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第二章:大統領補佐官
大統領とブランデーサワー2
しおりを挟む聞いた話と例年通りで、年の瀬正月に日本みたいにそばを食べたり、おせち、お雑煮を食べる習慣は無い。
只、新年という概念は有りちょっとしたパーティーと豪華な食事を用意する。
年の瀬は明日。
今日は年末イブだな。
それで俺、やってみたかったんだ。
「こっちが鶏とゴボウのピリ辛混ぜご飯。」
「美味そうっ。」
「皮をパリパリに焼いて、あと乗せしたから食感良いよ。」
「美味しいですっ、!」
「そして、こっちがレッドボアのステーキ。」
ーー魔物肉の調理。
牛より安いんだよ。
というか牛は牛乳用だから、あんま食えなくてだな。
「このソース美味しすぎですっ、!」
にんにくをレッドボアの油で焼いて、醤油、玉ねぎ、酢を入れる。
「飽きたら大根おろしも良いぞ。さっぱりで食べやすいけど、ははっ、若いからこっちで良っか。」
目の前で米がどんどん無くなってる。
凄いな。
「あ、味噌汁とお吸い物どっちが良い?」
結果、どっちも飲んでた。
豚汁にしてたら米無くなってたかもな、コレ。
黙々、ガツガツ飯食う子達って何でこんな可愛いんだろ。
「それ、どうするんですか?」
「さっき貼ってくれた猫シールを描いてくれた子に、持っていこうかなって。」
1人分をお盆に乗せていると、カウンター越しに声を掛けられる。
どうしたんだろうか。
おかわりは、まだ有るぞ?
「何処の子、ですか。」
「向かいの部署の、眼鏡かけた青のカーディガン着た女の子だけど?」
「俺、呼んで来ますっ!」
「僕も!」
「絶対、出来立てが美味しいです!」
ご馳走様です、と叫んで一目散に駆けて行った。
「また誰かたぶらかしたのか、トキ。」
「エル、!?」
肩を震わせて入って来る大統領。
これは、聞いてたな。
「廊下寒いだろ、入ってくれば良かったのに。」
「美味しそうに食べていたからな。良いものも見れた。」
「うん?」
「私には、アレを一杯入れてくれないか。」
「向こうで飲む?」
「あぁ。」
この厨房、相変わらず会議室のプレートが嵌ったままだが。
ひとつだけ追加したものがある。
厨房に付いてる物の他に、もうひとつ。
壁に沿って本格的なバーカウンターを作った。
飯も良いけど、酒も飲みたいみたいな人が居てだな。
そのひとりが大統領で。
もうひとりが前・大統領補佐官。現在は相談役となっている大物だ。
相談役にいざ相談するとなると、ご老体をわざわざ家から呼び出して、相談、お給料は極々僅かとなった事に文句は一切無いと仰ったデルモントさんがひとつだけ条件を付けた。
ーーー
金は出そう。
例の会議室にバーカウンターを作る。
相談はそこで、酒を作ってくれるなら給料も要らん。
デルモント・クイレ
ーーーー
そんな手紙を貰ってさぁ。
お給料払いません、なんて言える訳無いだろっ、!?
知恵と知識の塊だぞ。生き字引だぞ、!?
それに酒を出すだけで、話が聞けるなら幾らでも出すわ
勿論、また分厚いカタログに目を通して、そこに今は大統領が座ってる。
「何にする?」
「さっぱりしたものが良い。」
「ステーキ食べる?」
「貰おう。」
「じゃあレモンだな。ちょっと待って大統領。」
「勿論だ。補佐官殿。」
因みに俺は酒をシャカシャカした事は無い。
シャカシャカする道具もないし。
グラスに氷、ブランデー、絞ったレモン汁、砂糖をちょっと。
混ぜる。
砂糖が溶けたらマドラースプーンを上下に3回、揺らす。
混ざった所で、炭酸水を少し。
もう一度。
今度は氷をひとつ持ち上げる様に混ぜて、落とす。
「はい、名前は忘れたけど美味しいと思う。」
カラン、と言う音がして寒い季節に冷たい酒を飲むのも風情かも知れないな。
「美味い。」
「もっとレモンいる?」
「いいや、充分美味い。」
「良かった。」
「ありがとうトキ。」
「どういたしましてエル。さて、あんたのステーキ焼いて来るよ。」
「期待している。」
い、いつまで経っても慣れないな。
金色の瞳が心底愛おしいと言う色で、こっちを見て名前を呼ぶ。
誤魔化してステーキを焼きに来たけど、頬が熱い。
こっちに背中を向けて、グラスを傾けるオジサンは嫌になる程様になってる。
キス、すれば良かったな。
今、二人きりだし。
「なぁ、エル」
「只今戻りましたっ!」
「彼女ですよね、」
「お、遅くなりましたっ。」
ーー此処、職場ダゾ俺。
ーーーーー
それからほぼ予想通りに、他の面々が帰宅し始めた。
明日から一応は休みだ。
何も起きず呼び出されもしない限りは14日間の休みとなる。
異世界バンザイ、!
帰宅前に匂いに釣られて、大統領と補佐官に、挨拶も兼ねて飯を食いに来るひとや、逆に菓子を置いて行ってくれるひと、ケーキを頼んでいたひとまで居て。
用意が良過ぎるから不思議に思っていると、皆がくちぐちにこう言った。
補佐官殿ならきっと今日
"会議室"を開けてくれると信じてました‼︎
この為に今日まで頑張りました!
実家帰る前にどうしても食いたくてっ、!
「ご馳走様です!!」
「どういたしまして。」
仕舞いには、皿洗いを買って出てくれたひとも居て。
味噌汁を注ぐ係、ご飯をよそう係まで出来てしまった。
「来年も宜しくお願いします!頂きます!」
「こちらこそ。今年一年頑張ってくれてありがとう。俺もエルムディンも感謝を幾ら言っても足りないからさ。美味しいご飯、食べて行ってくれ。」
「ありがとうございますっ、美味いっス‼︎」
今年も無事に終わりそうだ。
皆がひとりひとりが頑張ったからだなぁ。
俺も頑張ったよなぁ。
「さて、あともう一息頑張りますか。」
完
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