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番外編
番外編 鉄が溶けるほどに1*
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「ディー」
「ディー」
「頼むよ。お願いだディー。」
「嗚呼、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い」
外は風が冷たく、まだ春とは言えない中。
部屋は数日前から暖炉の火を絶やさずにいた。
暑すぎるんじゃ無いか、と告げた僕にこれで良いんだよと笑っていた。
その奇妙な笑顔に
些細な違和感に僕は気付くべきだったんだ。
●
「このランプすごく明るい。」
「太陽に当たるのと同じくらいの効果があるそうだよ。」
「ふーん。日光浴したいの?」
「そう。僕猫だから。」
そう言うもんか、と思ったんだ。
僕は人間だから、半分獣の彼が言うならそうなんだろうと思ったんだけど。
よく考えたら可笑しいじゃないか。
今までアイツが日光浴したい、なんて聞いた事ない。
いつも冬はつまらなそうに窓を眺めては、暖炉の前を陣取っている。
そして春、暖かくなり始めた頃。
マルロイは何時も発情期に苦しんでいる。
僕も気絶するまで行為を受け入れるのは大変だな、と思っていたけど。
僕に発情するアイツは真っ黒の猫耳が生えて、憎めない。
だが、人間の耳はどこへ行くんだろうか。
それにアイツのアレ。
猫の時のアレは不味い。
僕はアイツの発情期が少し苦手だ。
●
「ただいま、ユディール君。」
「おかえり。」
「あぁ、その顔。聞いたんだね?」
「聞いた。さっき。帰る時に知らされた。」
「そう。良かったよ。」
「良くないだろ、なんだよ、今日から1ヶ月"番休暇"って。」
「そのままの意味だよユディール君。」
カチャン、と玄関の鍵が掛かる音がした。
ジャラリ、と鎖の音がして玄関扉に巻き付いた所で。
カチャン、と今度は小さな南京錠の音がした。
カギは、無い。
ダイヤル式。
あぁ、魔力式だと開くかもしれないからね。
なんて思っていたら目の前の男が、変化した。
「僕ねユディール君。」
シュル、とネクタイを緩める音がした。
「ずっと後悔してたんだ。」
軍帽をラックに掛け、上着を脱ぐと真っ白のシャツが現れる。
「発情期の間、僕は僕じゃ無くなる。酷く抱くしか能のない雄に成り下がり、可愛い僕のディーを何時も傷付ける。僕はそんな自分を罰したくてしょうがなかった。」
「そ、れは、気にしなくて良いって話し合っただろ、!?」
「そうだねユディール君。"気にしなくて良い"って君は言う。でもね。君を傷付けない良い方法を見つけたんだ。」
するり、と腰を抱かれグッと掴まれる。
「これで君をママに出来る。」
「ディー」
「頼むよ。お願いだディー。」
「嗚呼、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い」
外は風が冷たく、まだ春とは言えない中。
部屋は数日前から暖炉の火を絶やさずにいた。
暑すぎるんじゃ無いか、と告げた僕にこれで良いんだよと笑っていた。
その奇妙な笑顔に
些細な違和感に僕は気付くべきだったんだ。
●
「このランプすごく明るい。」
「太陽に当たるのと同じくらいの効果があるそうだよ。」
「ふーん。日光浴したいの?」
「そう。僕猫だから。」
そう言うもんか、と思ったんだ。
僕は人間だから、半分獣の彼が言うならそうなんだろうと思ったんだけど。
よく考えたら可笑しいじゃないか。
今までアイツが日光浴したい、なんて聞いた事ない。
いつも冬はつまらなそうに窓を眺めては、暖炉の前を陣取っている。
そして春、暖かくなり始めた頃。
マルロイは何時も発情期に苦しんでいる。
僕も気絶するまで行為を受け入れるのは大変だな、と思っていたけど。
僕に発情するアイツは真っ黒の猫耳が生えて、憎めない。
だが、人間の耳はどこへ行くんだろうか。
それにアイツのアレ。
猫の時のアレは不味い。
僕はアイツの発情期が少し苦手だ。
●
「ただいま、ユディール君。」
「おかえり。」
「あぁ、その顔。聞いたんだね?」
「聞いた。さっき。帰る時に知らされた。」
「そう。良かったよ。」
「良くないだろ、なんだよ、今日から1ヶ月"番休暇"って。」
「そのままの意味だよユディール君。」
カチャン、と玄関の鍵が掛かる音がした。
ジャラリ、と鎖の音がして玄関扉に巻き付いた所で。
カチャン、と今度は小さな南京錠の音がした。
カギは、無い。
ダイヤル式。
あぁ、魔力式だと開くかもしれないからね。
なんて思っていたら目の前の男が、変化した。
「僕ねユディール君。」
シュル、とネクタイを緩める音がした。
「ずっと後悔してたんだ。」
軍帽をラックに掛け、上着を脱ぐと真っ白のシャツが現れる。
「発情期の間、僕は僕じゃ無くなる。酷く抱くしか能のない雄に成り下がり、可愛い僕のディーを何時も傷付ける。僕はそんな自分を罰したくてしょうがなかった。」
「そ、れは、気にしなくて良いって話し合っただろ、!?」
「そうだねユディール君。"気にしなくて良い"って君は言う。でもね。君を傷付けない良い方法を見つけたんだ。」
するり、と腰を抱かれグッと掴まれる。
「これで君をママに出来る。」
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