【1章完結済】【R18】池に落ちたら、大統領補佐官に就任しました。

mimimi456/都古

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第二章:大統領補佐官

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家に着いたら着いたで、おかえりなさいと出迎えてくれる何時もの執事さんを見ては泣き、何時もテーブルにデコを打ちつける度励ましてくれるメイドさんを見ては泣き、ゼフのご飯を目の前にして、また泣いた。

「ごめっ、ん...っ、」

グスグス通り越して、グシャグシャの顔と鼻水でなんとかご飯を済ませると、風呂を勧められた。

「うぅっ、良い匂いするっ、」

オレンジとレモンの香りがする風呂で、さっぱり洗い上がると今度は足湯に、案内された。

「オレンジジュースと、バニラアイス、うまぃぃいっ。」

俺は今、贅沢の極みにいる。
なんだよ。皆に心配してもらって、良い匂いの風呂も最高に美味いジュースもアイスもある。

「うぅっ、」

「満喫していると聞いたが、本当の様だな。」

「うわっ、!ごめん、帰ってきたの気付かなかった」

「良い。」


足湯に入る俺の側まで寄って来たエルが、当たり前に唇を寄せて来る。
ちゅ、と少しだけ吸って吸われて、舌先も少しだけ合わせて離す。
ちょっと、腰がそわつく。

「美味いな。私にもくれないか。」

「ふっ、良いよ。」

ライオンの大統領は、甘い物好きだ。
怖い見た目に反してな。

「オレンジピールが入ってるんだ。まじでうまいんだよ。」

「ピール。」

「オレンジの皮を甘くした奴。」

「皮まで食べられるのか。」

「んうっ、もう、食べただろっ、これ以上はだめだ」

アイスを一口食べただけじゃ飽き足らず、またキスが降って来た。
唇を吸われて、舌をちろっとなぞられると本当にこれ以上はマズい。

「私からも贈り物がある。夕飯を先に済ませるから、もう少し満喫したらリビングへ来てくれ。」

エルの指先が俺の濡れた唇を拭って、ぺろりと舐めやがった。
キスで食った物の味が分かるの恥ずかしいんですけどっ、!?

「これからこれを預かって来た。目元を冷やす用に使う。即効性があるそうだ。」

「ありがとう。」

「アイスが溶けるぞ。」

「あ、やば。」

どうやらあと20分程は此処に居られそうだ。
それまでの間、もう少し良い匂いの足湯とアイスを楽しもう。


「あの、ちょっとこれは、」

リビングと言えど、私室や寝室程のプライベートは無い。
メイドさんや執事さんがドアの向こうで働いているのが分かる。

たった扉一枚隔てたこちら側で、俺はエルの横に立ち、首に革製の飾りを贈られた。


青というより紺の革はゆるやかなレモンの様な形をしていて、白の糸でレースの様に模様が描かれている。

「似合っている。」

「恥ずかしいっ。」

「時々、着けて見せて欲しい。」

そうは言っても、30になりそうな男の首輪、いや、チョーカー姿は大丈夫だろうか。

「でも、なんで...青」

「私はお前を愛している。」

「いっ、!?」

「私も、他の贈り物をした者たちも、お前を好ましいと思っている。それは日頃の態度を見るに伝わっているだろうと私達も思っていた。だが、いざという時。お前には視覚的に思い出させる方が良いと判断した。」

目に入れば、嫌でも思い出すだろう。
グラスを見てゼフの酒を、お茶を飲めばユディールのティーセットを、俯いて足元を見れば靴と銀貨を、土や草を見ればベルモントの鹿を。そして鏡を見ればその首を飾ったチョーカーを思い出して、自信を取り戻して欲しい。

「私達は何時だってお前を気に掛けている。お前が怒っていても、不機嫌でも、変わらずお前を愛している。」

「ふ、ぅ...っ、また泣かすなっ」

せっかく冷やした瞼がまた腫れるのはいやだ。
頬を撫でて来る手首を掴んで、涙を堪えてみる。
すると、そっと低い秘めやかな声で囁かれた。

「実は、別の贈り物がある。」

「なんだよっ、なんでも貰うってばぁ」

感極まって、これ以上は何を貰っても涙が出るに決まってる。
それならもう全部、今貰ってわんわん泣きたい。

「そっちは、二人の時に贈る。」

「いま、ふたりだけどっ、?」

「寝室で。お前だけに贈る物だ。分からないか?」


おい。
涙、引っ込んだんですけど。


「青色のチョーカー、妙だと思ったっ、けどもう俺のだから返さないからなっ、ひっく。」

びっくりして涙が引っ込んだら、今度はしゃっくり出てきた。
最悪。何だこれ。

「伝統で、青色を贈ると決まっていたからな。ベルに聞かなかったのか?」

「聞いて、ひっく、ないっ、」

「可愛いしゃっくりだな。」

「うぅーーーっ。」

「落ち着いたら、ベッドへ運んでも良いか。」

頬に、キスが降ってきた。
髪をくしゃりと撫でて、耳を掠めて手が離れていく。

「良いけどっ、説明、してくれっ」

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