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第一章:キハラ トキアキ
第十二話
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「それで?」
「なんだ?」
「俺に何をして欲しいわけエルムディン?」
ここは敢えて、名前で呼んでみる。
交渉ごとは先手必勝。
今の所、デートにレストランの予約など後手に回っている俺だが、やるときはやる男だ。
「バレていたか。」
「まぁね。仕事の話、じゃ無いよな?」
「まぁ、それも後々は関係してくるが。そんな騙し打ちみたいな事は私は好まない。」
「じゃあ、なに?」
もしかして、愛人でも出来たのか。
いやでも、番に愛人は必要ないだろ。
いやいや、そうとなると。子供か。
そろそろ孫の顔が見たい事件か。
あれ。そういえば俺、結構な頻度でエルとそう言うことをシてるけど。
この国に避妊という概念は存在しないのか。
エルは毎度毎度、俺の中に全部注ぎ込んでいる。
それでも子供が出来ないと言うことは、俺かエルかどちらかに生殖機能が無いのか。
そうだとするなら、やはり俺だろうか。
でも、おじいちゃん先生はちゃんと妊娠できる身体になってるって言ってた。
それなら、問題はエルの方?
「お、俺は…エル以外とするのは嫌だからな。」
「あ、あぁ。トキそれは違う。誤解だからそんな顔をしないで良い。私もお前もきちんと子供を成せる。安心しなさい。」
「本当か、?」
「あぁ。ただ、私が言いたいのは…だな。」
うん?
エルが言葉を濁してる?
そんな事、今の今まで無かった事だ。
何だろう。
「何か。心配事でもあるのか?大丈夫?」
「大丈夫だ。何というかこんな話を今になってするのもどうかと思うんだが。私は、お前のこととなると順番を間違えるらしい。」
「良いから、言えよ。俺なら大丈夫だから。」
そう言い含める俺の目を、エルが落ち着かなそうに見ている。
「なんだよ、実はライオンに変身できるって言われても驚かないよ!」
「そうか、!」
「え、え。なに?どれが刺さったの。」
エルが急に元気を取り戻した。
「俺が教えない様にとベルモントに釘を刺したんだがな。やはり聞いていたか。」
「まって、待ってエル。本当にライオンになれるの!?」
「そうだ。何だ、聞いたんじゃ無かったのか?」
「聞いてないっ!」
なるほど。成程なぁ。
今まで避妊もなしに俺が妊娠しなかったのは、性行の仕方が違っていたかららしい。
獣人や亜人が人間と子作りをする時は、本来の姿に戻る必要があるらしい。
亜人は半分人間なのに、どうやって戻れるんだろう。それはさておき、つまりエルは俺をデートに誘い出して色んな手札を切って、ライオンセックス
してくれないか、って言いたかったって事?
「先ずは、私の獣化に慣れて。それから子作りをしたいが、これはお前の意思を確認してからでないと決められない。お前が無理だと言えば、俺はいつまでも待とう。だが、俺の希望は。お前に子を産んでほしい。」
ささやかに静かに秋風が吹いている。
二人しかいない幻想的なレストランは、きちんと俺の心を落ち着けてくれた。
ここが屋外で良かったな。
こんな話、誰にも聞かれたくない。
「俺って、言うんだなエルも。」
そっと切り出した俺に、エルは顔を驚かせていた。
「昔は…こうだったんだ。粗暴でよく教師にも母にも怒られていた。トキが来る前の話だ。国で働く様になって、今じゃ大統領なんてやっているが。その選挙の時に、嫌と言うほど練習させられた。一人称、話し方、仕草、表情までな。」
「うん。」
「その前までは‘’俺‘’だったな。」
「他には?」
「そうだな。よく菓子を食べていた。」
「エルがぁ?」
そう言えば、さっきのラスク屋さんでマカロンをじっと見ていた気がしたけど。あれは本当だったんだな。
てっきり、厨房を見てるのかと思ったけど。
「じゃあ、本当は甘いお菓子好き?」
「嫌いじゃない。ただ、‘’ライオンの大統領‘’に差し入れるのには相応しくないだろう?」
「確かに。何なら俺に送られてきそうだ。」
俺たちは、俺たちの知らない時間の間に有った事を話し合った。
それはたくさんあったけど、意外にも意外じゃ無かった。エルらしいなと思った。
「じゃあ、俺からも。」
「何でも。」
「ほんとは、故郷が恋しい。」
そう言うと、エルの瞳揺らいだ気がした。
良いんだ。そんな顔しないで良いんだよエル。
「ほんとは、和食が食いたい。箸が恋しいよ。ナイフとフォークは面倒だし。」
「シェフを探してみるか。」
「いや良い。俺が作るよ。だからそれをエルにも一緒に食べて欲しいんだ。」
「うん?」
「俺の故郷は、飯がとにかく美味いんだ。それをさ、一緒に食べてほしい。それだけだよ。」
本当に。それだけなんだ。
それ以外はもう何だっていいんだ。
あんたが側に居てくれるなら、あんたがライオンだろうが人だろうがどっちでも構わない。
「それに、俺もあんたとの子供ほしい。俺、子育てやって見たかったんだ。だから、俺と子作りしよう。」
そう言うと、エルはそのカッコいい顔で涙を一筋溢した。
イケおじは泣いてもイケメンで、それは俺の旦那でした。
ーーーー
いつも読んでいただいてありがとうございます。ついに妊娠編まで来てしまいました。
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「なんだ?」
「俺に何をして欲しいわけエルムディン?」
ここは敢えて、名前で呼んでみる。
交渉ごとは先手必勝。
今の所、デートにレストランの予約など後手に回っている俺だが、やるときはやる男だ。
「バレていたか。」
「まぁね。仕事の話、じゃ無いよな?」
「まぁ、それも後々は関係してくるが。そんな騙し打ちみたいな事は私は好まない。」
「じゃあ、なに?」
もしかして、愛人でも出来たのか。
いやでも、番に愛人は必要ないだろ。
いやいや、そうとなると。子供か。
そろそろ孫の顔が見たい事件か。
あれ。そういえば俺、結構な頻度でエルとそう言うことをシてるけど。
この国に避妊という概念は存在しないのか。
エルは毎度毎度、俺の中に全部注ぎ込んでいる。
それでも子供が出来ないと言うことは、俺かエルかどちらかに生殖機能が無いのか。
そうだとするなら、やはり俺だろうか。
でも、おじいちゃん先生はちゃんと妊娠できる身体になってるって言ってた。
それなら、問題はエルの方?
