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番外編
番外編 タカの我欲のままに 2
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ねぇ、ちょっと。」
「聞いてる?」
「デルモント・クイレ!あなた本当に失礼な人ね!」
私の仕事を邪魔するのは、彼女が初めてだ。
耳障りで五月蝿い事この上ない。
「君はどうなんだナタリア。私の仕事中に私の書斎で大声でがなり立てるのは失礼に当たらないのか?」
「昼食を持ってきてくれてありがとう、ナタリア。どういたしましてデルモント。」
彼女は逞しかった。
優雅にスカートを摘まんだかと思うとバタン、と大きな音を立てて扉を閉めて出て行った。
逞しいを通り越して、図々しいと言い換えても良いだろう。
おまけに、弟からリタの事を聞いたのだろう。
食うものも食わず仕事ばかりしては遠くを見る私に、懲りもせず世話を焼いてくる。
今のように言い返して来ては、鍋を置いて弟の家へ帰っていく。
あれも医者の端くれだ。なかなか家に帰る日が無いと言っていた。
「ふっ」
しかし、今のは何だ。
自分で言って自分で返事をしたのか。
面白い女だ。
「ねぇ、ちょっと。」
「聞いてる?」
「あぁ、聞いてる。」
「あなたの衣装の話をしているのよ?」
「あぁ、君の好きにしたら良い。」
ふぅ、とため息を吐いているようだ。
だが、それは私も同じだ。
気が付けば私のスーツは彼女が選ぶようになっていた。
瞳の色と良く似合っている、と言われ適当に締めていた決まった店の決まった色のネクタイに、色が混じるようになった。
銀行を辞めてから政治の道に進んだ私に、色は要らないだろうと思っていたのだが。
手洗いに立つ度に目に入り、そうなると急に袖口が寂しいような気がしてきた。
政治家にはちょっとしたアクセントが要るのかもしれない。
帰りに何時もの店に寄り、小さな包みを持って帰る。
何時もの場所、何時もの時間に彼女が私の世話を焼きに来る。
「かわいい。」
小さなそれをそっと手に取って食い入るように見つめている。
その瞳も、それに良く似ていると思った。
小さなガラス細工。
色も丁度同じだしな。
「でも、これは少し派手じゃないの?」
私の仕事を気にしているのか。
だが、私が今鍛えている男は私より派手好みでこのくらいなんと言うことは無いと思っている。
先日もライオンをあしらったタイピンを作らせていた。
最近の若い者はこういうものが好きなのかと頭を悩ませた。
彼女もアレと同じ年頃だし、このくらいが良いのかと考えた結果だ。
「私は買い物をしただけだ。」
「そう?」
「そこら辺に置いて、眺めるだけでも”価値”は有る。」
「そうね?」
ラぺルピンと言う物は、どうも好きになれない。
政治の世界は堅苦しいしきたりに重きを置く。
だから、これは私用の買い物だ。
私は身に付けないが、彼女が眺める。
私も弟も彼女に対する見解が一部、はっきりとしている。
ーーーその顔立ちは朝霧のように儚く美しく。
その四肢は鹿のようにたおやかでしなやか。
このブローチの鹿のように。
「聞いてる?」
「デルモント・クイレ!あなた本当に失礼な人ね!」
私の仕事を邪魔するのは、彼女が初めてだ。
耳障りで五月蝿い事この上ない。
「君はどうなんだナタリア。私の仕事中に私の書斎で大声でがなり立てるのは失礼に当たらないのか?」
「昼食を持ってきてくれてありがとう、ナタリア。どういたしましてデルモント。」
彼女は逞しかった。
優雅にスカートを摘まんだかと思うとバタン、と大きな音を立てて扉を閉めて出て行った。
逞しいを通り越して、図々しいと言い換えても良いだろう。
おまけに、弟からリタの事を聞いたのだろう。
食うものも食わず仕事ばかりしては遠くを見る私に、懲りもせず世話を焼いてくる。
今のように言い返して来ては、鍋を置いて弟の家へ帰っていく。
あれも医者の端くれだ。なかなか家に帰る日が無いと言っていた。
「ふっ」
しかし、今のは何だ。
自分で言って自分で返事をしたのか。
面白い女だ。
「ねぇ、ちょっと。」
「聞いてる?」
「あぁ、聞いてる。」
「あなたの衣装の話をしているのよ?」
「あぁ、君の好きにしたら良い。」
ふぅ、とため息を吐いているようだ。
だが、それは私も同じだ。
気が付けば私のスーツは彼女が選ぶようになっていた。
瞳の色と良く似合っている、と言われ適当に締めていた決まった店の決まった色のネクタイに、色が混じるようになった。
銀行を辞めてから政治の道に進んだ私に、色は要らないだろうと思っていたのだが。
手洗いに立つ度に目に入り、そうなると急に袖口が寂しいような気がしてきた。
政治家にはちょっとしたアクセントが要るのかもしれない。
帰りに何時もの店に寄り、小さな包みを持って帰る。
何時もの場所、何時もの時間に彼女が私の世話を焼きに来る。
「かわいい。」
小さなそれをそっと手に取って食い入るように見つめている。
その瞳も、それに良く似ていると思った。
小さなガラス細工。
色も丁度同じだしな。
「でも、これは少し派手じゃないの?」
私の仕事を気にしているのか。
だが、私が今鍛えている男は私より派手好みでこのくらいなんと言うことは無いと思っている。
先日もライオンをあしらったタイピンを作らせていた。
最近の若い者はこういうものが好きなのかと頭を悩ませた。
彼女もアレと同じ年頃だし、このくらいが良いのかと考えた結果だ。
「私は買い物をしただけだ。」
「そう?」
「そこら辺に置いて、眺めるだけでも”価値”は有る。」
「そうね?」
ラぺルピンと言う物は、どうも好きになれない。
政治の世界は堅苦しいしきたりに重きを置く。
だから、これは私用の買い物だ。
私は身に付けないが、彼女が眺める。
私も弟も彼女に対する見解が一部、はっきりとしている。
ーーーその顔立ちは朝霧のように儚く美しく。
その四肢は鹿のようにたおやかでしなやか。
このブローチの鹿のように。
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