【1章完結済】【R18】池に落ちたら、大統領補佐官に就任しました。

mimimi456/都古

文字の大きさ
上 下
46 / 77
第一章:キハラ トキアキ

第七話_後篇

しおりを挟む
その夜。
俺はちょろかった。ユディール君に言われてその気になっていた。
カコッとマタタビの蓋を開けてベットに置いた。

怖かったから、少しだけ。
瓶の蓋を緩めるくらいにしておいた。

ドキドキしながらも手帳を開いて、明日の予定を確認する。特に急ぎの案件は無さそうだが、一日のシミュレーションをするのが向こうにいる間からの習慣だ。

パタンと閉じて、いそいそとベットに潜り込む。

いけないことをした子供のように、心臓が跳ねている。これでエルの帰りが遅かったら、自分で笑ってやればいい。

そんな物に頼ろうとしたのが間違いだったんだ。

でも、期待は止められない。
身体は念入りに磨いたし、歯磨きもバッチリだ。
期待と、興奮で動悸がしそうになったその時。

ガチャリ、とドアが開いた。

真っ白な扉を開けて現れたのは、俺の’‘左腕’‘のひと。


「トキ、起きていたか。」

「あ、ああ。もう寝るとこだったんだ。」

ギシッとベットのスプリングが鳴る。
いつものようにエルが手を伸ばして、俺の頬を撫でようとした時。

その指が宙で止まった。

「ほう、意外だったな。これはトキが買い求めたのか?」

そう言って目線に釣られた先には、ユディールのマタタビ瓶。

じっと。
甘さを含む金色の瞳が俺を見つめて答えを待っている。

微かに微笑んでいるのが分かって、俺の羞恥心は耐えられなかった。
もうバレてる。絶対バレてるっ。


「誰かに貰ったのか?」

「… … 同僚に。」

「ユディールだな。」

あ、とか。いや、とかを繰り返す俺をエルは許さなかった。

「彼の夫も猫だったな。」

面白そうに笑うその顔に、シワが刻まれてもイケメンだった。

「私の番に何か吹き込んだのなら。それなりの罰が必要だな。」

左の眉をひゅと上げるのが様になっている。

「いや、あのっ、俺がいけないんだっ!」

「ほう。」

俺は、羞恥の断頭台に立たされた気分で。
突っかえ、どもりながら事の顛末を1から10まで話す事になった。

これは、悪巧みをした俺への罰だ。
だが、ただの罰じゃない。
甘さを含み、逃げ道を塞ぐ、百獣の王の罰。

その爪でギロチンの縄を押さえてはいるが、やろうと思えばいつでも、俺を狩れる。

「お前がこの国に慣れるまではと、思っていたのだがな。」

さり、とようやく髪を撫でてくれた手はいつも通り少し冷たい。
なのに、金色の瞳だけが熱い。

「お前は私の為に、この世界に落とされた。」

初めから決まっていたのだと、エルが言う。
初めから。
あの日、池に落ちた時から。

俺はエルのものになる事は決まっていた。

「お前が熱にうなされながら、私に言っていただろう。」

ーーーちゃんと、ここでやって行くよ。

「その通り、お前はこちらに来てからよく努めていた。お前が、私と並ぼうとする為に努力しているのに、言えると思うか?

スリ、とエルの手が不意に俺の頬と、唇を撫でた。

「泣き顔が美しくてな。」

「なっ、にを言ってるんだよっ、!」

「嘘だと思うか?」

だって、あ。
なんだその目は。

それじゃまるでキスだけじゃ、
触れ合うだけじゃ足りないみたいじゃないか。

そんな俺にフッと笑った。

「そんな生温いことを言うのは人間だけだな。」

エルは俺の悩みを一蹴した。

「ライオンというのは、百獣の王と言われるように研鑽を怠らない生き物だ。何処から敵が来るかわからない。更に、警戒心の強さから戦況を読む力に長けている。そして、愛する者にはよく尽くす。」

エルは俺の頭をわしゃっと撫でたかと思うと、マタタビの瓶を取って固く閉めた。
多分、俺じゃ開けられないな。

「それから、ライオンの私にこんな物は要らない。」

何故か。
だって猫科にマタタビは酒の様な物だろう?
いや、待てよ。俺は某動物番組を思い出した。

「若くはないが。お前相手に惜しむ気は無いな。」

ん?俺相手に惜しむ気は無い、って事は。
本当はスゴイってこと?
いやでも、エルはイケメンとはいえオジサンだ。
まさかそんな。

「試して見たいだろ、トキアキ。」

「へ?」

ドサっと音がしたのは俺の背中だった。
ぼさっとしている間に、おれは押し倒されたのか。こんな、こんな瞳で見られていたのか。

熱くて、ジッと肌が焼けそうな瞳で。

「はあ… …っ」

俺は拒まなかった。
降ってくる唇を、息を吐いて受け止めた。


端的に言うと、俺は意外と奥手ではなかった。
真綿の愛なんてどの口が言ったんだと思う程の大胆さを発揮した。

いや、正確には口の代わりに身体が示してくれた。


「トキアキ。」

「んん…なにっ、?」

おかしいほどに、この身体はエルを受け止めた。いくら潤滑剤を使っても流石に、最初は痛いと聞いたことがある。

それなのに。
これはなんだ。

「私をよく求めている。大胆で良い子だ。」

くしゃ、とまた頭を撫でてくれる。
それだけで、俺の身体はエルの欲望の為に尽くした。きゅむ、と腹が疼いて快感が止まられない。

嬉しい。
きもちいい。

頭をすっぽり抱え込まれて、尻が浮くほどにエルの腰が深く入り込んでいる。

初めは浅く。小刻みに愛してくれた。
俺は。それだけじゃ足りなかった。

恥じらいは愛情と快感の中で溶けた。
だからもっと奥へ。
奥へとエルを誘い込んだ。

「エ…ル、エル…」

「どうした?」

ぐっと腰を入れたまま、エルが止まった。
額と、鼻先にキスをして聞いてくれた。

「もうやめるか?」

優しい甘やかす声が心地よかった。
だから俺ももっとエルを甘やかしたいと思う。

「もっと… …ひどくしたい。」

ぎゅっと逞しい首にしがみついてお願いすると。
エルは低く唸った。
それは人の声ではない。獣の本能から出る唸り声。

「grrr… 」

あっと思った時には、三度目の熱が俺の中に流れ込んできた。熱い白濁を腹の中に受けて、愛しいと思う日が来るとは思わなかったな。

ぬるっと尻から抜けたエルの熱はまだ大きかった。俺は、自分からうつ伏せになって、白く濡れた尻を突き出して足を開いて見せ付けた。

ここにはやく。
はやくエルが欲しい。

腹一杯あんたが欲しい。

「ぁあーーーんぅく、イクッ」

ずぷりと最奥まで入ってきたエルは、容赦なく俺を責め立てた。
今イッたばっかの俺の背中を、上から体重をかけて抑え込んだ。
重くて堅い身体がずしっと乗って、なのにエルの右腕が俺の腹を抱えて離さないから。

俺の身体は完璧におかしくなった。
下肢がたらたら、ずっと白濁を吐いている。


俺はこれまでに無く幸せだと思った。


ーーー私の為によく来てくれた。

「お前は私の"右腕"だ。トキアキ。」

これが俺の初夜だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

処理中です...