52 / 77
第一章:キハラ トキアキ
第十三話
しおりを挟むさて、今日が約束の1週間だが。
やっぱり俺の気持ちは変わらない。
「来たか。」
俺は大統領室の扉をノックする。そこにはエルともう一人。
デルモントさんまでいた。
「まぁ、座れ。」
「失礼します。」
俺は促されてソファに座った。
向かいには大統領とその補佐官。
なんだ。面接みたいになってるぞ。
この国のツートップが並んで俺を見ている。
こんなん圧が凄すぎて窒息するわ。
「それで、お前の意見を聞こうトキアキ。」
俺は背筋を伸ばして答えた。
「俺の気持ちは変わりません。」
「理由を聞こう。」
「正直言います。俺には荷が重すぎます。一つ一つに考慮すべき件が多すぎて、それを全て思慮できるほど俺はまだこの国に詳しくない。今から学んで覚えるには時間が掛かり過ぎます。それと、経験が足りないと思います。あと…若過ぎます。俺みたいな若輩者では、逆に舐められるかも知れません。」
俺は、膝に置いた拳を強く握り締める。こんなに情けないプレゼンが有るもんか。
だがこれは、俺がこの七日で学んだ俺の弱点であり、欠点だ。
言ってて悲しくなるが、国の大事な柱に不安要素は要らない。
そう思うだろ。
「他には。」
「いえ、有りません。以上です。」
「分かった。少し待っていろ。」
「分かりました。」
「茶はそこにあるものを好きに飲みなさい。」
「へ、ぁ、ありがとうございます。」
そう言って、大統領とデルモントさんは隣の部屋へと移って行った。
俺の今後の対応を話し合っているのかな。
俺はエルが言っていたようにお茶を淹れることにした。
ぼうっとしてても仕方ないし、何かしてないと落ち着いていられない。
琥珀の綺麗な紅茶は、いい匂いがする。
俺、どうなるのかなぁ。出来れば秘書室に戻してくれると良いんだけど。
何なら妊活…だっけか。とか何とか言って辞めてもいいかなぁ。
せっかく俺を選んでくれたのに。期待に応えられなくて申し訳ないと思う。
でも、池から落ちたら、大統領の恋人が出来て、結婚して仕事も落ち着いてきたと思ったら。
今度は大統領補佐官だって。夢みたいだ。
いや、夢じゃないな。マグが熱いから間違いないぞ。
でも。妊活は良いかも知れん。だってライオンのアレは凄そうだ。色々覚悟が要りそうだし。
って、俺は何を考えてるんだ、!
ここは大統領執務室だぞ。
頭をブンブン振って、煩悩をマッハで追い出していると丁度。ドアが開いた。
見られた。見られたぞ。絶対見たな、!?
「どうかしたか?」
「う、ううん!大丈夫!」
「そうか。では、お前の今後について話していた。」
横でデルモントさんが腕を組んで神妙な顔で俯いている。
何か嫌な感じがする。
「お前は今後、大統領補佐官の補佐として職務に就いてもらう。」
「はい、分かりま…し、え。」
なんて?
「あの、秘書ではないんですか?」
「違う。お前は私の補佐として側に着いてもらう。」
今日初めてデルモントさんが口を開いた。
「いや、それじゃ昨日までと一緒なんじゃ…」
「そうだ。」
「何故ですか?」
「見込みがある。以上だ。」
「以上、ですか。」
「そうだ。これ以上の語論が必要か?」
デルモントさんは至極面倒くさそうに天井を見つめて言うが、説明は必要です。
「まず、俺はこの国に詳しくありません、それはどうするつもりですか、?」
「だから私に着けと言っている。」
「では、時間は。デルモントさんは早期に引退される予定ですよね。」
「予定は変わる。お前が一人前になるまでは私が着く。完全に引退を予定いていたが、お前ばかりに無理を押し付けるのはよくないとコイツが言うからな。私はその後、相談役という立場に居よう。」
それは、俺のためにわざわざ役職をひとつ作ってくれるという事だろうか。
大統領も凄いけど、デルモントさんも凄いな。
「じゃあ、俺が若過ぎるというのはどうするんですか。」
「だから如何だというのだ。そんなものねじ伏せてしまえ。」
「いやいや、そんな強引な手で通じますかね。」
「お前はあのラッパ小僧を黙らせたのだろう。その手腕を発揮する時だ。」
それは以前、白紙の手紙で脅した何とか君の事だろうか。
「あ、あのっ、!これ…断れるんですかね。」
「何故だ。」
「何故?」
二人が意味がわからないという顔をして、こっちを見た。
「やっぱり、?」
「トキ、これは最後の手段にと取っておいたんだが。私は切り札を使うべきか悩んでいる。」
「うむ。」
デルモントさんまでが深く頷いている。
なるほど。
エルムディン・メ・エリタ最後の切り札とはつまり。
「大統領命令、ですか。」
大統領は無言で頷いた。YESとは言わなかった。
「あくまで私はお前の意志を尊重したい。」
これはつまり、そういう事である。
大人の掟は何処も一緒だ。
俺は一瞬向こうの会社を思い出した。
「まさか、大統領補佐官に就任するなんて。」
「だが、受けるしかあるまい。」
「そうだぞ。」
20
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる