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番外編
番外編 賞杯とその効果
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この国の支えのひとりであるデルモント・クイレは美味い酒とそれを注ぐグラスを集めている。
ベルモント・クイレは限りなく無害な爪染色を作って以来、化粧関連の開発に勤しんでいる。
医者の知識で趣味と実益を兼ねている。
マルロイ・コールマンは彼の妻がコレクションだ。
私もその気持ちは分からなくも無いが、多少行き過ぎではないかと心配している。
だが、ユディールが許している様なので私が口を出す事もない。
そしてその彼はペンを沢山持っているとトキが話していた。
特に万年筆を。
つまり、これはそう言うことなのか。
「おかえりエル。お昼食べた?」
まるで不自然な事など何も無いと言った風で、夏用に模様替えをしたアトリウムはラグを敷き、日除けを足して少し広めのローテーブルと共に床でくつろぐ彼だが。
「トキアキ。何故、テーブルの上に白鳥が居るのか教えてくれないか。」
「え?」
「それは、陶器では無いな。」
「あぁ、うん。紙で作ってる。触ってみる?」
下からそっと持ち上げられた白鳥は、トキアキから私の手に移された。見た目より重量がある。
「鱗の様だ。」
「トゲトゲね。」
「本当に紙だけでこれを作ったのか?」
「何、そんなに気になるのか?本当に紙だけだよ。あとボンドと、ピンセット代わりの爪楊枝くらいかな。」
まだ知らない一面を見せてくるのか。
「素晴らしいな。この様な物は近隣諸国でも見た事がない。」
「まぁ、伝統工芸品かもな。いや、民芸品か?」
首を傾げどっちだ、と唸っている。
「トキアキ。」
「ん?」
「私は今、後悔している。」
彼は技術者では無いと始めに言っていた。
芸術家でも無く、絵は描けないし楽器も弾けない、詩も詠めないと首を振って笑っていた。
私の聞き方がいけなかったのだと、たった今痛感した。
何か得意な事はあるか、とも尋ねた。
彼ははっきり、何も無いと言った。
"仕事くらいですかね。辛抱強いのが取り柄です"
蒼白い顔で眉を寄せてすみません、と続けた。
「私は。お前の可能性を潰してしまったのかも知れない。」
プロポーズより先に結婚が決まっていた様な男だ。
有能な人材だと私は彼を囲い込んだ。
あらゆる雑務を経験させ人脈をつくらせた後、秘書課に移し情報網を鍛えさせ、大統領補佐官に任命する。
我々の予定通り、その後任に彼はなった。
予想を遥かに超えてトキアキは働いてくれたが、こんなものが作れるのなら。
彼には別の道があったのでは無いか。
それこそケーキ屋も、飯屋も、開けたのではないか。
繊細な指先なら、何処かの職人になれたかも知れない。
異界の彼の知識はきっその道に大いに役立った筈だ。
現に私は今、見たこともない作品を目にしている。
「ユニット折り紙、とかブロック折り紙とか言う奴だよ。」
隣に座れ、と促される。
「身体は大丈夫か。」
「なんとかね。まだ腹がむずむずするけど。」
もう一晩眠り、今朝。
無茶をさせた彼は立って歩けるまで回復したようだ。
「ばあちゃんの知恵袋、って奴だな。これをこうして、ここにグサっと刺す。折り紙なんか男がする仕事じゃないって言われたけど、俺運動苦手でさ。勉強は努力でなんとか出来たし、それで本なんか広げてたら褒められたんだ。それが折り紙の本でもね。」
「折り紙?」
「そう。紙で作るこういう奴の事。けど俺は特別器用って訳じゃない。折り方をいくら本で読んだって初めはよく分かんなくて、ばあちゃんに教えてもらってやっと出来たんだ。その内、じいちゃんですら興味出してきてーーー…」
トキアキはあまり家族の話をしたがらない。
子供の頃の話も少し聞いただけだ。
