【1章完結済】【R18】池に落ちたら、大統領補佐官に就任しました。

mimimi456/都古

文字の大きさ
上 下
60 / 77
第二章:大統領補佐官

大統領とブランデーサワー1

しおりを挟む
今日だけは、
なんとしても今日だけは18時までに上がる。

その為に皆の年末進行をかなり早くから掛けた。
準備も改革もかなりやった。
だから今年はもう仕事はしなくて良い!

結果、話題になる程やり過ぎたとしてもだ。

俺が補佐官になって、会議が増えた、仕事が増えた、それから。
廊下を走るヤツが増えたと聞くようになった。

最後のは、一瞬考えたよな。
廊下のど真ん中に黄色いビニールテープでも貼るか、って。
常々思ってたんだ。
真ん中を広がって歩く奴が邪魔で、何度イラっとした事か。

流石に補佐官になってからは、向こうが気付いて道を譲ってくれるようになった。
けど、それじゃ意味が無い。

「走るの禁止、と会議で申し付けては?」

「それがさ。どうも、下まで辿り着いてないみたいなんだよな。」

「何故、分かるんです?」

「この前の...」

一部、一定数居る会議に出るだけ、議事録を回すだけの奴が居る。
周知徹底をさせて欲しいんだが。

「あぁ、成程。それでわざわざあそこに寄ったんですね。」

「そう。あそこに来た子達はあの時間、あそこが封鎖されるって知らなかった。おかしいよなぁ。俺、5回も会議に挙げたんだけどな。」

最初の3回は会議終了前に、後の2回は会議始まって真っ先に言ったんだよ。

「掲示場所に貼ってみ、るのも無駄ですね。」

「そう。誰も見やしない。俺だってわざわざ見に行こうとは思わないよ。」

「それより、他の所は大丈夫そう?」

「この半年で、平均してトキ様が終わる1時間半後には大体、皆終わるという統計が出てますよ。」

「なんで俺基準なの?」

「貴方の仕切りで動いてるからですよ大統領補佐官殿。」

ニコッと笑うユディール君は俺に甘い。
俺の仕切り、というのも間違いじゃない。
これくらいの猶予があれば、ここまで終わるだろうという目測で指示を出してる。

確かに、俺の仕切りだけど。

「なんか悪い組織を牛耳ってるみたいだな。」

「ふっ、その時は優秀な秘書も連れて行って下さいね。」

「それは良い案だけど、お互い夫の居る身だろ?」

「そうでした。ふふっ、懐かしいですね。」

顔の綺麗なイケメンが笑うと、空気が浄化される気がする。
仕事中は敬語を維持してる癖に、退勤するとすぐタメ口になるんだよ。

俺知ってる。これ、ギャップ萌えって奴だ。
そして閃いた。
やっぱりヤろう。
今、ヤろう。

「よし、ちょっとごめん。あそこの部署に絵が上手い子居たよね。ちょっとこれ45分で描けるだけ描いてもらって。断っても良いよって言ってね。流石に急過ぎるから。」

「え、承知しました。」

「何か仕事してたら他に割り振って。デスク居ずらかったらここに呼んで良いからさ。命令。至急の。」

「あと15分でユディールはこっちを手配。出来そう?」

「勿論。」

ーーーーー

「あ、の、補佐官殿。何をなさっておいでなのですか。」

恐る恐ると言った感じで声を掛けてくれたのは、この前閉鎖区画を通りかかった子達だった。
新卒で今日までよく頑張ってる。偉いなぁ。まだスーツに着られてるのが初々しいなぁ。

「シール貼ってる。どう?可愛い?」

「可愛いです。」

「可愛いです、柄が違うのもありますね!」

「この矢印は何ですか?」

おや、なかなか目敏い。

「ちょっと向こうから歩いてみて。好きな様にね。」

フレッシュマンは素直に返事をして、廊下の端からこちらへ歩いて来る。
三人がそれぞれ、壁に貼った猫のシールを見ながら。

「良いね。」

側に戻るなりそう言われてポカンとする三人が可愛過ぎて、ついネタバラシをしてしまう。
ごめんね、上司の話に付き合わせちゃって。

「君は二人とは反対の壁を見てたね。」

「はいっ!」

「それで視線と肩が、後ろを向いた。」

「はいっ!」

「そして君たち二人はこの壁の矢印通りにこっちを歩いて来た。」

「はい。」

「それは何故?」

「猫が、可愛かったからです。」

「矢印が有ったからです。」

「正解。」

三人が三人とも同じタイミングで首を傾げた。
可愛いな。新人。

「視線誘導だ。君たちはこの可愛い猫の上に描かれた矢印に釣られて、視線、そして身体を誘導された。俺たちは無意識に沢山の情報を拾って、処理してる。誰かの機嫌や、気温、周囲のちょっとした変化等だ。」

「これに一体、何の意味が有るんですか。」

「最近、廊下を走るひとが増えてるって聞いて。事故防止だよ。駄目ならもっと無骨な手を考えてるんだけど、これなら可愛いだろ?他に、質問がある人。」

「はいっ!」

「何かなフレッシュマン。」

「失礼ながら、効果は一時的の様に思われますが如何でしょうかっ。」

尤もな意見だ。
それを言える所が凄いぞ。元気だな。良いなー。

「なにをやっても万人にウケる策は無いが、手始めにデータを取る。この猫シールで改善が見えればそれを踏まえて廊下は走らない様にと、周知させるネタになる。それでも改善しなければ、あるいは一時的だった場合にはそれを理由に再度周知、更に別の策を試す予定だけど。どうかな、答えになってる?」

「なって、ますっ。」

手伝います、と三人組がワンフロア左右の壁に猫を貼る手伝いをしてくれた。

お陰で30分で終わった。

「仕事は終わり?もう帰る?」

「はいっ!」

「ご飯食べてく?」

「い、良いんですか!?」

「他に予定が無ければ食べて欲しいな。シール貼りの手伝いとお手本になってくれたお礼。」

「やった!補佐官殿のご飯、食べてみたかったんです!」

「い、いつも上役の方が沢山居て、とてもじゃないけど俺達が行ける雰囲気じゃなくて。」

「ありがとうございますっ!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

処理中です...