【1章完結済】【R18】池に落ちたら、大統領補佐官に就任しました。

mimimi456/都古

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第二章:大統領補佐官

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人間の体に紐って10本結べるんだな。

首と両手足首と、エルが着けたがっていた所へ結んだらもう何処に結ぶべきか分からなくなった。

ギブアップした俺は7本め以降のエルの提案を全てのんだ。
左右の手の薬指と、左足の小指、と... あと、人に言えないとこ。

「トキ。」

「なぁに。」

「医師の指示でお前は今日から1週間、休養に入りなさい。」

「え。仕事は、」

「大統領補佐官には優秀な部下が居る。」

起き抜けのパジャマ姿で言われる台詞じゃ無い。
せめて着替えた方が良いだろうか。

「働き過ぎだ。」

「大統領には言われたく無い。」

「私ではなく医師の指示だ。良いな。」

昨日、呼び出された時ベルモンドさん何も言ってなかった。
おまじないして言い聞かせてくれただけだ。

「あの時点でお前に告げても聞かないだろうと判断した。」

「でも、書類が...ぁ、また、やったな」

エルの瞳が金色に光る。
全身の力が抜け、立ちあがろうと躍起になった俺は呆気なくベッドにポスんと尻を落とし、敷き詰められたクッションを背もたれに座らされた。

「今がきっかけだトキアキ。」

紙とペンを渡された。

「ベルからの課題だ。この定型分を使い明後日提出しなさい。それによっては休暇が伸びる可能性もあるが、次の課題へ進めるかも知れない。」

定型分。
流石おじいちゃん先生。
俺の苦手な所をどんどん抉ってくる。
逃げ道を塞ぎつつ肩を叩いてくれる所は、間違いなくデルモントの弟さんだ。

考えるだけで、ちょっと動悸がするんだけど。
逆効果なんじゃ。

「不安なら、また紐を結んでも良い。私に手伝わせてくれ。」

「いっ、嫌だ!」

「ではやるしか無いな。それからこれを。二つめの贈り物だ。」

派手なピンクと黄色のガラス瓶の中を見て良いというので一つ取ってみた。

「飴?」

「私の時とは違ってちゃんと美味しい味だ。150個入っている。」

「良かった、」

「これが無くなるまでお前のおやつはこれになる。」

「嘘、」

「トキの良く回る頭では糖分摂取は欠かせないだろうな。だが、飴を食べる時に別の課題が発生する。」

「あ、ちょっ、」

ひょいと手の中の飴を奪われ、何をされるのかと身構えていたら。
くしゃっと包みを開けてくれただけだった。
掌に戻ってきた飴を見ても普通の飴だ。

「ありがとう。」

「ふっ、可愛いな。」

「可愛くないっ、」

「飴が食べたくなったら瓶の蓋と包みを誰かに開けてもらう事、これが二つ目の課題だ。それで何人がお前を可愛いというのか聞くと良い。答えてくれるぞ。」

頬にキスをして、俺の夫は仕事へ行ってしまった。

マジで?
俺、飴しかおやつ食えないのに、その度に誰かに包みを開けてもらいに行くの?邸の中を?
飴玉の入った瓶抱えて、瓶の蓋と飴玉開けてくださいって?


「こ、子供じゃ、ないんだぞっ、!?」

ーーーーー

「おはようございます大統領。」

「あぁ、おはようユディール。」

「その様子だと上手くいった様ですね。」

「あぁ。」

「これで、トキ君の我儘が増えると良いですね。」

「ユディール。明後日の昼頃トキアキを捕まえてみろ。可愛い姿が見れるぞ。」

「ええっ、良いんですか。」

「心臓にだけは気を付けた方が良い。」


ーーー

「あ、の、ゼフ。」

「はいトキ様。何か御用でしょうか。」

ニコニコのゼフが俺の声に振り向いて、応えてくれる。

「贈り物、ありがとう。俺、あの時態度悪くてごめん。」

「いいえトキ様。それより美味しいまたたび酒を味わってくださると嬉しい限りです。」

「分かった。飲んでみる。あと、あの、お願いがあるんだ。」

ピンクと黄色の派手なガラス瓶を持つ手に力が入る。

「これ、開けてく...ださい、」

「グゥーーーッ、」

「い、嫌!?俺も嫌なんだけど、あの、ダメかな!?」

夕方かなり早めに帰ったエルムディンが見たのは、邸中に転がる死屍累々、トキアキ可愛い無双の痕だった。

ーーーーー

ゼフと、執事さんに瓶を開けてもらうとなんだか皆が笑顔になるので、まぁ良いかと開き直り美味しい飴を味わいつつ目の前の紙を眺めている。

まだ足の間がモゾモゾする気がするけど、紐は全部解いた筈だ。
違和感を正座で誤魔化して座り直す。

「私は○○○が好き。」

何が好きかを人に告げる事は俺にとっては、苦痛を伴う。
否定されたくない。
傷付けられたくない。
そして、1番は。
自分が好きな人間が相手も自分と同じくらい俺を好きとは限らない。

エルは例外だ。
アイツは俺を好き。

でも、向こうではそうじゃなかった。
けど、俺はもう向こうには帰れないし、帰りたくはない。
俺は受け入れる事を覚悟するしかないらしい。

同じだけ好きになって欲しかった人が向こうに居た事と、
同じだけ好きになってくれる人がここには沢山居るって事を。

「ごめんな。」

でも俺、此処で生きるって決めたんだ。

とりあえず一行目を書いてみるか。




ーーーーー
お気に入り150超え記念で
恥ずかしい飴玉150個入れてみた。

ありがとうございます♪
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