その彼がこうも饒舌に家族に関する話をしている。
「俺、努力って好きだ。あんたからしたらコレは生産性のある商品に見えるのかも知れないけど。俺からすれば唯のストレス発散だよ。料理とおなじ。」
「ふむ。」
「ひたすら黙々と同じパーツを折って完成図目指して組み立て続ける、っていう面倒な行為が好きなんだ。閃くまで考え続けるなんて俺は苦手。」
ニッ、と笑って見せた。
まるで悪戯が成功したように瞳を煌めかせている。
全く、眩しい表情をする様になった。
それによく喋るようにもなった。
愛おしい変化だ。
「要らぬ心配だったな。」
「じゃなきゃ、大統領補佐官なんて命令されても断るよ普通。」
「では自分でも適職だと自覚しているのだな?」
「まぁね。今の所見習いだけどこの仕事結構好きだ。努力で..解決出来るうちはね。」
「トキアキ。」
「あ。」
しまった、という表情を浮かべてももう遅い。
それはつまり彼の努力だけでは解決出来ない事案が持ち上がっているという事だ。
私なら捨ておけ、と言い放つのだが。
トキアキはそれらを一々気に病んでいる。
若く経験の浅い異界の彼は突きどころがあるのだろう。
しかしそれらも軽くいなさなくては、大統領補佐官は務まらない。
「大丈夫。それを今考えてたんだ。アイツマジで絶対ぶっ潰してやる。デルモントさんよりゲスい作戦考えて引き摺り下ろしてやる。」
「ふっ、そうか。」
「なんだよ、大統領が止めたって大統領補佐官はやる気満々だからな!誰もあの人は止められないだろっ、」
「私は今、大統領ではない。妻の愚痴を聞く唯の夫だ。不都合な事は何も聞こえ無かったな。」
「そう?」
「そうだ。」
私の番は思いがけない事をするかと思えば、無邪気に笑い、こうして悪い顔もする。
「しかし、これは勿体ないな。執務室にひとつ欲しい。」
「お客さん様?」
「いや、私の休息用に。」
「あげるのは良いけど。」
何か考えている。
やはり不都合だっただろうか。
「これ、とりあえず持って行っていいよ。代わりに違うの作りたいから何日か待ってくれる?」
「良いのか。」
「良いよ。白鳥気に入ってんじゃん。代わりに、後のが出来たらソイツと交換ね。」
私は手の中の白鳥をなぞる。
こんなに愛嬌のある担保は初めてだな。
ーーーーー
「あれ、大統領。何ですかコレ。凄いですね。」
目敏い男の筆頭だな彼は。
「もしかしてトキ君ですか。お昼、ご自宅に戻られてましたよね。凄い特技だ。」
書類を渡す序でに、茶を淹れる。
私は思わず少し休んでいけ、と声をかけた。
「前は、窓枠と小物どっちを取るか悩んでいた。」
「律儀ですもんねトキ君。」
「それが今年の夏は好きな様に模様替えしていた。」
「へぇ。可愛い変化ですね。」
「それも、カタログはどっちも気に入らないから、頼んだそうだ。」
「大胆。流石トキ君。因みに何を頼んだんですか?」
「テーブルだ。床に座って寛げるほどの低い物だ。」
私も初めは見慣れない光景だった。
トキが床に座っているのを見ると、体を痛めないか、柔い所へ座らないかと促した程だ。
だが、その。
彼が正座、と言う作法でラグの上に座っているのを見ると。
愛おしい衝動に襲われる。
「ああ、彼、秘書課の椅子の上でも時々足を畳んで座っていましたよ。あれ可愛いですよね。ちょこんとしてて。」
「前に作らせたランプも売れ行きが良い。」
「知ってますよ。間接照明の新しいアイデアでしたから。それで、これも商品化する予定ですか?」
「それは分からないが。他にも違う細工のものを作ってくれるそうだ。」
ユディールはトキを殊更気に入っている。
境遇がそうさせるのか、私には分からないが。
立場上トキが、ユディールを呼び捨てにする様になっても、二人は良く笑い合っているのを見かける。
「初めは、片方ではなく両方を選べる様になれば良いと思っていた。」
コーヒーか紅茶か。
しかし、この数年でトキは目覚ましい変化を遂げた。
