49 / 77
第一章:キハラ トキアキ
第十話
しおりを挟む
「何度話しても同じことだ。我々に交渉の余地はない。」
「ですが、此方の国に滞在している彼女は元はと言えば私共の国で活躍する者でした。それを不当に囲い込むなど許されることではありませんぞ。」
「その彼女たちを追補したのはあなた方だった筈ですが。更にお言葉を返す様だが、何も囲い込むつもりなど毛頭ない。」
「では何故、未だに面会の一つも取り次いで頂けないのでしょうな?」
「アレらは人智を超えた存在の末裔だ。我々が所有しようなど驕っているとは思わないのか。」
議論が、果てしなく進まない議論が。
かれこれ2時間以上、俺の前で繰り広げられている。もうそろそろ3時間になるんじゃなかろうか。
俺の目の前で明らかに不機嫌そうに悪態付いているのが、隣国のお偉いさんだ。
それをどこ吹く風と、涼やかに受け流しているのがうちの国の、現・大統領補佐官だ。
おじいちゃん先生のお茶目さに、足して有り余るほどの無情さを足したのがこの人だ。
名前は、デルモント・クイレ。
因みにおじいちゃん先生は、ベルモント・クイレ。なんと一文字違い。なんとまあ紛らわしい。
そこで区別するために、皆はチーフと呼んでいるそうな。俺もその通り呼ぼうとしたら。
「お前は私のチームメンバーでは無いだろう。」
釘を刺されたのだろうか。
それから。俺だけが’‘デルモントさん’‘と呼び続けている。
かれこれ5日。デルモントさんに張り付いて、ひたすらに耳と目を働かせている。
とにかく知らないことだらけで、気を抜くと頭からボロボロと、情報が転げ落ちていく。
初めはメモを取って、仕事を覚えようとしたのだが。デルモントさんに止められた。
「お前の仕事は、私に着いて回る事だ。ここでそんな物は役に立たない。」
新人の第一歩、メモを取る。
それを無くした俺は、次何をすれば良いんだ。
だが、5日も着いて回ればその意味が分かった。
大統領補佐官というものは、メモを取っている暇さえないのだ。更に、補佐官室に戻れば様々な思考実験が行われた。
会合、会議、思考実験、会議、会議、会議。
毎日がそんな事の繰り返しで、新しい情報日毎飛び込んでくる。
明日は休みを貰った俺は、這々の体で家へと帰り着いた。
「もう、無理で…す。」
お手伝いさんに励まされ、何とか夕飯を摂った後、俺はゴトンッと寝落ちした。
‘’デコが痛い…‘
ん。? 話し声?
デルモントさんの声が、する?
「大丈夫だ、良く寝ている。」
「私にこき使われて疲れてるんだろう。」
「そうだろうな。」
笑い声。二人とも仲良かったんだな。
俺は抱き上げられたのだろうか、急にふわっとした浮遊感に襲われたかと思うと、心地よい柔らかな場所に降ろされた。
多分、ソファだ。
ここにソファ、柔らかいんだよなぁ…。
ゆらりと続く微睡の中、俺の耳は二人の声を聞いていた。誰かがいる空間で眠る。それは俺にとっては心地良い。
今までそれは、一方通行のラジオや音楽だったりしたが。今は違う。
好きな奴の声を聞きながら眠ることが、こんなに安らぎを覚えるなんて。
俺は知らなかったよ。
二人の会話は良くわからない、けど。
エルがこんな甘い声を出すってことは、俺のことに違いないや。
「ふふん…」
俺は夢見心地で、そのまま眠りへと着いた。
「ですが、此方の国に滞在している彼女は元はと言えば私共の国で活躍する者でした。それを不当に囲い込むなど許されることではありませんぞ。」
「その彼女たちを追補したのはあなた方だった筈ですが。更にお言葉を返す様だが、何も囲い込むつもりなど毛頭ない。」
「では何故、未だに面会の一つも取り次いで頂けないのでしょうな?」
「アレらは人智を超えた存在の末裔だ。我々が所有しようなど驕っているとは思わないのか。」
議論が、果てしなく進まない議論が。
かれこれ2時間以上、俺の前で繰り広げられている。もうそろそろ3時間になるんじゃなかろうか。
俺の目の前で明らかに不機嫌そうに悪態付いているのが、隣国のお偉いさんだ。
それをどこ吹く風と、涼やかに受け流しているのがうちの国の、現・大統領補佐官だ。
おじいちゃん先生のお茶目さに、足して有り余るほどの無情さを足したのがこの人だ。
名前は、デルモント・クイレ。
因みにおじいちゃん先生は、ベルモント・クイレ。なんと一文字違い。なんとまあ紛らわしい。
そこで区別するために、皆はチーフと呼んでいるそうな。俺もその通り呼ぼうとしたら。
「お前は私のチームメンバーでは無いだろう。」
釘を刺されたのだろうか。
それから。俺だけが’‘デルモントさん’‘と呼び続けている。
かれこれ5日。デルモントさんに張り付いて、ひたすらに耳と目を働かせている。
とにかく知らないことだらけで、気を抜くと頭からボロボロと、情報が転げ落ちていく。
初めはメモを取って、仕事を覚えようとしたのだが。デルモントさんに止められた。
「お前の仕事は、私に着いて回る事だ。ここでそんな物は役に立たない。」
新人の第一歩、メモを取る。
それを無くした俺は、次何をすれば良いんだ。
だが、5日も着いて回ればその意味が分かった。
大統領補佐官というものは、メモを取っている暇さえないのだ。更に、補佐官室に戻れば様々な思考実験が行われた。
会合、会議、思考実験、会議、会議、会議。
毎日がそんな事の繰り返しで、新しい情報日毎飛び込んでくる。
明日は休みを貰った俺は、這々の体で家へと帰り着いた。
「もう、無理で…す。」
お手伝いさんに励まされ、何とか夕飯を摂った後、俺はゴトンッと寝落ちした。
‘’デコが痛い…‘
ん。? 話し声?
デルモントさんの声が、する?
「大丈夫だ、良く寝ている。」
「私にこき使われて疲れてるんだろう。」
「そうだろうな。」
笑い声。二人とも仲良かったんだな。
俺は抱き上げられたのだろうか、急にふわっとした浮遊感に襲われたかと思うと、心地よい柔らかな場所に降ろされた。
多分、ソファだ。
ここにソファ、柔らかいんだよなぁ…。
ゆらりと続く微睡の中、俺の耳は二人の声を聞いていた。誰かがいる空間で眠る。それは俺にとっては心地良い。
今までそれは、一方通行のラジオや音楽だったりしたが。今は違う。
好きな奴の声を聞きながら眠ることが、こんなに安らぎを覚えるなんて。
俺は知らなかったよ。
二人の会話は良くわからない、けど。
エルがこんな甘い声を出すってことは、俺のことに違いないや。
「ふふん…」
俺は夢見心地で、そのまま眠りへと着いた。
21
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる