【R18】天塚桃李〜四人の龍王様の嫁になりました〜

mimimi456/都古

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第十四話 試練

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穢れなき強さを持つ四龍も、
それ故に今はもう地上では生きられず、
そして、
神々の住まう天界では、
人の姿を持った仙桃は決して育たない。

何故なら、神は神であり仏ではないのだから。

触らぬ神に祟りなし、という言葉がある。

神は良くも悪くも、
気紛れで人を救い、気紛れで人を祟る。

四龍とて、神だ。

かつて、四龍は愛を知り得なかった。
必要も無かったのだ。
永遠の時を生き、腹も空かず、眠りを要らず。
何事も不自由が無かった。
それ故に、己の名も、命も、
他の兄弟である四龍にさえも全く興味が無かった。

ただ、1つ。
その身に護る宝珠だけが、唯一護るべきものであった。

しかし、
愛を知らぬ生き物に、愛を学ばせ
地上を慈しみ護らせるのが天帝の目論見であった。

ある時、天帝は彼らの大切な宝珠を
恭しく傅く彼らの眼前で、
突如、吸い寄せ、集め、ドロドロに溶かした。
それから、
傍で実っていた仙桃を1つもぎ、
人へと創り変えると、溶かした宝珠を飲ませた。

ごくり、ごくり。

喉を鳴らし、やがて飲み干してしまった。

すると、人はその身に変化を現した。

髪は、薄桃色になり、
瞳や、唇の色までもが、淡く色付いていった。

「ぁ、う...。」

やがて発した声は、
何とも軽やかで、とろりと甘い香りがした。

その姿こそが、仙桃妃の真の姿である。

◯◯◯◯◯◯◯

「ぁ、ぁあ、そんな、!」

騒ぎを聞きつけ、仁嶺に伴われて桃李の祖母が現れた。

「嫗、桃李が!」

「えぇ、封印が解かれかけていますっ、」

「何故だ、まだ時期が早い。」

「ですが義栄様、この子の髪が変わっていますっ、間違いありませんわ。」

変わらず倒れたまま目を覚まさない桃李だが、その真っ黒な髪色が、毛先から徐々に薄い桃色へと変化している。

「このままでは、桃李が危ない。」

 耽淵だんえん様、畏れ多いことを申し上げます。
直ぐにこの社に結界を張っていただけますか。それから、前回、この子を封印したのはどなたです。」

仙桃には、乱れた気を浄化する効果がある。
穢れにとっては最大の敵だが、
無垢で純白な気は、より深い常闇の穢れを引き付けたりもする。

長く地上に降りられない四龍の為にも、
仙桃妃を人の手で護っていける様、
四龍にしか解けない封印を毎回施していた。

だが、その封印が原因不明の事態により解けかけている。

結界を張ろうと手を伸ばしていた耽淵だったがそれを聞きビシリ、と固まった。

「...それ、僕だ。桃妃を最後の時、封印したのは僕だ。
巡りめぐりから言って、僕がその時最適だったから...」

「だったら、ここは俺がやる。」

騰礼とうれいが...、?」

「そうだ。兄貴はさっさと結果を張れ。嫗、俺が適任だ。違う?」


微動だにしない、床に寝込んだままの桃李を一瞥し騰礼は言う。

「えぇ、確かに。耽淵様は四龍のうちの玄武。水を司る方なので騰礼様とは相反します。」

「だから、兄貴の封印も俺なら解ける。それに、時期も良い。今ならコイツも居る。」

騰礼は、顎をしゃくって桃李を示す。
桃妃の居ない20年で、四龍たちの気力は少しずつ減り今や枯渇している。

ふだんならそんな状態で満足に力を振るえはしないが。
桃李に施された封印が解けかけた今、豊潤な気が身体から溢れ出ている。

「場所を、変えます。桃李と二人で奥の部屋へ。」

「あぁ。」

だらりとした桃李を軽々と抱え彼は振り向く。

「翁、こいつは必ず助ける!」

祭壇で、ただひたすらに祝詞を唱え続けている
桃李の祖父へと声を張り上げた。

すると、祝詞を唱える口のまま
深々と一度、
床に擦りつく程頭を深く垂れた。

「許せよ...桃李。」
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