元から持っていた才能なのかも知れない。
彼は、自分の事をよく考える様になった。
今なら、我慢してどちらかを選ぶ。
いや、両方にしよう。
ではなく、これなら皆美味しく飲めるよと言って麦茶を出して来るのだろう。
「それが、第三の選択肢を持って来るまでになった。」
この変化はユディール無しでは得られなかった成果だ。
彼がトキに仕事の相談をしていなければ、何も始まっていなかった。
彼は自分を数に入れる、と言う事を覚えたのだ。
「嬉しそうですね大統領。」
「あぁ。マルロイが妻の変化は楽しいと溢していた意味が、今なら分かる。」
「えっ、!?嫌だなぁ。その話は聞きたくないです。」
私はこのユディールと、トキに賞杯を贈りたい。
金の装飾を付け、プレートに刻む文字は。
"愛おしい変化に"
ーーーーー
後日、来賓室に俺の白鳥が飾られるようになった。
そして、大統領執務室には。
森の中に昔から住んでるあのキャラ達を置いた。
三つ並ぶそれをエルはただ、愛嬌があると言って飾ってくれた。
さらに後日。
大統領執務室には、その飾り物見たさに来客が増えたらしい。
しかも。
デルモントさんに、鹿が作れるかと聞かれた時は面食らった。
「円柱っぽいのじゃないと無理かと、思います。」
断らざるを得なかった。
申し訳ないと思っていたら、声を掛けてくれた。
「妻が鹿に似ているのだ。」
「そうですか。」
「誕生日プレゼントで負ける訳にはいかなくてな。」
奥さんと誕生日プレゼント張り合うのか?
意外だな。
「あ。」
「なんだ?」
「この前、テーブルを作ってもらったギルド紹介の工務店さんが、趣味で小さな人形を作ってるんですよ。端材から削り出して磨いて作ったって言ってました。」
因みに行燈もここだ。
「場所は。」
「職人ギルドの2本裏、西へ3件目オリバー工務店です。」
「ありがとう。」
「あ、いえ、どういたしまして。」
「ベルに聞かれたら黙っている様に。」
「え、えぇ。分かりました?」
おじいちゃん先生、
お兄さんの奥さんにも誕生日プレゼントあげるのか。
偉いなぁ。
完
ベルモント・クイレは限りなく無害な爪染色を作って以来、化粧関連の開発に勤しんでいる。
医者の知識で趣味と実益を兼ねている。
マルロイ・コールマンは彼の妻がコレクションだ。
私もその気持ちは分からなくも無いが、多少行き過ぎではないかと心配している。
だが、ユディールが許している様なので私が口を出す事もない。
そしてその彼はペンを沢山持っているとトキが話していた。
特に万年筆を。
つまり、これはそう言うことなのか。
「おかえりエル。お昼食べた?」
まるで不自然な事など何も無いと言った風で、夏用に模様替えをしたアトリウムはラグを敷き、日除けを足して少し広めのローテーブルと共に床でくつろぐ彼だが。
「トキアキ。何故、テーブルの上に白鳥が居るのか教えてくれないか。」
「え?」
「それは、陶器では無いな。」
「あぁ、うん。紙で作ってる。触ってみる?」
下からそっと持ち上げられた白鳥は、トキアキから私の手に移された。見た目より重量がある。
「鱗の様だ。」
「トゲトゲね。」
「本当に紙だけでこれを作ったのか?」
「何、そんなに気になるのか?本当に紙だけだよ。あとボンドと、ピンセット代わりの爪楊枝くらいかな。」
まだ知らない一面を見せてくるのか。
「素晴らしいな。この様な物は近隣諸国でも見た事がない。」
「まぁ、伝統工芸品かもな。いや、民芸品か?」
首を傾げどっちだ、と唸っている。
「トキアキ。」
「ん?」
「私は今、後悔している。」
彼は技術者では無いと始めに言っていた。
芸術家でも無く、絵は描けないし楽器も弾けない、詩も詠めないと首を振って笑っていた。
私の聞き方がいけなかったのだと、たった今痛感した。
何か得意な事はあるか、とも尋ねた。
彼ははっきり、何も無いと言った。
"仕事くらいですかね。辛抱強いのが取り柄です"
