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ダンジョンマスター 聖龍
替え玉
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「これは何だ?」
テーブルの上には、赤い漬物のような物が置かれていた。
「これは紅生姜と言って、生姜を赤梅酢に漬けたものよ。タイショーが言うには、細麺の豚骨ラーメンの店には良く置いてあるらしいわ。紅生姜は、豚骨の臭みを和らげる効果もあるらしいの」
ニャティリよ、分かりやすいうんちくをありがとう。こうして長々と説明してくれる場合は、ニャティリにとってのオススメである場合が多い。味も期待していいだろう。
さて、紅生姜をスープに入れて紅生姜と一緒に残りの麺も箸で挟んだ。そして、口に運ぶ。
『っ!これも美味しい。酸味が効いて少し酸っぱいが、脂の感じが少し薄まってサッパリとしたような気がするぞ』
味が非常に変化したにも関わらず、豚骨ラーメンの元々のスープの味もしっかりと残って主張を続けていた。一口目から今の今までひたすらに「美味しい」が連続している。麺を食べ終えた我は豚骨ラーメンの余韻に浸っていた。そして丼ぶりには、白いスープが残っている。
「はい、これ替え玉のサービスよ。ちょっと物足りないでしょう?テーブルにかえしが置いてあるから、先に麺にお好みでかけてからスープに追加して頂戴。替え玉って言うのよ」
ニャティリは、カウンターに麺だけが入った白い皿を出してきた。茹でた素の麺を、先程まで食べていたスープに投入して食べろということらしい。実に素晴らしいシステムではないだろうか。
出てきた替え玉にテーブルにおいてあるかえしをかけて少し混ぜてから、ラーメンに追加した。
麺をスープに絡ませてから口へと持ってくる。
『美味い。美味すぎるではないか』
ありえぬほど美味しい。食べ始めは少しスープが濃いように感じていたのだが、ここにきて絶妙な味となっていた。味の濃さは替え玉への布石であり、替え玉を食べてこそ豚骨ラーメンが完成するということか。奥が深い。
「皆、別添えにしてあったニンニクと赤いタレをお好みでいれて頂戴。赤いタレは少し辛いから少しずつ足して好きな辛さに調整してね」
まずはニンニクからだ。醤油ラーメンの時もそうだったが、少し入れただけでも味は劇的に変化する。さらに深いコクが生まれ、恐ろしいほど美味しくなるのだ
。
そこへさらに赤いタレを加えた。
『………っっ!!なんだこれは』
今日一番の驚きである。
旨味をまず感じる、そしてすぐに辛さが来ると、次の瞬間にスープのダイナミックな味が口の中に大きく広がっていく。確かに辛いけれども、味に深みが出てきて口全体を幸福が満たす。
なるほど、替え玉のタイミングでラーメンスープの味を変化させていくということだ。卓上の調味料に加えて、ニンニク・紅生姜・赤いタレで、常に新しい味によって更新されていく。
「恐れ入ったぞ。我は醤油ラーメンの方が好きだが、豚骨ラーメンも恐ろしく美味い。冒険者にはこちらの方が受けるであろうな」
「そうよね。イリスはどうかしら」
麺の硬さなども味を大きく左右する細麺の場合、最初から大盛りにするのではなくこうして替え玉を頼むのが一般的なようだ。店に出す際は、一玉分の替え玉は無料で出す予定だとか言っているが、大食いの多い冒険者には受けるサービスであることは間違いないだろう。
「そうだなぁ。私は前食べた豚骨ラーメンの方が好きかもなぁ。ただ、これはこれで超絶美味い」
イリスは少し不満げだったようだ。
「イリスはまだ試食はできるかしら」
「えっ?まだまだ大丈夫だけど」
「じゃあ、もう少し試食に付き合って頂戴」
「お安い御用で、姐さん」
延長戦がはじまった。かえしの味も何パターンか用意していて、イリスはそちらも試食することになった。ダルゴニアの冒険者は殆どが人間族とは言えど、エルフ・ドワーフ・鳥人・魚人・狼人などと人種も多種多様なため、冒険者向けの料理屋を出す際は味には多様性があった方が良いとされる。イリスのように獣臭い方が好きという者も必ずやいるであろうし、かえしを変えることで客に合わせてラーメンを提供するというのは、ナイスアイデアのように思う。