「お、俺は…エル以外とするのは嫌だからな。」
「あ、あぁ。トキそれは違う。誤解だからそんな顔をしないで良い。私もお前もきちんと子供を成せる。安心しなさい。」
「本当か、?」
「あぁ。ただ、私が言いたいのは…だな。」
うん?
エルが言葉を濁してる?
そんな事、今の今まで無かった事だ。
何だろう。
「何か。心配事でもあるのか?大丈夫?」
「大丈夫だ。何というかこんな話を今になってするのもどうかと思うんだが。私は、お前のこととなると順番を間違えるらしい。」
「良いから、言えよ。俺なら大丈夫だから。」
そう言い含める俺の目を、エルが落ち着かなそうに見ている。
「なんだよ、実はライオンに変身できるって言われても驚かないよ!」
「そうか、!」
「え、え。なに?どれが刺さったの。」
エルが急に元気を取り戻した。
「俺が教えない様にとベルモントに釘を刺したんだがな。やはり聞いていたか。」
「まって、待ってエル。本当にライオンになれるの!?」
「そうだ。何だ、聞いたんじゃ無かったのか?」
「聞いてないっ!」
なるほど。成程なぁ。
今まで避妊もなしに俺が妊娠しなかったのは、性行の仕方が違っていたかららしい。
獣人や亜人が人間と子作りをする時は、本来の姿に戻る必要があるらしい。
亜人は半分人間なのに、どうやって戻れるんだろう。それはさておき、つまりエルは俺をデートに誘い出して色んな手札を切って、ライオンセックス
してくれないか、って言いたかったって事?
「先ずは、私の獣化に慣れて。それから子作りをしたいが、これはお前の意思を確認してからでないと決められない。お前が無理だと言えば、俺はいつまでも待とう。だが、俺の希望は。お前に子を産んでほしい。」
ささやかに静かに秋風が吹いている。
二人しかいない幻想的なレストランは、きちんと俺の心を落ち着けてくれた。
ここが屋外で良かったな。
こんな話、誰にも聞かれたくない。
「俺って、言うんだなエルも。」
そっと切り出した俺に、エルは顔を驚かせていた。
「昔は…こうだったんだ。粗暴でよく教師にも母にも怒られていた。トキが来る前の話だ。国で働く様になって、今じゃ大統領なんてやっているが。その選挙の時に、嫌と言うほど練習させられた。一人称、話し方、仕草、表情までな。」
「うん。」
「その前までは‘’俺‘’だったな。」
「他には?」
「そうだな。よく菓子を食べていた。」
「エルがぁ?」
そう言えば、さっきのラスク屋さんでマカロンをじっと見ていた気がしたけど。あれは本当だったんだな。
てっきり、厨房を見てるのかと思ったけど。
「じゃあ、本当は甘いお菓子好き?」
「嫌いじゃない。ただ、‘’ライオンの大統領‘’に差し入れるのには相応しくないだろう?」
「確かに。何なら俺に送られてきそうだ。」
俺たちは、俺たちの知らない時間の間に有った事を話し合った。
それはたくさんあったけど、意外にも意外じゃ無かった。エルらしいなと思った。
「じゃあ、俺からも。」
「何でも。」
「ほんとは、故郷が恋しい。」
そう言うと、エルの瞳揺らいだ気がした。
良いんだ。そんな顔しないで良いんだよエル。
「ほんとは、和食が食いたい。箸が恋しいよ。ナイフとフォークは面倒だし。」
「シェフを探してみるか。」
「いや良い。俺が作るよ。だからそれをエルにも一緒に食べて欲しいんだ。」
「うん?」
「俺の故郷は、飯がとにかく美味いんだ。それをさ、一緒に食べてほしい。それだけだよ。」
本当に。それだけなんだ。
それ以外はもう何だっていいんだ。
あんたが側に居てくれるなら、あんたがライオンだろうが人だろうがどっちでも構わない。
「それに、俺もあんたとの子供ほしい。俺、子育てやって見たかったんだ。だから、俺と子作りしよう。」
そう言うと、エルはそのカッコいい顔で涙を一筋溢した。
イケおじは泣いてもイケメンで、それは俺の旦那でした。
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いつも読んでいただいてありがとうございます。ついに妊娠編まで来てしまいました。
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