蒼白い顔で眉を寄せてすみません、と続けた。
「私は。お前の可能性を潰してしまったのかも知れない。」
プロポーズより先に結婚が決まっていた様な男だ。
有能な人材だと私は彼を囲い込んだ。
あらゆる雑務を経験させ人脈をつくらせた後、秘書課に移し情報網を鍛えさせ、大統領補佐官に任命する。
我々の予定通り、その後任に彼はなった。
予想を遥かに超えてトキアキは働いてくれたが、こんなものが作れるのなら。
彼には別の道があったのでは無いか。
それこそケーキ屋も、飯屋も、開けたのではないか。
繊細な指先なら、何処かの職人になれたかも知れない。
異界の彼の知識はきっその道に大いに役立った筈だ。
現に私は今、見たこともない作品を目にしている。
「ユニット折り紙、とかブロック折り紙とか言う奴だよ。」
隣に座れ、と促される。
「身体は大丈夫か。」
「なんとかね。まだ腹がむずむずするけど。」
もう一晩眠り、今朝。
無茶をさせた彼は立って歩けるまで回復したようだ。
「ばあちゃんの知恵袋、って奴だな。これをこうして、ここにグサっと刺す。折り紙なんか男がする仕事じゃないって言われたけど、俺運動苦手でさ。勉強は努力でなんとか出来たし、それで本なんか広げてたら褒められたんだ。それが折り紙の本でもね。」
「折り紙?」
「そう。紙で作るこういう奴の事。けど俺は特別器用って訳じゃない。折り方をいくら本で読んだって初めはよく分かんなくて、ばあちゃんに教えてもらってやっと出来たんだ。その内、じいちゃんですら興味出してきてーーー…」
トキアキはあまり家族の話をしたがらない。
子供の頃の話も少し聞いただけだ。
その彼がこうも饒舌に家族に関する話をしている。
「俺、努力って好きだ。あんたからしたらコレは生産性のある商品に見えるのかも知れないけど。俺からすれば唯のストレス発散だよ。料理とおなじ。」
「ふむ。」
「ひたすら黙々と同じパーツを折って完成図目指して組み立て続ける、っていう面倒な行為が好きなんだ。閃くまで考え続けるなんて俺は苦手。」
ニッ、と笑って見せた。
まるで悪戯が成功したように瞳を煌めかせている。
全く、眩しい表情をする様になった。
それによく喋るようにもなった。
愛おしい変化だ。
「要らぬ心配だったな。」
「じゃなきゃ、大統領補佐官なんて命令されても断るよ普通。」
「では自分でも適職だと自覚しているのだな?」
「まぁね。今の所見習いだけどこの仕事結構好きだ。努力で..解決出来るうちはね。」
「トキアキ。」
「あ。」
しまった、という表情を浮かべてももう遅い。
それはつまり彼の努力だけでは解決出来ない事案が持ち上がっているという事だ。
私なら捨ておけ、と言い放つのだが。
トキアキはそれらを一々気に病んでいる。
若く経験の浅い異界の彼は突きどころがあるのだろう。
しかしそれらも軽くいなさなくては、大統領補佐官は務まらない。
「大丈夫。それを今考えてたんだ。アイツマジで絶対ぶっ潰してやる。デルモントさんよりゲスい作戦考えて引き摺り下ろしてやる。」
「ふっ、そうか。」
「なんだよ、大統領が止めたって大統領補佐官はやる気満々だからな!誰もあの人は止められないだろっ、」
「私は今、大統領ではない。妻の愚痴を聞く唯の夫だ。不都合な事は何も聞こえ無かったな。」
「そう?」
「そうだ。」
私の番は思いがけない事をするかと思えば、無邪気に笑い、こうして悪い顔もする。
「しかし、これは勿体ないな。執務室にひとつ欲しい。」
「お客さん様?」
「いや、私の休息用に。」
「あげるのは良いけど。」
何か考えている。
やはり不都合だっただろうか。
「これ、とりあえず持って行っていいよ。代わりに違うの作りたいから何日か待ってくれる?」
「良いのか。」
「良いよ。白鳥気に入ってんじゃん。代わりに、後のが出来たらソイツと交換ね。」
私は手の中の白鳥をなぞる。