我もマリアも少しずつ分け合って、追加の試食に付き合った。どれだけ食べてもラーメンは美味しい。いやはや、恐ろしい食べ物である。
テーブルの上には、赤い漬物のような物が置かれていた。
「これは紅生姜と言って、生姜を赤梅酢に漬けたものよ。タイショーが言うには、細麺の豚骨ラーメンの店には良く置いてあるらしいわ。紅生姜は、豚骨の臭みを和らげる効果もあるらしいの」
ニャティリよ、分かりやすいうんちくをありがとう。こうして長々と説明してくれる場合は、ニャティリにとってのオススメである場合が多い。味も期待していいだろう。
さて、紅生姜をスープに入れて紅生姜と一緒に残りの麺も箸で挟んだ。そして、口に運ぶ。
『っ!これも美味しい。酸味が効いて少し酸っぱいが、脂の感じが少し薄まってサッパリとしたような気がするぞ』
味が非常に変化したにも関わらず、豚骨ラーメンの元々のスープの味もしっかりと残って主張を続けていた。一口目から今の今までひたすらに「美味しい」が連続している。麺を食べ終えた我は豚骨ラーメンの余韻に浸っていた。そして丼ぶりには、白いスープが残っている。
「はい、これ替え玉のサービスよ。ちょっと物足りないでしょう?テーブルにかえしが置いてあるから、先に麺にお好みでかけてからスープに追加して頂戴。替え玉って言うのよ」
ニャティリは、カウンターに麺だけが入った白い皿を出してきた。茹でた素の麺を、先程まで食べていたスープに投入して食べろということらしい。実に素晴らしいシステムではないだろうか。
出てきた替え玉にテーブルにおいてあるかえしをかけて少し混ぜてから、ラーメンに追加した。
麺をスープに絡ませてから口へと持ってくる。
『美味い。美味すぎるではないか』
ありえぬほど美味しい。食べ始めは少しスープが濃いように感じていたのだが、ここにきて絶妙な味となっていた。味の濃さは替え玉への布石であり、替え玉を食べてこそ豚骨ラーメンが完成するということか。奥が深い。
「皆、別添えにしてあったニンニクと赤いタレをお好みでいれて頂戴。赤いタレは少し辛いから少しずつ足して好きな辛さに調整してね」
まずはニンニクからだ。醤油ラーメンの時もそうだったが、少し入れただけでも味は劇的に変化する。さらに深いコクが生まれ、恐ろしいほど美味しくなるのだ
。
そこへさらに赤いタレを加えた。
『………っっ!!なんだこれは』
今日一番の驚きである。
旨味をまず感じる、そしてすぐに辛さが来ると、次の瞬間にスープのダイナミックな味が口の中に大きく広がっていく。確かに辛いけれども、味に深みが出てきて口全体を幸福が満たす。
なるほど、替え玉のタイミングでラーメンスープの味を変化させていくということだ。卓上の調味料に加えて、ニンニク・紅生姜・赤いタレで、常に新しい味によって更新されていく。
「恐れ入ったぞ。我は醤油ラーメンの方が好きだが、豚骨ラーメンも恐ろしく美味い。冒険者にはこちらの方が受けるであろうな」
「そうよね。イリスはどうかしら」
麺の硬さなども味を大きく左右する細麺の場合、最初から大盛りにするのではなくこうして替え玉を頼むのが一般的なようだ。店に出す際は、一玉分の替え玉は無料で出す予定だとか言っているが、大食いの多い冒険者には受けるサービスであることは間違いないだろう。
「そうだなぁ。私は前食べた豚骨ラーメンの方が好きかもなぁ。ただ、これはこれで超絶美味い」
イリスは少し不満げだったようだ。
「イリスはまだ試食はできるかしら」
「えっ?まだまだ大丈夫だけど」
「じゃあ、もう少し試食に付き合って頂戴」
「お安い御用で、姐さん」
延長戦がはじまった。かえしの味も何パターンか用意していて、イリスはそちらも試食することになった。ダルゴニアの冒険者は殆どが人間族とは言えど、エルフ・ドワーフ・鳥人・魚人・狼人などと人種も多種多様なため、冒険者向けの料理屋を出す際は味には多様性があった方が良いとされる。イリスのように獣臭い方が好きという者も必ずやいるであろうし、かえしを変えることで客に合わせてラーメンを提供するというのは、ナイスアイデアのように思う。
我もマリアも少しずつ分け合って、追加の試食に付き合った。どれだけ食べてもラーメンは美味しい。いやはや、恐ろしい食べ物である。
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