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新生活って気合い入るよね⑤
しおりを挟む「あっれ! もしかしてもう相棒出来ちゃったって噂の葉月君と中秋君~?」
「僕が担当になってたんだぁ」と可笑しそうに腹を抱えた。アイスブルーの瞳にはうっすら涙が浮かんでいる。
何だこの教師。
「お盛んだねぇ。皆もこの2人を見習って1週間以内に相棒を見つけてね。寮の手続きとかあるし! 」
どよめいたクラスに先生は右手で手を振る。
「あー大丈夫! 相棒と別れることも出来るから! 両者の合意が必要だけど~」
何一つ理解ができないままチャイムが鳴った。やる気のなさそうなこの教師は「じゃあ、ホームルーム終わり! 今日は帰ってよし」と言い素早く去っていった。
「何だったあの教師」
俺が一人ぽつんと呟くと中秋がいつの間にか俺の目の前に立っていた。
「寮に荷物届いたらしい」
思い当たる節がある俺は頷いた。
この学園は寮に入る決まりだから前もって必要な荷物を輸送していたのだ。
そこまで考えて俺は首を傾げた。
「なぁ、中秋。相棒を決める期限が1週間なんだろ? それまで部屋割りはどうなんの?」
「あー、クジらしいよ」
なんて適当な!
いや、そもそもそのクジでずっと過ごせばいいんじゃね?
なんてグルグル考えてるとそれが顔に出てたらしいのか中秋に鼻で笑われた。
「そこはこういう学校だからお約束なんじゃないか?」
「やだぁご都合主義ってやつね!」
「気持ち悪ぃ」
可愛さに全振りしてボケたら中秋に頭を小突かれた。だから直ぐに手を出すのはやめろよ。まぁ、俺の方が背が高いし? ガッシリしてるから叩かれようが蹴られようがチワワが吠えてるなぁ位に考えられるんだけどね。
*
初めて中秋と出会ったあの後、彼に相棒になるか誘われた可愛い可愛い俺は我が身可愛さに彼との契約を了承した。こんな可愛い俺なんだもん。襲われちゃう。
1つだけ条件を課して。
「ないと思うけど念の為。中秋、いくら俺がイケメンだからって好きになるなよ?」
「おまっ! それは俺のセリフだ」
「もし、どちらかが相手を好きになった時、あるいは男の恋人、好きな人ができた時この相棒制度は解約だ」
「当然だ」
こうして俺たちは相棒になった。
絶対にお互いを好きにならない条件付きで。
*
「どうする? もう相棒届け出しに行くか?」
「相棒届けって」
婚姻届みたいなそのノリに思わず爆笑してしまう。
涙も流れてきた所で中秋の氷点下よりも低い冷めた目が俺を凍らせた。調子に乗りました。はい。すみません。
「ちなみにどこへ出すの?」
「そんなもん生徒会に決まってんだろ」
男子校しかも寮付きの高校へ行くことを心配した姉はギリギリまで俺にボーイがラブする漫画を大量に持ってきた。そして読まなきゃ飯は抜きという魔王もびっくりな横暴さを発揮していた。
何が言いたいかって?
俺は特段神を信仰してるわけではないけどこの時ばかりは熱心に神に祈ってたんだよ。
平穏な生活が送れますようにって。
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