甘々にすっ転べ全集

mimimi456/都古

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14 終わらせないで

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「ちょっと、寝よ」

うちに帰るや否やヒーターを付け、目の前に座る。
風を送る奴ではなく、もっと原始的な熱いやつ。
しかもこいつはオンとオフしかない。

温度調整がない金網で仕切ってある当たったら火傷するちょっと危ないやつだ。
その代わりマッハで点く。

「はぁぁーー生き返るぅぅっ。」

冷たい指先がジンジンして来た所でコートを脱ぐ。
だいぶあったまったきた。
ここからが勝負。

スタッと立って足元のカーペットの電源をオン。
キッチンへ向かいヤカンでお湯を沸かすと、そのまま自室で部屋着にチェンジ。

化粧も落とす!
仕事を連想させるものは今!ここで!
全部削ぎ落とす!

お湯が沸く頃には明日着る服の準備も復習も終えて。
ダッシュで行けばあったかいリビングへおかえり。

いそいそとマグに紅茶のティーパックとお湯を注いでヒーターの前へ。
じわっと深い紅が広がっていくのを眺めていく。

漸くひとくち飲むと、これで今日1日が終わった気がする。
あとは帰りを待って一緒に夕飯を作る。

「ちょっと、熱いな。」

オンとオフしかないヒーターのスイッチを回す。

ヒーターの赤がじゅわっと消えていく。
釣られて意識も傾きそうになる。

「ちょっと、寝よ。」


言うてもまだカーペットが温いから大丈夫だろ。
寒くなったら起きれば良い。
このまま寝ても多分、怒られない。
カーペットはちゃんと付いてるもん。


トントントン、と包丁の音がする。
ぱちっと目が覚めた。だいぶ寝こけたらしい。
部屋は寒いどころか暖かくて、ふかふかで柔らかい何かが手元に収まってる。

「ふふっ、」

これ、テディーベアだ。
買うつもりもなく家具屋で抱きしめてみたら、あまりのフィット感に手放せなくなったクマだ。
恥ずかしかったけど年甲斐もなくねだってカートに乗せた戦利品だ。

それに、毛布まで掛かってる。

また文句を言って掛けてくれたのだろうか。

起きて夕飯の用意を手伝わないといけないのに。
あともうちょっとだけ、このぬくぬくを味わっていて良いだろうか。

「おーーい、起きてるだろ。バレてるぞ。」


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