瞳を見てる。
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それを待っていたエルがベロっと舐め取るが、お気に召さなかったらしい。
「足らないな。我慢せずに全部出すと良いトキ」
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気持ちいい。
俺の身体をライオンが、欲しがってる。
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「えるっ、える…っ、」
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「ぁ、ごめ」
謝ろうとして、言葉が詰まった。
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「トキの味がする。」
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犯しやすい様に膝を付いて上半身を伏せて、尻を上げる。
「grrr...」
「ん、ふっ、」
身体が当たるだけで声が漏れた。
ぺたっと人の形をしていないペニスが当たれば、強請る様な声が。
ズルっ、と押し込まれた。
「ふ、ぅー…うっ、ふくぅううっ、」
自分の指で擦った所を通り抜け、エルにしか届かない所へ当たる。
鈍痛、がするのにっ、きもちいぃ...っ、
スリスリ、腰を揺らされ身体が慣れるのを待ってる。
同時に奥が開くのも促していく。
「うくっ、うぅ…っ、きもちぃっ、」
痛くなくなるのが、段々早くなってきてる。
ライオンに抱かれる回数だけ、この身体は変わる。
「ふっ、ふ、ふぅっ、は…える、」
声を出すだけで、絞まるっ、
「きて、はやく…っ、変になりそうっ、だッ、ヒィ、あーーッ!?」
いきなり、身体中が痺れて気が付いたら…前がびしょびしょになって、るーー、?
あれ、何が起きたんだ、
「あぐッ、う、!アッ、ヒッ、あ、ぁああーっ、や、っ、うぐっ、」
イッた。
指より先を穿られてイッた、あとまたピストンされてる…っ、やばぃ、これやばいっ、だめっ、なやつだ
ゴツゴツしてる、
腹の中でペニスが、ゴツゴツ当たってる、
「ひ、ぐっ、あ、あ、アアッ、こわれるっ、こら、えるっ、」
だめだった
聞こえてないっ、おれもだめになる…こんなのっ、だめだっ、
人が人でなくなる。
そんな錯覚を起こしながら落ちていくセックスを、途中で交尾みたいだ、と気付いて…あぁ、そうか。
これは、交尾だった。
俺が俺じゃ無くなっても、エルは俺を抱いてくれる
理性は要らない。
閉じられそうに無い口から涎を垂らして強請った。
「もっと、奥…っ、孕むところ、犯して…エルっ、♡」
ライオンは返事をしなかった。
代わりに首の後ろをガッチリ咥えられて、長いライオンのペニスで一番奥まで性液を飲み込んだ。
ちかちかする視界で、震える腰で、ドクドク脈打つ胎で。
この身体はもっとエルを欲しがった。
「もう一回、出して…える、♡」
ライオンの交尾は短くて、多いー…♡
あと48回。
エルの精子を俺の胎に貰う。
「嗚呼。いいっ。きもちぃぃっ、」
動けない身体でひたすら、たぷたぷになるのを想像してびちゃびちゃに尻が濡れるのを感じる。
脳味噌が溶けそう。
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