私の前世は凄絶でした。

前世その⑤剣闘士の男

残された理性

私は剣闘士である。先の戦で敗れローマ帝国の捕虜となった訳だが、剣や弓の腕がそれなりにあった私は、一般的な奴隷として売られず、剣闘士にさせられた。
最初は、専ら猛獣との戦いだった。見世物としての殺し合いをしているということに吐き気がするほど抵抗感はあったが、自分の立場的に逆らえば即死だ。それならば、殺し合いの末に死ぬ方がまだ自分の気も晴れるというものだ。それに、剣闘士が自由民に格上げされたケースもあるらしい。
そういった訳で一年近く猛獣たちを殺し続けた私は、剣闘士同士の戦いに参加するようになった。


剣闘士はどこかの剣闘士団に所属し、剣闘士団は皆で共同生活をしている。
月に一度行われる、剣闘士団オールスター対猛獣戦において、仕留めた猛獣の数によって、団内での格付けがされるという暗黙ルールみたいなものがある。
私は剣闘士では非常に珍しい弓使いだ。猛獣狩りの際は、後方支援に徹する役割を担い、猛獣は一切倒さない。観客席に一番近く、声援も沢山聞こえるポジションではあるが、私の弓は猛獣たちを弱らせる位のことしかできないのだ。猛獣を仕留めるのはいつも前線の者達だった。
それが故に、私は団内最下層として姦淫される毎日を送っている。
コロッセオで戦っている時以外は、娼夫だったと言っても過言ではない。むしろ娼夫として人気があったために、死のリスクが高い戦いを避けてくれていたのかもしれない。
闘技場では、勇敢に戦う剣闘士として華々しく活躍するが、戦いが終わった瞬間から、私は男たちの性欲の捌け口となる。
最初は心底嫌だったのだが、最近では少し楽しんでいる自分がいる。慣れとは恐ろしいものだ。

こんな毎日が続くのだろうか。生きる意味すら問いたくなる。
私は何のために生を受け、何のために生きるのか。それを疑問に思うだけまだましなのかもしれない。