こんなに愛嬌のある担保は初めてだな。
ーーーーー
「あれ、大統領。何ですかコレ。凄いですね。」
目敏い男の筆頭だな彼は。
「もしかしてトキ君ですか。お昼、ご自宅に戻られてましたよね。凄い特技だ。」
書類を渡す序でに、茶を淹れる。
私は思わず少し休んでいけ、と声をかけた。
「前は、窓枠と小物どっちを取るか悩んでいた。」
「律儀ですもんねトキ君。」
「それが今年の夏は好きな様に模様替えしていた。」
「へぇ。可愛い変化ですね。」
「それも、カタログはどっちも気に入らないから、頼んだそうだ。」
「大胆。流石トキ君。因みに何を頼んだんですか?」
「テーブルだ。床に座って寛げるほどの低い物だ。」
私も初めは見慣れない光景だった。
トキが床に座っているのを見ると、体を痛めないか、柔い所へ座らないかと促した程だ。
だが、その。
彼が正座、と言う作法でラグの上に座っているのを見ると。
愛おしい衝動に襲われる。
「ああ、彼、秘書課の椅子の上でも時々足を畳んで座っていましたよ。あれ可愛いですよね。ちょこんとしてて。」
「前に作らせたランプも売れ行きが良い。」
「知ってますよ。間接照明の新しいアイデアでしたから。それで、これも商品化する予定ですか?」
「それは分からないが。他にも違う細工のものを作ってくれるそうだ。」
ユディールはトキを殊更気に入っている。
境遇がそうさせるのか、私には分からないが。
立場上トキが、ユディールを呼び捨てにする様になっても、二人は良く笑い合っているのを見かける。
「初めは、片方ではなく両方を選べる様になれば良いと思っていた。」
コーヒーか紅茶か。
しかし、この数年でトキは目覚ましい変化を遂げた。
元から持っていた才能なのかも知れない。
彼は、自分の事をよく考える様になった。
今なら、我慢してどちらかを選ぶ。
いや、両方にしよう。
ではなく、これなら皆美味しく飲めるよと言って麦茶を出して来るのだろう。
「それが、第三の選択肢を持って来るまでになった。」
この変化はユディール無しでは得られなかった成果だ。
彼がトキに仕事の相談をしていなければ、何も始まっていなかった。
彼は自分を数に入れる、と言う事を覚えたのだ。
「嬉しそうですね大統領。」
「あぁ。マルロイが妻の変化は楽しいと溢していた意味が、今なら分かる。」
「えっ、!?嫌だなぁ。その話は聞きたくないです。」
私はこのユディールと、トキに賞杯を贈りたい。
金の装飾を付け、プレートに刻む文字は。
"愛おしい変化に"
ーーーーー
後日、来賓室に俺の白鳥が飾られるようになった。
そして、大統領執務室には。
森の中に昔から住んでるあのキャラ達を置いた。
三つ並ぶそれをエルはただ、愛嬌があると言って飾ってくれた。
さらに後日。
大統領執務室には、その飾り物見たさに来客が増えたらしい。
しかも。
デルモントさんに、鹿が作れるかと聞かれた時は面食らった。
「円柱っぽいのじゃないと無理かと、思います。」
断らざるを得なかった。
申し訳ないと思っていたら、声を掛けてくれた。
「妻が鹿に似ているのだ。」
「そうですか。」
「誕生日プレゼントで負ける訳にはいかなくてな。」
奥さんと誕生日プレゼント張り合うのか?
意外だな。
「あ。」
「なんだ?」
「この前、テーブルを作ってもらったギルド紹介の工務店さんが、趣味で小さな人形を作ってるんですよ。端材から削り出して磨いて作ったって言ってました。」
因みに行燈もここだ。
「場所は。」
「職人ギルドの2本裏、西へ3件目オリバー工務店です。」
「ありがとう。」
「あ、いえ、どういたしまして。」
「ベルに聞かれたら黙っている様に。」
「え、えぇ。分かりました?」
おじいちゃん先生、
お兄さんの奥さんにも誕生日プレゼントあげるのか。
偉いなぁ。
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